ユーザ事例

「トミカヒーロー レスキューファイアー」


「レスキューファイアー」は、玩具の作成との連携、及び限られた撮影期間のため、当初からハードスケジュールでした。今までやってきたレスキューシリーズの経験から変更も多い事が想定されるため、柔軟なワークフローに対応できることが必要だったのです。そんな厳しい状況だったからこそ、3ds Max がいっそう威力を発揮したともいえますね。白組に 3ds Max に習熟した人が多かった点が有利だったのは確かですが、それ以上に 3ds Max の機能と豊富なプラグインの組合せで容易に多彩なことができる、3ds Max の柔軟性の高さが際立ったのです。

株式会社 白組
CG スーパーバイザー
伏見 剛 氏


商品化される CG メカを「玩具として」もカッコよく見せる

株式会社 白組
CG スーパーバイザー
伏見 剛 氏


株式会社 白組
System Administrator/CG Technology Specialist
八木大輔 氏

土曜日朝のテレビといえば、子ども向け番組のゴールデンタイム。アニメや数々の特撮ヒーロードラマが放映されている。中でも豪快なマシンアクションと、戦闘より人命救助を優先する独自のストーリィで子どもたちの人気を呼んでいるのが「トミカヒーロー レスキューシリーズ」だ。特に 2 作目となる最新の「レスキューファイアー」は、シリーズ最高の緻密かつリアルなメカの超高速アクションが、子どもたちの熱い支持を集めている。このシリーズ開始当初より制作に参加し、最新作では CG から実写撮影まで制作プロダクションとして任されたのが、日本最大の CG/VFX スタジオ・白組だ。そして、白組には多くの制作チームがあるが、レスキューシリーズを担当したのは三軒茶屋スタジオの伏見氏が率いる制作部隊である。伏見チームは 3ds Max を使うことが多く、今回も CG 制作のメインツールとして、3ds Max を躊躇なく選択した。

「このシリーズの売りは自動車風メカのビークルの激しいアクションです。スポンサーの要請もあり、ビークルをいかにリアルに、カッコよく見せるかがポイントになります。しかし、週 1 放映なのでじっくり時間をかけている余裕はありません。となると、やはり 3ds Max と V-Ray の組合せがベストなのです」(伏見氏)。

「トミカヒーロー」というサブタイトルからも分かる通り、この作品はタカラトミー商品のプロモーション的側面を持っている。ビークルの多くは玩具化されることが前提で、基本デザインやメカニズムもタカラトミーから指示される。しかもトミカだけにビークルのベースはクルマ。合体して空を飛び、宇宙に行ったりする大型ビークルから、日産自動車の市販車をベースとした小型ビークルまで、作中には実にさまざまなクルマが登場するのである。

「こうしたビークルを CG でカッコよく見せるには、クルマらしい質感をきちんと出してリアリティを持たせる必要があります。これを高い品質で効率的に行えるソリューションを求め、第 1 作で 3ds Max に V-Ray を組合せたワークフローを作ったんです。新作では全てに渡り大きくハードルが上がりましたが、課題だった64bit へのシステ厶チェンジも行い、3ds Max+V-Ray で“行ける”という手応えがあったんです」(八木氏)。こうして万全の布陣で臨んだ「レスキューファイアー」だったが、予想外の事態が次々発生。伏見氏らにとってもチャレンジの連続の 1 年となったのである。


商品化前提のメカ CG の高いハードルを
3ds Max のさまざまな工夫でクリア


V-Ray Proxy を細部のディティールに利用しデータ及びレンダリングの効率化を図る。また、スプラインを利用した図案のリグ構造を直感的に理解できるようにしている
©「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会/テレビ愛知・電通

自動展開した UV にダートマップを焼き込み、それをそのまま Diffuse や Reflection のコントロールに利用していく
©「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会/テレビ愛知・電通

エッジバンピングにより、煩雑なモデリング処理なしでエッジにハイライを入れることができる
©「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会/テレビ愛知・電通

ビークルのモデリング、シーン構築は全てレンダラーに V-Ray を使用することを前提に行った
©「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会/テレビ愛知・電通

「ビークルのデザインは、金型まで決まった段階で CAD データの形でメーカーからもらいます。金型の制約でデザインが二転三転するので、そこまで固まってからでないと貰えないんですね。それをベースに、金型の制約等で失われた開発者の思いなども察しながら、モデルを一から作り直します」(伏見氏)。

しかし元が商品である以上、市場環境の変化と共にデザインはしばしば変更される。新ビークルのデザインを売行きのよいものに近づけたり、クリスマスなど季節商戦向けの魅力の向上も当然のように行われる。

「全 7 体合体とか(笑)完全に予想外でしたし、演出についても“玩具として見せたい部分、見せたい角度”など、きわめて難度の高い要望が次々リクエストされました。同時に私たち自身がハードルを上げた部分もありますね。前作より新しい動きを、よりリアルなディティールを、と熱くなっていたのが感じ取れました」(八木氏)。

結果としてモデルは、前作以上のディティールを目指し情報量が大きく増え、アニメーションもより複雑な、凝った動きが徹底的に追求された。だが、だからといってスタッフ増員は難しく、従来のワークフローで進めれば負荷が大きくなるのは確実だった。そこで伏見氏らが打ちだしたのが、3ds Max の活用を核とするワークフローのスリム化への取組みである。

「たとえばバンプマッピング。クルマ等のモデルでは、エッジを丸めて入れるハイライトが非常に重要です。本作ではバンプマッピングで処理してボックスのままハイライトが入るよう工夫し、情報量を 1/4 まで減らしました。またテクスチャも UV で開くのを止め、自動でダートを焼き付けコンピュータに書かせています」(伏見氏)。

こうした 3ds Max の活用を主体とするスリム化や効率化への工夫は、CG 制作に関わるあらゆるパートで推進された。マテリアルやテクスチャのテンプレート化、銀玉から作成した環境 HDRI からの反射をベースとするライティングの簡素化、3ds Max 利用を前提にしたコンポジターとの連携等々、その工夫は数えきれないほどとなった。

「まあ、そうやって情報量を減らしても、その分また作り込んだりしているので負荷はあまり変わらなかったかもしれませんが(笑)。クオリティは確実に上がりましたね。厳しいスケジュール下で次々変更が発生する今回のようなプロジェクトでは、豊富なプラグインでどんな要求にも臨機応変に対応する 3ds Max が最適だ、とあらためて確信しました。この経験を生かして、次も皆で新しいことに挑戦したいですね」(伏見氏)。


【導入製品/ソリューション】【導入目的】
  • 特撮ヒーロードラマの SFX 制作ツールとして
  • 自動車風メカの質感のリアルかつ効率的な再現
  • より新しい動き、より精密なディティールの表現
【導入ポイント】
  • V-Ray との組合せによるワークフロー
  • 用途に合せて選択できる豊富なプラグイン
  • 直感的な操作が可能なインターフェイス
  • ユーザが多く、熟練者を集めやすい
【導入効果】
  • 多様なプラグインツール・機能による作業効率化
  • 度重なるデザイン変更等の要請に柔軟に対応
  • 新しい動き、精密なディティール表現を効率的に
【今後の課題】
  • 作業効率化、品質向上のさらなる追求
  • より柔軟かつ合理的な制作ワークフローの確立
  • より多彩かつ高度な新しい CG 表現の開発

【作品概要】

「トミカヒーロー レスキューファイアー」
ジャンル:特撮ヒーロードラマ(TV)
期間:2009 年 4 月 4 日 ~ 2010 年 3 月 27 日(51 回)
制作:「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会
シリーズ監督:岩本晶(白組)
制作&VFX プロダクション:白組
© 「トミカヒーロー レスキューファイアー」製作委員会

「トミカヒーロー レスキューファイアー」 (pdf - 1078Kb)