「Final Fantasy XIII」

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発表から 4 年、シリーズ待望の 「Final Fantasy XIII」 (以下、「FF XIII 」)が、2009 年 12 月ついに発売となった。天空の理想郷コクーンと未開の地パルスを舞台に女性主人公・ライトニングたちを待ち受ける死よりも過酷な運命とは?
瞬時に戦況を切り替えながら戦うアクティブタイムバトル方式のゲームシステムによって緊張感あるバトルが繰り広げられる。国内向け PS3 用ソフトでは初のミリオンヒットを出荷ベースで記録するなど大きな話題を巻き起こしている。
「Final Fantasy」 といえばシリーズを通して最高峰のグラフィック表現が注目の的である。今回の「FF XIII 」ではハイビジョン環境で描かれる緻密な映像美に高い評価が集まっている。そこで、「FF XIII 」のリアルタイムカットシーンが、どのようにして制作されたのかを株式会社スクウェア・エニックス開発スタッフの皆様にお聞きした。
まず、シナリオが上がるとストーリボードセクションに絵コンテの発注が行われる。絵コンテが完成すると、Autodesk MotionBuilder の Story 機能を活用しながらプレビズ映像が制作される。 ここでは、数十種類の汎用モーションと手付けの組み合せでキャラクタをアニメーションさせてシーンを構築していく。カメラの動きも MotionBuilder でアニメーションが行われる。カメラの揺れは、周期、揺れ幅、乱数などのパラメータをサインカーブベースで制御するプラグインを用いて設定された。こうしてキャラクタやカメラの動き、簡易的な背景・エフェクトを組み上げて作成したプレビズ映像をプロジェクト内では Step1 映像と呼んでいる。 この Step1 映像をもとに小道具や設定資料が綿密な準備が行われる。そして、収録時間の見積もり精度を上げた後に、本番のモーションキャプチャの撮影が行われるのだ。モーションキャプチャ撮影時も、スタジオの壁面に Step1 映像をプロジェクタ投影しながら収録が進められた。これによって、複数の役者に演出意図を効果的に伝えることが可能となり収録時間の短縮に繋がったそうだ。 |
収録後にキャプチャデータのポスト処理が完了すると、続いて汎用モーションを実際のキャプチャデータと置き換えてシーンの構築が行われる。全てクリップ化した状態でキャプチャデータが MotionBuilder に読みこまれカットシーンのタイムライン編集作業を行う。さらに、キャプチャ収録時に演技者の声をワイヤレスマイクで拾った仮音声もトラックに読みこまれカットのタイミング調整が行われる。
カット調整作業を効率化するために、モーションキャプチャ班に所属する林氏によって MotionBuilder 既存機能を補う C++ カスタムプラグインも作成された。例えば、株式会社スクウェア・エニックスの内製ミドルウェアである Crystal Tools で必要となるカメラ構造をワンプッシュで作成する機能、大量に存在するカメラを素早く選択切り替え出来る機能、カメラクリップを選択するとその尺と再生フレーム範囲を同期させる機能などである。こういったカット編集作業を効果的に行うために便利な機能を一つのウィンドウに集約させるカスタマイズによって効率化が図られた。
なお、実機データはカット単位で管理が行われている。そこで、MotionBuilder 上ではショットクリップを用いてモーションキャプチャーデータの使用範囲をカット単位に区切っている。その際、カットの尺に調整が入りそうな時は、あらかじめテープ編集の時代のように 1000 フレームから 1 カット目、2000 フレームから 2 カット目というように余白として糊しろを空けて配置し後の編集に対応しやすいよう下準備が行われた。キャラクタが多数登場するシーンではカット単位でどのキャラクタを実機で表示するかといった情報も MotionBuilder 上で指定されている。つまり、デザイナがカメラクリップの尺を視覚的に編集するだけで各クリップのフレーム範囲やカット割の情報を実機データとして出力できる環境で編集は進められた。
この段階のモーション修正はオフセット修正にとどまるものである。つまり、ベースレイヤに読み込まれたキャプチャデータに対してサブトラックとして位置や角度のオフセット調整を行うのである。これは、カットシーン班が腕の回転用Fカーブを直接修正してしまうと、後にモーション班による繊細なデータ修正が行い難くなってしまうためである。サブトラック機能を利用することで、オリジナルデータを破壊せずにオフセットによって明確に修正意図を伝えるという手法が選択されているのだ。
また、後の修正リスクが極力少なくなるように、カットの構成と尺は、この段階で完全に決定される。万が一、後にカメラのアングルや尺が変更になってしまうと、本来は映っていなかったキャラクタの顔が画面内に映ってしまったり、セリフのタイミングが変わってしまったりする。こういった方針のブレは、フェイシャルのスケジュールに大打撃を与えてしまいかねない。そこで、決定したカット構成には変更が発生しないように細心の注意が払われた。こうしてモーションキャプチャを読み込んでオフセット調整を行った完成したデータは、Step2 映像と読ばれている。
この Step2 映像のシーンデータをもとにボディモーション班によって最終的なボディアニメーションの修正が行われる。前述のサブトラックで指定されたオフセット情報から精度の高い状態の動きに仕上げていくことでシーンは完成していく。MotionBuilder でアニメーション修正が完了したデータは、バッチ処理などを利用して Softimage を経由して実機へと出力される。これは、MotionBuilder では標準リグをベースに作業しており複雑な補助ボーンは Softimage でセットアップされているためである。
今回、カットシーン制作のアニメーション編集に MotionBuilder を選択した理由は大きく3つあるそうだ。
多数のキャラクタを動かし、音声を読み込んでも再生能力に優れ、レイアウト段階のツールとして必要十分な機能を搭載しているため素早くざっくりと作業が行えることが MotionBuilder の魅力であると小林氏は語った。なお、Crystal Tools が 32 ビット対応のために、ボディモーション修正など軽いシーンは 32 ビットで作業が行われた。重たいデータを扱う場合には、デュアルブート環境を切り替えて 64 ビット OS で作業を行ったそうだ。
キャプチャ対応が出来ないような派手なアニメーションや骨構造が特殊なモンスターのアニメーションは Softimage で行われている。他にも召還獣が登場するバトルのカットシーンでは Softimage 内で手付けによるカメラアニメーションや Animation Mixer を利用した編集も行われている。 |
| ゲーム用バイナリデータに変換する前のデータは中間ファイルと呼ばれる。「FF XIII 」の開発環境では、miga (ミグエー、またはミガ)と呼ばれる社内製のアスキーアニメーションデータを中間ファイルとして使用している。 |
| フェイシャルアニメーションの作業では、複数の班にまたがるデータや情報のやりとりが行われた。例えば、セリフの配置情報はカット班、セリフの ID・内容・音声データはサウンド班といったようにセクションをまたいでファイルを管理する必要があったという。さらに、いつ、どのファイルを更新したのかという情報を管理することも作業では重要となる。そこで、フェイシャル作業に必要な情報を一元管理するための WEB ツールが PHP と VB スクリプトを用いて構築された。 |
| 続いて、フェイシャルアニメーションの編集パイプラインについて詳しくお聞きした。前述のモーションキャプチャ演技者の音声をピンマイク収録した仮の音声データを利用してフェイシャルアニメーション作業は進められる。これにより、ボディアニメーションの最終調整と並行する形でフェイシャル作業が行えるのだ。本番用の声優の音声データを待たずに先行作業を行っておき、本番データがあがってきた際にファイルを上書きすることで簡単に差し替えられるようになっている。 |
| ボディの付属物やヘアのシミュレーションを担当された村松氏にお話を伺った。コンソールの処理能力が向上した現在は、髪の毛や衣服の自然な動きもゲーム上で再現が可能となった。「FF XIII 」のシミュレーションでは、動くべき物を動かすことが大前提として作業が進められたという。 |
当初、同じ形状のモデルに対して使用するシェーダの組み合わせ毎にモデルリソースが増える事態が発生したが、描画用のモデルとシェーダ用のモデルを別々に用意することで問題の解決が図られた。結果としてデータリソースを減らすことや、使用メモリの削減につながっただけでなく、双方の組み合わせを行うことで表現の向上につながったという。
吉田氏によるとエフェクト作成の魅力は、自身の裁量とアイデアで自由に表現が可能なことであるという。分業が進んでいるセクションが多いが、エフェクト班は絵コンテ作成から始まりフィニッシュまで一通りの責任を自分が担うこともやりがいを強く感じるそうだ。ひとつのテーマをエフェクトで表現する場合も、3 人のデザイナがいた場合には、それぞれテイストが異なる個性的なデータがあがってくるそうだ。
「FF XIII 」のバトルエフェクトでは、「余韻」にこだわった演出が行われているという。通常、ゲーム中にエフェクトが多発する場合は、GPU 処理を優先させるために発生したエフェクトを直ぐに収束させるケースが多いという。しかし、「FF XIII 」では常駐メモリをキロ単位で調整することで快適な処理と「余韻」の両方のバランスを見事に成立させているのだ。爆発後も煙が直ぐに収束せずにしばらくとどまるといった演出表現にもぜひ注目して欲しいという。
背景制作パイプラインでは、モデリング作業やブラインドデータを用いたゲーム用属性の埋め込み設定が Maya を通じて行われた。Maya のビューポート上では実機と同等のプレビューが行える環境が整えられた。ポストフィルタ表現やハードウェア固有表現(PS3 の TransparencyAA )を除いた正確なプレビューが行えるため背景制作が効率的に進められたという。背景データでも複雑なアニメーションを必要とする場合は、Maya で簡易的に設定した動きを中間フォーマットで Softimage に受け渡してアニメーションを作りこむような連携もあったという。
| カットシーン制作では、企画班がモーションやキャラクタ、サウンドを組み込んでシーンを完成させていく作業も行われる。この時も平行して他のセクションが作業を行えるよう、Cut Editor(Crystal Tools) のタイムラインにはトラック別にアクセス権限が設定できるようになっている。トラックごとに権限を管理することで、企画班の組み込み作業、エフェクト班のエフェクト設定、カットシーン班のライティング作業が並列で行えるのだ。ここでも、チームごとに作業したデータを最終的にマージしてシーンを完成させるワークフローが採用されている。 |
このように、あらゆる工程で平行作業が行えることを前提に「FF XIII 」の開発パイプラインは考えられている。徹底的したワークフローの効率化と開発スタッフによる創意工夫によって、プロジェクトで目標とされた「フローの後戻りをしない」こと、「多セクションの並行作業」は実現されたのだ。
そして、Softimage、Maya、MotionBuilder といったオートデスク製品それぞれの特性を生かせるシームレスな制作環境によって、限られた期間のなかでも 「Final Fantasy」 だからこそ求められる緻密なグラフィック表現という高い期待に応えることに見事に成功できたのであろう。
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