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exiii 株式会社
人間の「手」
―その驚異を出発点にバスケットボールが大好きな近藤玄大氏は、子どもの頃から、パスしドリブルしシュートする「手」の精妙な動きに魅せられました。それが全ての始まりでした。彼は文字どおり人間の「手」の虜となり、大学では義手の研究に打ち込み、大学院ではアメリカにも留学。卒業後は Sony でロボット工学分野の研究に携わったのです。
研究の忙しさに追われ、いったんは「義手」から遠ざかった近藤氏でしたが、職場に 3D プリンタが導入されると全てが一変しました。3Dプリンタで新製品のプロトタイプを作りながら、「これで義手も出力できるのでは?」と思いついたのです。“義手というプロダクトには、まだまだ大きな可能性がある!” そんな思いが、彼の背中を力強く押しました。
3Dプリンタで閃きをカタチに
近藤氏の大学院時代の研究仲間、山浦博志氏は Panasonic の機械系エンジニア。初任給で 3D プリンタを購入した逸話の持ち主です。その 3D プリンタから 3D モデルの手指が出力されるのを見るうちに、近藤氏の思いつきは確信に変わります。バッテリ電源式の電動義手を3Dプリンタで製作しよう!2人は Panasonic の工業デザイナー 小西哲哉氏に声をかけ、ここにチームが生まれました。
550kmを超えプロトタイプ製作へ
3人はそれぞれの職場に在籍したまま、最初のプロトタイプ製作に着手します。近藤氏の職場(東京)と山浦・小西両氏の職場(大阪)の間には約550kmもの距離がありましたが、若者たちは ウェブと宅急便でその距離を超え、それぞれの空き時間をフルに活用しながら開発を進めていったのです。
世界の舞台で脚光を浴びる
やがて完成したプロトタイプを、3 人は国際的なデザイン・エンジニアリング賞「ジェームズ ダイソン アワード 2013」に出品。応募作650点中2位という快挙を成し遂げ、さらに国内最大のハードウェアコンテスト「Gugen 2013」では優勝を果たし大きな注目を集めました。
熱いハートの試作試験サポーター
数々の受賞に輝く新しい電動義手が全国ネットのテレビ番組で紹介されると、新しい出会いも生まれました。事故で腕を無くした森川章氏が「使ってみたい!」と Facebook を通じてチームに連絡してきたのです。
新スタートアップ企業、誕生
森川氏はこの新しい義手に対する熱い気持を語り、協力を申し出ます。その思いを受けとめた 3 人は彼の強い気持に勇気づけられ、2014年、いよいよ勤務していた企業からのスピンアウトを決意。数カ月後、 exiii 設立を発表したのです。
進み続ける夢を、支え続ける技術
2015年後半の時点で、exiii はすでに豊富なカスタムオプションを備えた3種の電動義手を発表しています。いずれも 3D 設計ソフトウェアや家庭用 3D プリンタなど一般的な技術を用いて製作され、同時にそのアイデアやリソースはオープンソース方式により世界へと公開されています。
ただモノをつかむだけの電動義手ならば、半世紀も昔から存在しています。しかし、それは未だに高価(150万円以上)で、個人では容易に入手できません。そんな現状を根本的に変えてしまおう、というのが exiii の構想です。家庭用 3D プリンタと市販の材料を使い、消費者みずから3Dプリントして組立て、実際に使える、安価で実用的な電動義手。それ が exiii のめざす電動義手なのです。
腕時計やスニーカーのように自己表現の1つにもなり得るのが、exiiiの電動義手の特徴です。「たとえば、その日のファッションに合ったカラーを選べるとか、身に付けて楽しい義手を目指しています」。
「私の“究極の目標”は、手を失った人がみずから3D プリンタで造れるような義手です。世界を生産する人と消費する人に二分してしまうのではなく、誰もが自分の欲しいものは自分で創れる、そんな世界に暮らしたいと思っているのです」
exiii の電動義手は、ユーザからのフィードバックを限りなく積み重ねながら進化し続けています。フィードバックの結果に基づき仕様を変更してそれを洗練させ、さらにその結果をテストしてユーザの声を取り入れる。この一連のプロセスをつねに繰り返していくことで、機能とデザインの継続的な進化と向上を実現しているのです。その限りない積み重ねは、いまある 3 つのプロトタイプに結晶しています。
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