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「私たちのような昇降機メーカーはお客様である建設業者様との付き合いから仕事がはじまります。図面でお客様と会話をしながら、それが基本的な契約書になっていくわけです。ちょうど 10 年前から日本でも BIM が出てきましたが、お客様が積極的に導入されたのは 2017 年頃からでしょうか。クラウド上の Autodesk BIM 360 に入れた、3D モデルを使い、お客様と私たちが色々な内容をチェックすることができるので、お互いに大きなメリットがあります。現在はまだ 2D 図面と 3D の両方を使っていますが、今後は 3D が主流になってくるでしょう。承認図面までを Autodesk Revit で完結できるようになると、さらなる効率化がはかれると考えています。つまり、BIM モデルで合意をして、そこから起こした図面で承認を取るような形、あるいは図面自体は簡易図面で済むといったような形になれば、私たちにも大きなメリットがあると思いますので、そこに向かって進んでいきたいと考えています」
フジテック株式会社 常務執行役員 営業技術本部 本部長 津山 圭二 氏
現在はまだ 2D 図面と 3D の両方を使っていますが、今後は 3D が主流になってくるでしょう。承認図面までを Autodesk Revit で完結できるようになると、さらなる効率化がはかれると考えています。
お客様との商談に必要な BIM データ を Autodesk Revit で作成
昇降機メーカーであるフジテックは、建築設備分野の一翼を担いながら、同時にものづくり、製造業の本流でもあるという両面を持ち合わせる。そのため、建築と製造のふたつの分野をまたがる形で、2D CAD のスタンダードソフトウェアとして長年建築業界で使われている Autodesk AutoCAD、3D 建築設計に対応した BIM ソフトウェアの Autodesk Revit、そしてものづくりのための 3D CAD ソフトウェアである Autodesk Inventor を、それぞれ特化する形で社内では使用している。
プロセス管理部の山本健治氏は次のように話す。
「私たちは、モデルや IT を活用して、マスカスタマイゼーションの高度な実現を目指しています。Inventor で自動設計したモデルができれば、製造データがそのまま工場で使えるため、“ものづくり”の面で有効活用できています。昇降機には標準仕様とオーダー仕様がございまして、仕様に応じたスピーディーな設計、生産体制を備えていないといけません。Inventor を活用することで、仕様決定から製造までの期間を短縮することが可能になるというわけです」
データの一括管理にたずさわっているシステム管理部の三木治雄氏は、図面の電子化、データベースについて以下のように話す。
「90年代初頭より、私たちは図面のデータベース管理をしています。創業当初からの手書き図面もすべて電子化して見られるようにしていまして、ほぼ 100 パーセントカバーしているのではないかと思います。最近では 2D だけではなく 3D CAD を利用していますので、3D ビューでモデルを回しながら閲覧したり、3D モデルの属性情報や構成情報を表示させたりしています。3D CAD のデータ管理は Autodesk Vault を使っていますが、今後はさらに 3D を加速させうまく連携させていきたいと考えています」
フジテック株式会社
デジタルイノベーション本部 プロセス管理部 部長 山本 健治 氏
デジタルイノベーション本部 システム管理部 主務 三木 治雄 氏
エレベータ・エスカレータの設計には AutoCAD と Inventor を使用
3D CAD の活用は設計周りの部署だけのことではない。据え付けた昇降機の保守までを担う同社では、現場のフィールドエンジニアがその場でスマホやタブレットを活用して、当該モデルの 3D データを容易に閲覧すれば、故障やトラブルが生じた際の対処の仕方も変わってくる。不調となった部品を簡単に交換できるように手配も迅速にできるようになるからだ。また、自社システムによる地図データから、当該現場をズームしていくとデータが掘り下げられ、その部品構成や図面を見れば、マクロからミクロまで一気通貫で 3D モデルを確認することも可能である。
さらに、施工管理ソフトウェアである BIM 360 にも「すごく将来性を感じている」と三木氏。
社内のコミュニケーションも Revit の BIM データをベースにスムーズに進む
「私たちは、『クラウドファースト』と『モバイルファースト』を基本に IT 活用を進めております。建築施工のプロジェクトデータに、いつでもどこでもアクセスすることができる BIM 360 なら、お客様が準備したモデルの中に Revit のファミリなど、私たちのモデルを収められ、将来的には二次元の図面も管理することができるようになります。それを確認申請や私たちが使うような据付図にもつなげられるのではないかと期待しています。
従来のお客様との対面での打ち合わせでのすり合わせではなく、クラウドを介してデータを精査するやり方が浸透していくのは、私たち設備メーカーにとって大きなメリットとなります。そうなれば、クラウドファーストによりシフトできるのではないかとも思います」
国内外で同時に多くの現場を持つ同社では、社外で仕事をする人も多く、モバイルやクラウドの活用は盛んだ。事務所に帰らないと仕事ができないということは、ほぼなくなっているという。また、世界各地で展開する事業としても、クラウドのさらなる活用は必須であると言える。
高度な都市化が進む 21 世紀、昇降機の需要も、引き続き、右肩上がりであることは間違いない。さらに AI 活用や VR 活用にまで意欲を見せる同社の目線は、つねに未来を見据えている。