3 次元設計の“いいとこ取り”: CAD の活用で 2 次元設計を部分最適化

by Gen Shimizu
- 2018年7月24日
3 次元 CAD

産業機械を中心とする製造業において、製品設計や機械設計を行う設計部門と、そこで行われる製図は不可欠な存在だ。精度の高い部品が必要とされるようになった産業革命以降、図面を通して行われる設計が一般的になっている。

日本でもドラフターによる製図の時代が長く続き、CAD が進化した現在も、製造業界では 2 次元設計が行われているケースが多い。その 2 次元設計者たちからは、とりわけ以下の部分に課題を感じていると聞くことが多い。

  • 複雑な形状の認識 – 2 次元の図面から 3 次元の形状を頭の中に思い描く必要があるが、複雑な形状の場合は、経験や慣れがないと難しい。
  • 設計ミスの可能性 – 2 次元の図面だけでは、干渉の発生を把握したり、機構の正確な動きを理解したりするのが難しい場合がある。
  • 計に必要な情報の把握 – 設計には強度や振動の計算、重量などの算出が必要だが、そうした作業とは製図とは別のものとなる。
3 次元 CAD AutoCAD Inventor
松永製作所は、AutoCAD を使った 2 次元設計の資産を生かしつつ Inventor による 3 次元設計へと移行 [画像提供: 株式会社松永製作所]

こうした問題の多くは、3 次元設計を行い、3 次元モデルや物理情報を活用することで解決できる。だが、日々忙しい設計者が新しいツールをすぐに業務で使うのは難しいし、これまでの歴史や文化を変えるのは大変な作業だ。

その一方で、3 次元 CAD を使いこなすことにより、形状・機構を視覚的に理解でき、図面を把握するのが慣れていない部署からもフィードバックが得られるなどのメリットが生まれる。そしてそれにより、設計品質の向上や設計期間の短縮なども実現可能だ。

2 次元と 3 次元の設計を併用

ここで重要なのは、2 次元設計と 3 次元設計が、二者択一的に「切り替え」を行うものではない、ということだ。2 次元設計を基本としながらも、必要なタイミングで 3 次元設計を活用し、また 2 次元設計に戻る「併用」もできる。それによって、3 次元設計への移行期間中、あるいは全てを3次元で設計する時間がないような場合にも、3 次元設計ならではのメリットを活用することができるようになる。その代表的なメリットである 3 つの例を紹介しよう。

1.構想設計における干渉チェック
2 次元図面のデータをもとに、必要な部分だけを押し出し、またはモデリングを行うことで、干渉チェックや目視による 3 次元でのチェックを行えるようになる。3 次元化することで形状認識が容易になり、あらゆる方向から確認を行えるため、思い違いなどによるミスを防ぐことが可能。担当設計者以外であっても、不具合を目視で容易に確認できる。


この作業を行うには、2 次元図面のデータを 3 次元 CAD へ読み込み、その一部を 3 次元にすることになる。その際、異なるベンダーのソフトウェアを使うと、データを読み込むことができても、文字化けが発生する、または線分がつながっていないためソリッド化できないなどの問題が起こることがある。その修正作業などで効率が大きく下がる場合があるので、高いレベルでの互換性、相互運用性が確保されていることを事前に確認する必要がある。

設計の作業において、設計変更は付き物だ。その際に、2 次元のデータ変更が 3 次元側に自動的に反映されるかなど、シームレスな環境を実現できているかどうかを必ず確認しておこう。それが、繰り返し行われる設計変更に要する手間と時間が大きく左右することになる。

2. 解析による検証
装置の可動部分やその周辺が壊れずに問題無く動作するかを確認する際、設計している装置全体でなく、その一部のみに解析 (シミュレーション) が必要な場合も多い。解析は従来、外部の業者に委託するか、実際に作ってみて試すことが多かったが、コンピューター内でシミュレーション可能になることで、期間やコストの大幅な短縮になる。

3 次元 CAD Inventor
Autodesk Inventor では形状変更と解析を同一の UI 上で進められる

この場合、CAD と CAE が別ソフトウェアだと、STEP や IGES 形式などの中間ファイルによるエクスポート / インポートや解析条件の再設定など、手間のかかる作業が必要となる。最適な形状を見つけるには、形状変更と解析を何度も繰り返すことになるため、その作業をスムーズに行える環境が構築できるかどうかを確認しておこう。

3. 重量を取得してコスト判断
全体を 3 次元モデル化することで、正確な重量や重心位置を確認できる。これにより設計重量(図面から読み取った概算の重量)と実重量との差を最小にでき、正確なコストの把握や、より精度の高い見積もりの算出も行えるようになる。

昨今は経営陣からも、標準化やモジュール化、自動化など「設計ルールの構築」に対する関心が高まっている。3 次元設計へ移行を進めることは、設計者にとってはミスの修正よりも設計そのものに時間を使えることになり、同時に設計ルールの構築による工数短縮、コストダウン、品質向上にもつながっていく。

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