3D プリント臓器の実現が鼓動の感じられる距離にまで接近

by Cindy Glass
- 2016年8月12日
3Dプリンター臓器
[提供: Advanced Solutions]

Advanced Solutions 代表取締役兼 CEO のマイケル・ゴルウェイ氏は、私たち人間は歴史上で最高の時代を生きていると信じている。また、それを証明するロボットも所有している。そのロボットは、ヒト用人工臓器の 3D プリントに使われることになっている。そう、完全に機能するものも。

時は 2010 年 10 月に遡る。ゴルウェイ氏は、ルイビル大学同窓会の資金集めのイベントに参加した。このイベントには、ケンタッキー州ルイビルの Cardiovascular Innovation Institute (CII: 心臓血管イノベーション研究センター、) の見学と、最初の「人工心臓」 (患者独自の細胞を元に開発された移植用心臓) を作成する CII のビジョンに関するスチュアート・ウィリアムズ博士の講演が含まれていた。

ゴルウェイ氏の感想は「とても素晴らしいが、果たしてどれほど実用的なのだろう」というものだったが、その数日後も、まだウィリアムズ博士の人工心臓に関する考察に思いを巡らせていた。幅広い分野にわたって先進的なエンジニアリング機能を提供している多角的なテクノロジー企業、Advanced Solutions に何かできることがあるのではないかと考えたのだ。その後のランチ ミーティングで、ふたりの間に友情が築かれることとなる。

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心臓モデル上に動脈とさらに小さな血管をプリントする実験の例 [提供: Advanced Solutions]

ゴルウェイ氏は「10 年先の未来の世界で活動する」というウィリアムズ博士のチームの才気に感銘を受ける一方で、いま現在の実用性にこだわった。「私はビジネスマンです」と、ゴルウェイ氏。「光熱費や従業員の給与を支払う必要があります。このビジョンを、たくさんの人々に今すぐ役立つソリューションを用いて実現できるような方向へと導くにはどうすればよいか、そう考えるのです」。

テクノロジーと、私たちが生きるこの時代に対するゴルウェイ氏の情熱は、はっきりと伝わってくる。そして、彼の切迫した様子も。

「事業主としての私に、大きな影響を与えることが 3 つあります」と、ゴルウェイ氏。「まず、500 年前の生活を考えてみると、私は生き延びることはできなかったと思います。私たちの生活の質をこれほどまでに高めたのは、テクノロジーです。次に、人類の歴史において今が最高の時代であり、また私たちは偶然、世界でも最も恵まれた場所のひとつに生まれたのだ、ということです。非常に過酷な地域に生まれる可能性も大いにあったわけで、そうであれば私たちの世界感は大きく異なっていたことでしょう。最後に、人生はあまりにも短い、ということに気付いたことです。平均寿命まで生き延び得たとしても、短すぎます」。

これらを心へ刻んだゴルウェイ氏と彼のエンジニア チームは、CII の人工心臓プログラムについて、さらに 2 年を費やして学んだ。この間に、人工心臓を実現するために組み合わせる必要があると氏が考える、4つの重要な分野 – 細胞源、デザイン、組立、培養の分野で極めて大きな進展があった。

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[提供: Advanced Solutions]

2 年間の研究を経てゴルウェイ氏は自身のチームが、人工心臓の開発プランから多大な影響を与える障害を取り除けるような有意義な手法で、デザインと組み立て分野に取り組めるという確信を得た。2013 年 3 月には Advanced Solutions Life Sciences 部門が設立され、生体系への応用に向けて特別にデザインされた、ハードウェアとソフトウェアを統合した初のソリューションの開発が始まった。組織構造情報モデリング (TSIM) ソフトウェアと、6 軸 3D プリンター BioAssemblyBot の組み合わせだ。

この組み合わせは強力だ。TSIM は、生物学者や研究者による 3D 生物学的フォーマットでのモデリングを可能にする、直感的なデザイン ソフトウェアだ。これにより、デザイナーは CT スキャンや MRI などの患者固有のデータをインポートして統合し、モデリングに役立てることができる。この要素は重要だ。なぜならこれは、正しく機能する組織構造、最終的には臓器全体を作成できるよう、科学者が再生医療の「レシピ」を継続的に改善していくことを可能にするからだ。デザインが完成すると、このモデルはヒト組織構造をプリントできるユニークな 6 軸 3D プリンター、BioAssemblyBot によって物理構造へと変換される。

BioAssemblyBot は、X-Y面と層状に構造を作成するZ面で構成された従来の積層造形法による 3D プリントとは趣を異にした、独特の設計だ。ゴルウェイ氏のチームも、当初は既存の 3D プリンティング技術の応用を試みたものの、障害にぶつかった。Advanced Solutions は、生物学的構造の形状の複雑性と、使用されるバイオインクや生体細胞の特異かつ苛酷で、厳しい精度要件に対処する方法を再考する必要に迫られた。

3Dプリンター臓器
[提供: Advanced Solutions]

Advanced Solutions がAutodesk AutoCADAutodesk Inventor Professional、MakerBot 3D プリンターを使用してデザイン、製作した 6 軸デザインは、こういった問題を解決し、チームが支援する生物学者と研究者に無限の柔軟性を提供した。

この統合システムは機能した。CII で使用されるようになると、新しい細胞構造の開発サイクル は 3 ~ 4 ヵ月から 1 時間へと大幅に短縮され、3D プリント製臓器の実現へ向けた進展も劇的に向上した。Advanced Solutions Life Sciences は、会社初の商用システムの販売を 2014 年 8 月に開始した。そのうち人間の心臓をプリントするだろうこのロボットは、現段階で製品化されている。

ゴルウェイ氏は、今この瞬間にしっかりと根差した未来主義者だ。「私を謙虚な気持ちにさせるのは、私たちは生きている間に信じられないほどテクノロジーが拡散するのを目の当たりにする、人類史上でも最初の世代だということです」と、ゴルウェイ氏。「数世代前もテクノロジーは飛躍的に進化を続けていました。ただ、それに長い時間がかかったというだけのことです。私たちより遙かに前の世代では、技術革命における変化をひとつ目撃できれば幸運 でした。私たちは実に、ひとつやふたつではなく、幅広い産業分野にわたって激増するテクノロジーをまさに目の当たりに体験する初の世代なのです」。

「私たちの世代は、こういった技術進歩の成功と失敗の全てを取り入れ、ヒト向け移植用臓器のプリントなど、より高次の問題を解決することができるのです」と、ゴルウェイ氏は続ける。「私たちは今、生物学を情報技術のように扱うことを可能にする技術革命のまっただ中にいます。これこそまさに革命なのです」。

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