アンダーアーマーがジェネレーティブ デザインと 3D プリントシューズでフットウェアの世界を変革

by PJ Brown
- 2016年6月16日

始まりは、あるアイデアの種と問題解決の必要性だった。ただしクリエイティブなプロセスを実際に刺激したのは、種でなく樹木の「根」と「構造」だ。アンダーアーマーが先日リリースしたパフォーマンス トレーニング シューズ、The UA Archtech で初めて採用された 3D プリントによる格子状のミッドソールは、その構造にインスパイアされたものだ。

ボルチモアを拠点とするアンダーアーマー (UA) でデザインと製造イノベーション部門のディレクターを務めるイアン・ガイアン氏に3D プリントシューズのデザインのアイデアが閃いたのは、日曜の昼下がりのハイキング中だった 。

「この Architech は人工の物体や建築と、自然の有機的な形状にインスパイアされたものです」と、ガイアン氏。「最大のインスピレーションとなったのが樹木の根でした。根には地中に埋もれたものもあれば、上へと伸びるものもあります。そこに注目しました。樹木はかなりの重量になりますが、その構造を支えるのは根なのです。そこで、特定の構造を使用してフットウェア向けに独自のカスタム クッション機構を構築するにはどうすればいいのか?という問いからコンセプトを作っていきました」。

3D プリントによるArchitechシューズのスケッチ
[提供: アンダーアーマー]

ガイアン氏とチームは、さまざまなエクササイズでトレーニングを行うアスリートのため、この問題の解決に取りかかった。リフティングではより重めのシューズが、ランニングやその他の運動では軽めのシューズが必要とされる。パフォーマンス フットウェアやアパレル、スポーツ用品のイノベーターである UA の目標は、あらゆる種類のトレーニングでクッションとサポートを提供する、柔軟でありながら安定したシューズを生み出すことだった。

「Architech のユニークな点は、2種類の構造を撚り合せていることです」と、ガイアン氏。「説得力を持ち、問題に対応できるパフォーマンス トレーニング シューズとしてアスリートや消費者に好評を博しています」。

その発言は間違いではない。UA が96足のみ限定生産した299ドルの UA Architech は、瞬く間に完売してしまった。

アンダーアーマー Architechの 3D プリントされたソール
3D プリントされた組立前のソール [提供: アンダーアーマー]

このシューズを傑出した存在にしている要素のひとつに、UA チームがジェネレーティブ デザイン ソフトウェアを使用したことが挙げられる。ジェネレーティブ デザインはアルゴリズムを使用し、デザイナーや設計者は、コンピューターにより生成される無数のデザインの可能性を模索可能だ。型破りな形のものが提供されることも多く、最終製品により素早く到達できるよう支援が行われる。ジェネレーティブ デザインをいち早く導入したガイアン氏は、将来的にはこのテクノロジーが、よりアスリート向けに仕立てられた新たなフットウェア テクノロジーの開発に役立つと考えている。デザイン チームが軽量な構造を作成したり、パーツの重量を軽減したりすることも可能だ。

「Autodesk Within ソフトウェアによって、こうした非常に特殊な格子構造を作成できました」と、ガイアン氏。「単一のセルから複数のセルによるパターンを作成できます。そのため無数のパターンや構造間隔を試し、テストや検証を行うことができました。ひとつの構成バケット内で、同じデザインや複数のデザインを何度も反復することが可能でした」。

コンセプト デザイン (一部を Autodesk Fusion 360 で作成) から生産までの過程で、チームは何度も反復を繰り返した。

3Dプリントによるアンダーアーマーのシューズ、Architech
[提供: アンダーアーマー]

「これだと確信できるものが生まれるまで、本当に多数の格子デザインをテストしました」と、ガイアン氏。「解決すべき課題も幾つかありました。まず、緩衝材として機能するかどうかという点。次に全体的なデザインの外観。さらにはフットウェア内に組み込んだ場合に、どれほどのパフォーマンスを実現できるのか、という点です。上に何かを落としたり、圧迫されたりした場合、元の形に復元するまでどれくらいの時間がかかるのか? そこから多様なデザインを作成し、先行して試験を行って最終結果を確認していきました」。

UA が UA Architech 開発にかけた2年弱の時間の大部分は、機械と人間による検証に費やされた。80 名以上のアスリートが120時間を超える時間をジムで過ごし、シューズを痛めつけた。ガイアン氏によるとUA は数十万もの試験サイクルを実施し、シューズが破損することがないかを確認した。

「2年の開発期間の中で、不具合を発見しました」と、ガイアン氏。「これはいいことですよ! 大抵の場合、不具合は次のヒット製品の発見や、次作の画期的なアイデアの開発につながります。事実そうなりました。検証でホームランを打ったようなものです。このシューズの開発から新しい検証プロトコルが生まれたのですから」。

3D プリントによるアンダーアーマーのArchitechシューズをテスト中
UA Architech の耐久試験 [提供: アンダーアーマー]

最終製品に近づくにつれ、検証中のフィードバックも次第に好意的なものになっていく。アスリートは同じシューズを履いたまま、重量挙げからクロストレーニングへ進むことができた。このシューズは快適でありながら安定性に優れ、爪先部分は柔軟だが、かかと部分はしっかり固定されている。テスターたちはこうした体験は予測していなかったようだが、製品を非常に気に入り、いつ入手可能になるのか知りたがった。

だが生産は時間のかかるプロセスだ。それは、特に UA Architech の 3D プリントへの依存度を考えればなおさらだ。3D プリント市場は、これまで大量生産でなくプロトタイプ製作にフォーカスしてきた。そのため、現行の 3D プリンターは大量生産向けの仕様にはなっていない。さらに 3D プリントはバッチベースのプロセスを使用するため、1 日に作成できるパーツ数には限りがある。

「このユニークなフットウェアの作成に 3D プリントを使用したのには理由があります」と、ガイアン氏は説明を続ける。「まず、格子構造は 3D プリントでなければ実現不可能です。それに、従来の手法では作成できない何かを作るのは、とてもエキサイティングなことでもあります。相関関係の異なるパーツや種類の異なるパーツ、異なる種類の構造をひとつにまとめ、反復と失敗を繰り返して成功にたどり着くのです。3D プリントは、カスタマイゼーションの可能性が無限であるのもユニークな点ですね」。

UA は、3D プリントによるパフォーマンス トレーニング用シューズを生産する初の企業だ。だが、ナイキやアディダス、ニューバランスなど、競合他社の一部もランニング シューズやクリートの開発にこの技術を使用している。これらの企業全てが、新たなテクノロジーを活用することでアスリートのトレーニング方法を変えようとしているのだ。

「Under Armour のロゴを冠した製品は、全てパフォーマンスを重視しています」と、ガイアン氏。「私たちの仕事は、それを身に付けるアスリートと同様以上に機能を発揮し、彼らの能力向上に役立つ製品を開発することです。それは UA Architech も全く同じです」。

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