3D プリント エレクトロニクス : 回路をより迅速かつフレキシブルに、ドレスの中にも

by Jean Thilmany
- 2015年5月21日
Micke Tong

3D プリント エレクトロニクス は未来のものではなく、現時点で実現している。エレクトロニクス デザイナーは電子デバイスをワンピースでプリントして、以前は不可能だと思われていたような、あらゆる形のものや場所と統合可能だ。

Voxel8 の共同設立者、ダニエル・オリバー氏は「3D エレクトロニクス プリンターにより、そのうち回路基板が過去のものとなるかもしれません」と語る。このマサチューセッツ州サマービルにある会社は、エレクトロニクス 3D 回路プリンター、Voxel8 を制作予定だ。

「この Voxel8 により、エレクトロニクス デザイナーは二次元のプリント基板が持っていた制約から解放されます。エレクトロニクスに応じてパーツをデザインするのでなく、パーツにフィットするようエレクトロニクスをデザインできます」。

このプリンターによりエンジニアやデザイナー達は、3D プリントされたアンテナや電磁コイルなど奇抜なデバイスのデザインとプロトタイピングを素早く実現し、以前には考えられなかったような方法で統合回路をスタックできる。

Voxel8 3D エレクトロニクス プリンター
Voxel8 3D エレクトロニクス プリンター

Voxel8 は 1 月に創業し、現在オーダー受付中の第一世代プリンターは年内の納品を予定している。今年の出荷予定台数は語られていないものの、それほど多くはないだろう。「最初の段階では主にプロトタイピングに使われるでしょう」と、オリバー氏。

彼は長期的には、3D プリントされたエレクトロニクスが次世代センサーの一部となると考えている。「モノのインターネットが進むと、あらゆるものに膨大な数のセンターが要求されるようになるでしょう。このプリンターは、そうしたものの製造にも使えます」。

布やその他の非伝統的な素材に使える、3D プリントされたフレキシブル回路基板の制作を考えている会社もある。例えば Cartesian Co. は小型の基板をスピーディに生み出せる 3D プリンターを製造している。

Cartesian Co. の CEO、アリエル・ブライナー氏は「当社のプリンターは、例えばフレキシブルな時計バンドや布など、生地の中に継ぎ目なくエレクトロニクスを織り込むために使えます」と語っている。同社は先頃、Kickstarter でハガキ大の基板を作成できるデスクトップ プリンター、Argentum を発表。これまで約 150 台の受注を履行している。

flexible 3d-printed circuit boards
フレキシブル基板回路 [提供: Cartesian Co.]

一方、ニューヨーク州クイーンズをベースとする BotFactory 社 (同様に Kickstarter で創業)は Squink という 3D プリンターを製造しており、数分で基板をプリントできる。

BotFactory の CTO、オスピナ氏は「短時間でプリントできる基板により、低価格ながらフレキシブル回路基板の制作と迅速なプロトタイプ化をニッチ市場に提供できる可能性があります」と述べている。「プロトタイプや少量の製品を製造する際にも、中国から基板が到着するのを待ったり、ここ米国で高価な基板をオーダーしたりする必要はありません」。BotFactory は Kickstarter での出資者へ、春にはプリンターの出荷を予定している。

3D エレクトロニクス プリンターは、現在のアセンブリーラインから生み出されるものとは異なる電子パーツやデザインも製造できる。

例えばコーネル大学のホッド・リプソン機械工学、航空工学准教授は 3D プリントにより、従来には一般的だった箱のような形状のラインにはそぐわない製品デザインも可能になると語る。Fab@Home (3D オブジェクトを製作するプリンターとプログラムのプラットフォーム) を作り上げたチームにも参加していたリプソンは、現在の製造方法では不可能な、あらゆる形状のものをプリント可能になるとも言う。

Voxel8 のオリバー氏も同意見だ。「平面的だった従来のプリント基板の概念が破壊され、捻ったり向きを変えたり曲げたり折り込んだりして 2D の世界から逃れることができます」。

BotFactory Squink回路基板 circuit board
Squink が ATtiny85 マイクロコントローラーを回路基板へ実装 [提供: BotFactory]

2D の世界から離れることで、エンジニアはアンテナなどのエレクトロニクスをプリント可能となる。そのキーは素材の中にある。Voxel8 は熱可塑物質や高導電性銀インクなどを同時にプリントできるため、電磁 & 3D 電気機械式アセンブリーなどのカスタマイズされた電子デバイスを実現する。

低温導電性インクは、大抵の導電性インクのようなオーブンでなく、室温で加工できる。このインクはコンポーネント間の内部ワイヤリングのプリントに使えるが、コンポーネントそのものは、少なくとも今のところは回路内に手で配置する必要がある。

「将来的には、より多くのコンポーネントをプリントしたいと考えています」と、オリバー氏。「現在は入手可能な電子部品を活用しています。だからコンポーネントを置く際にはプリンターを一時停止し、それからコンポーネントの導電性エレメント上にプリントします」。

導電性インクのテクノロジーは、ハーバード大学のエンジニアリング&応用科学の教授であるジェニファー A.ルイス氏のラボで生まれたもので、そのラボでは伸縮自在な基板に埋め込まれたセンサーなど、マルチ素材の 3D プリントの進歩がデモされている。ルイスは Voxel8 の共同設立者であり、以前ラボに在籍した PhD 学生のマイケル・ベル、トラビス・バスビー両氏も創立者に名を連ねている。

だがプリンターだけではエレクトロニクスは作れない。Voxel8 はオートデスクのパートナーとなり、3D プリントされたエレクトロニクスをデザインするためのソフトウェア、Project Wire を作り出した。このプログラムは、3D プリントのオープンソース アプリケーションプログラミング インターフェースである Autodesk Spark プラットフォーム上で動作する。

BotFactory Photochromia apparel
Photochromia apparel collection of UV-responsive digital prints. [提供: BotFactory]

Cartesian Co. の場合は、ブライナー氏と彼のチームが自社のデスクトップ回路基板プリンターでさらに限界を押し広げたいと考えている。同社は導電性インクを詰めたインクジェット カートリッジを使用。そのプリンターは銀でもプリントできる。

「この方法のアドバンテージは、とてつもなく早くできることに尽きます」と、ブライナー。「回路基板をコンピューター上でデザインするのは比較的簡単ですが、それを国内の業者に送るか、大抵は中国で作らせる必要があります。国内の制作業者の場合は 5 日から 10 日、中国で行うには約 2 週間が必要です」。

ブライナー氏によると、Cartesian 製プリンターは、50 mm 四方の基板を 1 時間以内にプリントできる。

しかし、このマシンが本当に素晴らしいのは紙や布に印刷できる能力だ。後者はより実験的ではあるが、実行可能だ。「ウェアラブルなエレクトロニクスについて語ることは、衣服や時計バンドに縫い込んだ回路基板について語ることです」と、ブライナー。「バンドや衣服など実際に身につけるものでなく、回路基板のことなんです。そして、それは実現可能です」。

BotFactory のオスピナ氏は、現在オブジェクトが熱可塑性樹脂 3D プリンターを使ってプリントされるのと同じ方法で、将来的には電気エンジニアやデザイナーに回路基板をプリント可能とできるだろうと述べている。これにより小規模なメーカーも電気コンポーネントをシステム内に組み込み、素早く創造できるようになるだろう。

3D デスクトッププリントによるエレクトロニクスとプリント基板の未来は、今まさに実現しており、オスピナ氏は「その市場は拡大する一方です」と語っている。

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