3D プリンター教育: 新たな方法で子供たちを引き込み、刺激する機会

by Michael Petch
- 2016年6月20日

3D プリントが、これまで見たこともない方法で教育を強化する最強のアプリだとしたら? 最近の調査やレポートを信頼するなら、3D プリンター教育が、学生たちが社会に出る準備を整える上でカギとなるかもしれない。

世界経済フォーラムが2016年1月に発表したレポート「The Future of Jobs [仕事の未来]」(PDF) によると、4 年以内に「ほとんどの職業で望まれる主要なスキルの 1/3 以上が、現在の仕事ではさほど重要と考えられていないスキルから構成されるようになる」状況となり、それに 3D プリントが部分的に加担することになる。そうなると教育システムは、世界的に教室で 3D プリントを優先させる機会とインセンティブを得るようになるだろう。

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[提供: Charlie Nordstrom]

実験的で実践的な学びのルーツは、米国における第二次産業革命まで遡る。1896 年、20 世紀の最も重要な思想家のひとりとされるジョン・デューイが、シカゴ大学内に初の実験学校を開いた。デューイの進歩主義は、従来の丸暗記式教授法を控え、思考と実践を支持するものだった。その当時、優れた発明は学校教育よりも観察力と演繹法を用いるチャールズ・グラフトン・ペイジやマイケル・ファラデー、ジョセフ・ヘンリーなどの個人によって生み出されていた。

デューイの功績を足がかりとして、1990 年代にはシーモア・パパートが構築主義と呼ばれる教育理論を考案した。これは文脈として、学生の学習意欲を理解しながら教えることを提唱するものだ。実験的学習というパパートの着想は、学校において 3D プリンターの使用を推進する取り組みである FabLab@School (成長する教育的デジタル製作ラボの世界ネットワーク) を促す原動力となっている。このプロジェクトはクラスメート同士が協力し、3D プリンターとレーザーカッターを使用して物を作成することを奨励するもので、実際の問題の解決に子供たちを引き込むことを目的としている。

イデオロギー的には FabLab@School に似た別イニシアチブ、Fab@Home で以前プロジェクト・リーダーを務めたジェフリー・リプトン氏は「算数を教えるのにエンジニアリングを導入すれば、どんな子供もやる気になります」と言う。「算数を、退屈な科目から人気科目にすることができるのです」。

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リプトン氏は 3D プリントが、抽象的な概念に具体的な形を与えるための中心的な役割を果たせると考えている。微分方程式やニュートンの微積分学に悪銭苦闘する子供は、電気を発生させるモデルを 3D プリントで作成し、その原理を実際に試すことで内容が理解できるかもしれない。リプトン氏は、これこそエンジニアリングが「算数と科学を教える最良の方法」である理由だと考えている。

これには、バージニア州の Laboratory School for Advanced Manufacturing Technologies (高度生産技術実験学校) の専門家たちも賛同している。この学校の提案する教育的枠組み (PDF) は、学生に概念をフィジカルな形態で実現させることが不可欠な動機を与え、同時に「計算能力、強調、問題解決」などのスキルを授けると指摘している。

3D プリントに特有の問題解決というテーマは、子を持つ親であり教育者でもあるデイヴィッド・ルイスもよく知るところだ。ルイスと彼の息子ライリーの物語は、3D プリンター教育の好例だ。中学 1 年生のライリーは、3D デザインとテクノロジーの大規模カンファレンスに参加し、3D プリントに関してあらゆることを学んだ。それ以来、ライリーは夢中になった。ルイスによれば、1年もたたないうちに「機器やライセンス購入のために小銭を集める」ようになり、ライリーはツールを揃え、スキルを身に付けて独自の 3D プリント・ラボを作った。

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[提供: Charlie Nordstrom]

息子の成功とは裏腹に、ルイスは、この機会がより幅広い層の学生たちに提供されていないことを残念に思っていた。そこでライリーの発案で、ルイスはカリフォルニア州サンノゼの Discovery Charter School にアプローチし、3D プリントや CAD ソフトウェア トレーニング、関連スキルのクラス開講を持ちかけた。学校はこれに同意し、ルイスのクラスは 2012 年以来、200 名を超える学生を輩出している。中には、大成功を収める Kickstarter プロジェクトを生み出した者もいる。ルイスはプロジェクトを他の学校や Stanford Splash のイベント、Maker Faire にも持って行った。

「大抵の場合、そこから効果的なコラボレーションが得られます。3~4 名の子供たちが一緒になって座り、問題を解決するのです」と、ルイスは 3D プリントがやる気を出させる効果についてこう話す。学びを活動的かつ社会的行為であると考えるパパートの見解に同調し、ルイスはテクノロジーが「ほとんどの学校で見られる、偽りや見せかけのコラボレーション」とは異なる体験をもたらすと話す。その代わりに、子供たちは「本気で夢中になる」のだとルイスは言う。「驚きますよ」。

大学進学適性テストの名祖 ACT が実施した最近の STEM 研究 によると、こうしたサクセスストーリーは一般的ではない。このレポートの所見で重要な点は、現在のシステムにおいて、高校生は STEM 専攻、ひいてはキャリアで「成功するための準備が十分出来ていない」という指摘だ。事実、早期教育で児童生徒が必要とする支援の提供は、学区や行政による組織的な取り組みより、ルイスのようなやる気のある個人の行動に依存しているように思える。

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[提供: Charlie Nordstrom]

3D プリンターを各教室に設置するという財政的支援は、準備不足の問題を一夜にして解決することにはならない。だが適切な方法で組み込まれることで、3D プリンターは、歴史的な足場作りに必須のツールとなる。スミソニアン博物館の収蔵品にあるオブジェクトのオンライン モデルや他の所産 (特許明細書や発明者のメモ) を使用し、主な発明の数々とそれらが基にしている科学原理を再現し、再解釈する。つまり工学や数学、科学を現実的な状況で使用するのだ。

3D プリントのプログラムをうまく組み込むには、プログラムがシームレスに進むよう、部門を超えた協調が必要だ。リプトン氏は、「紋切り型のラボや、手取り足取りのラボ」にはくぎを刺す。こういったラボは、採点は簡単だが実験の自由度に欠け、エンジニアリングのポテンシャルを解き放し損なうことになりかねない。だが上手くいけば、生徒たちは抽象的な科学的、数学的概念を応用し、精緻化することさえできるのだと理解する。そして、こういった歩みは、今後の授業課題や大学入試、さらには職業的成功に持続的なプラスの効果を持つ。

教育の目的を雇用や自己充足感への道としてとらえることには未だ議論があるが、教育において新興テクノロジーを制度化することは可能なのか、また望ましいことなのかという問いは、依然として残る。少なくとも、学校における 3D プリントは、子供たちが生まれ持つ好奇心を促進し、生涯にわたる知識欲を育てる機会を提示している。マーク・トウェインがかつて語ったように「学校に教育の邪魔をさせてはならない」のだ。

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