金属系新素材が生み出すアディティブ マニュファクリング技術の新たな波

by Duann Scott
- 2017年8月15日
[提供: XJet]

アディティブ マニュファクチャリング (付加造形) には 20 年に渡って同じ基礎技術が繰り返し使われてきたが、新たなイノベーションの波が生まれつつある。より低コストで安全なプロセスが従来の方法に取って代わりつつあり、解像度や表面品質、デザインの自由性が大きく異なる材料特性が提供される。

まずは、これまでの歴史を簡単に振り返ってみよう。1995 年、フラウンホーファー協会でSLM (Selective Laser Melting: 金属を溶かす熱源にレーザー光を採用したアディティブ マニュファクチャリング) が開発されて以来、金属アディティブ マニュファクチャリング技術は、主に 3 つのプロセスによるものとなっている。最も一般的な手法は、金属粉末を敷き詰めたパウダー ベッドにレーザーまたは電子ビームを照射して任意の部分を溶融させ、積層させることで合金製の金属体を作成する。2 つ目はレンズ/指向性エネルギーを用いたアプローチで、金属粉末をレーザーの照射方向へと吹き付ける。3 つ目はパウダー ベッドを用いたアプローチで、金属粉末を固めたものを焼結することで金属に似た特性を得る。

Desktop Metal のプリンターは焼結方式を使用 [提供: Desktop Metal]

こうしたプロセスは、カスタムの、かつ複雑なパーツの作成を可能にしてきた点では斬新だったが、完全なものではなかった。金属粉末の使用は、危険をはらんだ材料を扱うことを意味する。また熱変形の問題により、プリント成果物の多くが夢の島へと追いやられる。

こういった状況のなか、XJetDesktop MetalNanoCore TechnologiesMarkforged3DEODigital AlloysVader Systems や、極秘で事業を進めているスタートアップ数社による、金属 3D プリントの新たな波が登場している。これらの企業は粉末ベースのアプローチを採用せず、金属粉末をキャリア液に包み込んでカプセル化したり、フィラメント (繊維状のもの) に組み込んだりした上で、まずは下地部分としての「素地」をプリントし、その後溶鉱炉で焼結して成果物を得る。

XJet の設立者たちは、初めてのポリマー マルチマテリアル 3D プリンター (Stratasys に合併) と大判印刷用インクジェット プリンター (HP が買収) を生んだ企業、Objet を支えたチームのメンバーだった。「ナノ粒子噴射」テクノロジーを搭載した XJet は、基本的には米国軍用規格のインクジェット プリンターに数千個のノズルを取り付けたものだ。このノズルが、キャリア液に含まれる金属 (またはセラミック) のナノ粒子を堆積させ、キャリア液はサポート材や先行レイヤーの熱で蒸発する。ナノ粒子が、極めて細かな解像度と二次サポート材を実現するため、邪魔なサポート構造が不要となる。また、パウダー ベッド プロセスのプリント段階と冷却段階で生じる熱変形と残留応力の問題もなくなる。残されたのは、複雑な形状を実現できるマルチマテリアル金属 3D プリントの可能性だ。

Desktop Metal、Markforged、Digital Alloys、Vader Systems は、Stratasys により開発された FDM (Fused Deposition Modeling: 熱熔解積層法) に似たアプローチを採っている。これは、3D プリンターの造形テーブル上にフィラメントを熔解した材料を押し出して積層を行う方式だ。FDM アプローチの大きな利点のひとつに、材料原料の処理がある。金属は結合剤に含まれるが、その結合材には、フィラメントへのポリマー コーティング、ペースト状スラリー (懸濁液)、金属棒、溶接用ワイヤーなどが使用できる。パウダー プロセスを使用しないということは、溶接業向けのワイヤーや MIM (Metal Injection Molding: 金属粉末射出成型法) で使用される材料など、選択の幅が、大口で入手可能な、より幅広い材料へ広がることも意味する。

Markforged の Metal X 3D プリンターは、ADAM (Atomic Diffusion Additive Manufacturing: 原子拡散積層造形法) を使用しており、従来の MIM パウダーをポリマー内にカプセル化して、二次焼結プロセスで融解する。このプロセスにより、密度 99.7% のパーツを作成できる。Metal X はまた、プリント ヘッドに大型のセンサーを搭載しており、Markforged のクラウドベースのソフトウェア Eiger にデータを供給する。これにより、ビルド プロセス中のパーツの寸法精度の監視が可能となる。

Desktop Metal Studio System
Desktop Metal の Studio System [提供: Desktop Metal]

マシンからリアルタイム フィードバックが提供されると、失敗の可能性があるパーツの形状認識に、とてつもないパワーを発揮し得る。事前に問題を予測し、材料と時間の無駄の削減につながるからだ。また、このデータをジェネレーティブ デザイン ツールに供給することで、ソフトウェアは、特に失敗が生じたプロセスに対して、今後は失敗が起こらないパーツのデザインを生成するようにできる。

Desktop Metal も、サービスとしてのハードウェア (HaaS: Hardware as a Service) を提供している。これは、顧客が月わずか数千ドルでマシンを確保できることを意味しており、これは大抵のパウダーベッド マシンのフルビルドのコストより低い。コスト障壁が下がることにより、金属アディティブ マニュファクチャリングは多くの業界で、経済的に実行可能なものとなる。また、現行の金属粉末ベースのプロセスに因らない使用事例となっていくだろう。

Vader Systems Mark 1 はフィラメントを融解させた材料を 3D プリンターの造形テーブル上に押し出す [提供: Vader Systems]

金属を融解するレーザーは高価なものになっている。レーザーベースのマシンの平均価格は約 70 万円からで、数億円になることさえある。しかも、そこには必須である後処理用の装置は含まれていない。一方、新しい金属 3D プリンターの価格は後処理装置を含めても 1,000 万円程度で、これは金属系新素材に関連する新興企業にとって、もうひとつの利点となる。

パウダーベースのプロセスは、新方式のアディティブ マニュファクチャリング技術ではまだ不可能な、レーザーによる高い解像度、設計された材料特性、複雑なデザインなどの用途において、未だにそれなりの存在を確保している。どのアプローチが望ましいかは、材料特性、解像度、デザインの自由性、スピード、価格に応じた、その用途に対する適切なプロセス次第だ。だが、こうした新たなプロセスがデザイナーやエンジニアへ、より多くの選択肢を提供することは確かだ。

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