先進製造技術で実現する最新の低コストな偵察ドローン

by Gary McCormick
- 2018年8月7日
先端 製造 技術 RQ-11 ドローン
アメリカ海兵隊の RQ-11 Raven [提供: US Marine Corps]

新しくハイテクな軍装備は高価だ。戦後の軍産複合体の初期から「200 ドルのハンマー」など、さまざまな真偽の怪しい話が存在し続けてきた。現在のハイテク軍事ツールのコストは、迷宮のように入り組んだ調達規則と厳格な環境要求事項、先進技術によって高騰している。だが先進的な製造技術により、こうした潮流が覆される可能性がある。

ジョージア工科大学で航空宇宙工学の学位を修めた海兵隊員レット・マクニール伍長は、2016 年、アメリカ海兵隊のロジスティックス イノベーション チャレンジに参加。このプログラムは、3D プリントやウェアラブル テクノロジーの新たなソリューションを生み出すため、アメリカ海兵隊の経験と創意工夫を活用することを目的としている。マクニール伍長をはじめ、このプログラムには 300 名以上の海兵隊員が参加。彼のアイデアは、有能だが低コストで簡単に運搬が行え、現場で修理可能な「Scout (スカウト)」という名の偵察ドローン (無人航空機) だった。

マクニール伍長は、海兵隊の総額 2,500 万ドルの RQ-11 Raven ドローン システムを使用した経験から、そのレーザー照準や赤外線映像、時速 80 km の速度、9.7 km という飛行範囲という機能が、金銭的な対価を超えるコストで実現していることを知っていた。

先進 製造 技術 レット・マクニール
アメリカ海兵隊員レット・マクニール伍長は、アメリカ海兵隊 Logistics Innovation Challenge のために 3D プリント製で 615 ドルの固定翼ドローン Scout をデザインした [提供: US Marine Corps]

この Raven は、マクニール伍長によると、通常は「2 つか 3 つの機能」のためにのみ使用される。彼は Scout で「1 システム当たりのコストを 17 万 5 千ドルから 25 万ドルに吊り上げている、その他の 75 から 80 もの機能を取り除こうと考えました」と説明する。「実際に使われるであろう機能に限定したのです」。

Raven のフル システムには、1 セットにつきコントローラー 1 台と翼長 1.37 m のドローン 3 機が含まれ、マクニール伍長の Combined Anti-Armor Team (複合対機甲小隊) の輸送において、ただでさえ余裕のない貴重なスペースを奪っていた。トラックでは、水や燃料、弾薬、フィールド パックなど、必需品の輸送が最も重要だ。「私たちは、携帯性という機能も追加しました」と、マクニール伍長。「バックパックに入れて運搬するのです。どの海兵隊員も、標準仕様のアサルト パックを使っており、このバッグに収まるよう Scout を設計しました」。

Nomad をベースとする Scout は 3D プリント製の固定翼ドローンで、各ユニットのコストは 615 ドル。搭載されている機能は、それほど多くない。飛行距離は 3.2 km で、赤外線映像やレーザー照準機能は搭載されておらず、飛行時間は 12 – 20 分だが、何かと高価な軍備の世界において、ユニット単位のコストが 3 万ドルである Raven と比較すると Scout は格安だと言える。

この Scout は、今後登場するドローンの先駆者となるだろうか? 米国の軍事支出は 2015 年時点で国内総生産 (GDP) の 3.5% を占め、その金額は 5,710 億ドル (約 62.6 兆円) に上る。これは総額では世界最高、対 GDP 比ではサウジアラビア、イスラエル、ロシアに続く世界第 4 位だ。現在の技術進歩のペースと米軍が直面する数々の課題を考えると、デジタル製造は軍需産業にどう役立てられるだろうか?

先進 製造 技術 ドローン パーツ
Scout ドローンにアディティブ マニュファクチャリングを使用したことで、軽量化、性能の向上、独自のパーツの利用、ラピッド プロトタイピングの実現、現場での修理の可能性が実現した。

この問いそのものが、ほぼその答えを提供する。技術進歩の速度が複雑な軍事物資調達システムに挑戦を突きつけているのと同様、デジタル設計・製造 (DDM) の進歩が、新たなデザインの急速な発展と既存デザインの進化を可能にしている。

デジタル製造には、迅速な展開、設備投資額の低減、設計 (と再設計) 自由度、コンポーネント統合の簡便性、短期間製造による経済性、従来の製造手法の制約を超えた自由なイノベーションなど、明白な利点が存在する。

また、軍事物資調達の制約も縮小する。幾層にもわたる管理・承認の手続きが、そのプロセスを民間産業より大幅に遅れさせてしまうこともある。だが今後の方向転換やプロセスの変化により、DDM はデザインから作戦での使用に至るまでの。プロセス全体の有効性を大いに高められるかもしれない。最新の DDM を活用する設計エンジニアは、10 年前と比較しても、ずっと迅速にデザインを開発、検証、発展できるようになっている。デジタル モデルへの変更は、迅速にプロトタイピングと検証が行われ、更新されたデザインを製造過程へと移行して、あっという間に供給可能だ。

デロイト トウシュ トーマツと連邦政府のサプライチェーン業務でマネージメントを務めるイアン・ウィング氏は、アディティブ マニュファクチャリング (AM) の利点を次のように話している。「アディティブ マニュファクチャリングの価値を推進するものは、主にサプライチェーンの進化と製品の進化だと考えています。製品の観点から言えば、AM はそれ以外の手法では不可能な、もしくは実現困難なパーツの製造を可能にします。それが多くのケースで軽量化と性能向上につながっています」。

先進 製造 技術 ドローン 組み立て
組み立て式の Scout ドローンは、海兵隊員が使用する標準仕様のアサルト パックに収まるようデザインされている。

エンドユーザー、この場合には兵士や海軍軍人、海兵隊員は、ロジスティクスにおける二酸化炭素排出量を低コストかつ短時間で大幅に削減しつつ、その能力を維持・修理、さらには拡大できるようになった。エンドユーザーや整備者にデザインをコネクトするデジタル スレッドは、製品の経路全体で、より高い機能を提供する。

「サプライチェーン側においては、AM とデジタル スレッドの実装により、軍は一連のサプライチェーン、特に既存の武器体系に対する予備部品のサプライチェーンをデジタル化できます」と、ウィング氏。「大量の交換部品の購入と倉庫保管、海や大陸を超える輸送の代わりに、必要となる地点の近くで、需要に沿って製造するというシナリオが実現可能になります」。

Scout はその好例だ。こうした小型で、手投げ (ハンドローンチ) により発進するタイプのドローンの回収方法は、ディープストール着陸 (制御された垂直落下) とスキッド リカバリー (横滑り) の 2 種類がある。どちらにも、損傷のリスクが伴う。だが、Scout では進化により、交換パーツを戦地で 3D プリントする機能が追加された。これも、通常の軍のシステムからサプライチェーンが進化していることを示しており、コストのかさむ修理や長期間のダウンタイムを排除する。

アメリカ海兵隊第一整備大隊隊長のグレゴリー・ペース中佐は、昨年 Marine Corps Times 紙に「[Scout が] 現行のサプライチェーンに取って代わるとは思わないが、既存の機能を増強する優れた機会であることは理解できる」と語っている。

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Scout は、 RQ-11 Raven ドローンの先進機能の一部と引き換えにコストの節約や輸送スペースの圧縮を実現している。

AM はエキサイティングな小型ドローンの新たな応用に加えて、軍の備蓄品に膨大な価値を付加する。ウィング氏は AM について「最も説得力のある使用例のひとつが、比較的古い装備用の予備部品です」と話している。「現在、軍では本来設計された耐用年数より長い期間にわたって装備が使われていますが、その結果、予備部品の備蓄が減少傾向にあります。また、一部の部品は交換を前提にデザインされておらず、単純な部品にとてつもなく高額のコストと長いリードタイムが必要なもあります」。

「幸いなことに、それに取って代わるシナリオが出現しつつあります」と、ウィング氏は続ける。「完成部品を購入するのではなく、軍が技術データと製造権を入手し、自らが、あるいは第三者を通じて AM で部品を製造するのです。これをデジタル スレッドと組み合わせ、グローバルなアディティブ マニュファクチャリングのネットワークを通じて、必要に応じて予備部品を供給できるようになります」。

現代の軍は外部からは、膨大な年間支出を必要とする巨大組織でありながら、民間産業の技術に後れを取っていると認識されているかもしれない。だが、マクニール伍長のドローン Scout や類似するプロジェクトの数々は、軍がそうしたモデルから前進し、最新のテクノロジーを活用してツールの有効性を向上させていることを示している。

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