非伝統的な農法や農業工学という言葉から何を想像するだろう。Bluetooth 対応の苗床が温室のように配置された様子? それとも葉野菜やハーブ、その他の野菜が何列にも並べられた大量の運送用コンテナだろうか。

実際のところ、今日の農業は数世代前までとは大きく異なっている。だが大抵の場合は農業系の企業グループが複数の独立系農場を買収し、大量生産を得意とする巨大な工業型農業を行っている。この形態により現代の食糧供給という怪物が養われているのだが、現在の生産ペースでは、こうした巨大農場が今後の人口増加に追いつくことはできない。そしてそれが、自らの選択が環境へ及ぼす影響を心配する消費者にアピールすることもない。

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[提供: Livin Farms]
「自給自足」の動きの大半は、こうした消費者の需要で支えられている。食への心配を和らげる究極の回答は、自らが農家になること。だが従来の農法は、現代の都市生活にはマッチしない。
こうした代替農法の欠如は、Autodesk Fusion 360 など入手しやすいデザイン ツールにより後押しされ、エンジニアリングのスタートアップ企業へ、よりスマートで効率的な農業モデルをデザインしようというインスピレーションを与えている。今回は農業工学を活用して食糧供給の仕組みを変革する代替農法の 3 例を紹介しよう。

agrilution の plantCube
農家が育てた美しい野菜の生き生きとした精彩が、食料品店に置かれている野菜のほとんどで失われている。これは農場から店先まで、時には海を越えて何千 kmも旅することもある長い輸送時間に耐えられるよう、野菜が早いうちに収穫されるためだ。自宅に持ち帰ってからわずか 48 時間で、しなびたり腐ったりしてしまうこともある。

この現実が、agrilution を plantCube 開発に向かわせた。agrilution の共同設立者兼 CEO のマキシミリアン・レッスル氏は「私たちは、単なる家庭菜園用DIYデバイスを製造するスタートアップではありません」と話す。「agrilution のコンセプトが目標とするの は、それよりずっと大きなものです。品質に優れ、フレッシュかつ健康で美味しい野菜を中核とした、家庭菜園のエコシステムを生み出そうとしています」。

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[提供: agrilution]
agrilution が DIY 栽培の成功を可能にしている重要な手法のひとつが、最新のテクノロジーを使い、栽培をできるだけシームレスで苦痛を伴わないものにするという方法だ。「agrilution のエコシステムは、完全自動化の家庭菜園デバイス plantCube と、plantCube 内で成長する野菜の遠隔監視と制御を行い、他のユーザーとつながって、新しい苗を購入できるアプリから構成されています」と、レッスル氏。

この plantCube のサイズは、おおよそ食洗機と同じ。温度制御機能により、あらゆる地域の気候条件を再現できるため、ジョージア州の沿岸部やロッキー山脈の高山地帯に居ながら、希望とあれば日本や中国の野菜を育てることができる。だが、plantCube のようなテクノロジーの最大のパワーは、従来の農法によって既に貴重なものとなっている資源への影響の少なさにある。

「垂直農業技術による持続可能性の優位性は膨大です」と、レッスル氏。「農薬は一切使用していません。従来の農法での使用量に対して水はわずか 2%、肥料は 40%、スペースは 50% しか必要なく、農地は不要です。この製品がもたらす最大の影響は、食と栽培で人々をつなぐことです。自分たちが口にする野菜を栽培することは、何をどう食べ、購入するのかについての意識の高まりにつながります」。

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イタリアで開催されたミラノ国際博覧会 (Expo Milano 2015) でアメリカ館の外装となったBright AgrotechのZipGrowタワー [提供: Bright Agrotech]
Bright AgrotechのZipFarms
垂直農業の分野において、まさに天まで伸びる勢いを見せているのが Bright Agrotech だ。Bright Agrotech の ZipGrow タワーは垂直農法を最大現に活用しており、ビルの外壁やビル内の空き区画にタワーを並べることで、同サイズの土地で従来の農法による収穫高を上回る生産量を得ることができる。

ZipFarms は水耕栽培を利用する。「水耕栽培はさまざまな点で優れています」と、Bright Agrotech CEO のネイト・ストーリー氏は語る。「まず非常に軽量で、土を扱う際の数々の複雑さを排除します。化石燃料と機械の使用を最低限に押さえた方法での生産に集中することができます。また養液は処方化され、全てが高度に標準化されているので、中に何が入っているのか、野菜の生長にどのような影響を与えるのか、収穫する野菜の栄養価がどのようなものになるのかを正確に知ることができます」。

培地を必要としないため、想像もできないような場所で高密度の栽培が行え、栽培者にとっても、場所を問わず栽培が可能となる。「20~25 万平米の農業用地を探して購入や貸借を行うより、ずっと取り組みやすいと思います」と、ストーリー氏。「今や全人口の 95 パーセント以上が都市部に居住し、農村部に住む人はわずか 2 パーセントです。近郊で栽培するとなると、土地が非常に高い開発地域で栽培することになります。つまり、非常に高い密集度で栽培する方法を見つける必要があるのです。農地をレイヤーのように重ねることはできませんが、水耕栽培を利用することで、超高密度の栽培が可能です」。

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[提供: Bright Agrotech]
家庭菜園からレストラン規模のプロジェクトまで、ここ 3 年でBright Agrotech 製品への興味とその導入は劇的に増加している。バジルやミント、ケール、クレソン、その他の葉野菜の栽培を始めることで、カスタマーは正に大変革の種を蒔いているのだ。

「良質なハーブや葉野菜は、輸送には向きません」と、ストーリー氏。「つまり、市場により近い場所で育てることができれば、より効率的に栽培し、より高品質の製品を消費者へ提供できるのです」。

Livin FarmsのHive
家庭栽培、垂直農業、海藻畑に道を切り開いたエコフレンドリーな食物への動きは、虫栽培デバイスの開発にまで及んでいる。そう、食用虫だ。Livin Farms はイギリスと香港を拠点とする企業で、食用虫を飼育する Hive という製品を開発している。

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[提供: Livin Farms]
Livin Farms 設立者兼 CEO のカタリーナ・ウンガー氏は「Hive で飼育できるミールワームなどの食用虫は、持続的な飼育が可能です。飼育に必要な水もエネルギーもわずかで、必要な餌も人間の食事に比べればごく少量です」と話す。

ウンガー氏は、これが未知のテリトリーであることは承知している。「Hive は、何をどう食べるのかについて人々に再考を促すようになるでしょう」と、ウンガー氏。「これは、食用虫が西洋の食生活の一部になることに伴う文化的変革であり、パラダイム シフトです。健康的で、持続可能な転換でもあります。人々に意識的選択をさせるようなムーブメントの最前線にいられるのはうれしいことです」。

こうした農業工学の 3 例は、グリーン ムーブメントにおける氷山の一角に過ぎない。そしてそこの氷山はますます巨大化している。従来の農法は、今後数世代のうちに時代遅れとなり、そこに現代化された食糧生産に対する見事な解決策が登場しているだろう。結局のところ、総体的な理念は、単に食糧を求めることから、食糧のあらゆる側面に質問を投げ掛けることへと移行しつつある。どこで採れたのか? 誰が育てたのか? 環境への影響はどうなのか? こうした質問への答えは、栽培者に実際に聞くしかない。もしくは、自分が栽培者となるしかないのだ。

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