AI や自動化が、ものづくりの未来に与える影響とは?

by Yuji Fujimura
- 2018年11月1日
AI 自動化

ものづくりの未来に、AI や自動化はどのような影響を与えるのか? このテーマが日常の話題に上ることも多くなってきている。先日開催された「Autodesk University Japan 2018」の中で、東京工業大学 環境・社会理工学院の齊藤滋規教授と Fusion 360 トラックに登壇いただいた講演者をパネル ディスカッションにお招きし、モノづくりとテクノロジーの関係をカジュアルに、かつ深く掘り下げてみた。

そもそも AI とは何だろう? 齊藤滋規教授の回答は、意外にも「ドラえもん」だった。「でも現在、実際に AI が活用されている分野は、食品加工で画像認識を用いて不良品を弾く分別などで、ドラえもんとは距離があります。自動化についても同様で、例えば縫製などコストを抑えるため海外の職人を使ってやっていたことを、ロボットの会社と組んで完全に無人化された工場内で行おうとすると、ものを掴んだりするのは AI だけでは解決できませんよね」

西村拓紀デザイン株式会社 代表取締役の西村ひろあき氏は、AI のプログラム的な要素に注目しているという。「ファミコン世代なので、ドラクエのコマンドを勝手に考えてガンガンいこうぜ、みたいな感じだと思っています。活用事例としては、プロダクトの用途や目的を設定すると AI がデザインに起こすような。自動化に関しては、やはり機械と組み合わさって行きますよね。物流なども人間が行えないレベルの自動化が進むと思います。例えば Amazon の倉庫も、今は人が通れるようにできていますが、そのうち人には通れない通路になって、全て自動化されるのではないでしょうか」。

AI はまだまだ自分にとって身近なものではない、と言うのは株式会社キャステムの新規事業本部 IRON FACTORY 課長、石井裕二氏だ。「うちは鋳物を作る会社で、まだまだアナログの世界で人が仕事をしていますし、職人の勘所や感性、感覚を働かせての作業は AI にはできないんじゃないの?という目で見ているのが正直なところです」と語る一方で、AI が人の仕事を奪うのではないかという懸念も少なからずあると言う。

「僕が入社した 25 年前、金型の製作は完全手作業で、20 人くらいの職人がずらっと並んで作業をしていました。CAD/CAM が出てきて、夜間に自動運転をするのが当たり前になってからは、ずいぶん職人の数が減りました。僕は早々に CAD/CAM を使えるようになったので良かったんですが、やはりそれに対応できずに職を失っていった方もいらっしゃいました」と石井氏。

自動改札ができたことで、改札で切符に鋏を入れる駅員が不要になったことは、「自動化」で人の仕事が無くなった、最もわかりやすい例だろう。しかし、それはあくまで「効率化」であって、脅威ではない。だが AI の話になると、途端に「脅威」として語られるようになる。本当に人にとって脅威となるのだろうか?

「自動化は既に我々の生活にも入ってきていますし、それは面倒な作業の時間を自動化で圧縮し、空いた時間を他のもっと有意義なことに使うということです。それは、これまでのいろいろな技術の発達の積み重ねの上にあります」と、齊藤教授。「でも、AI は知性がある存在だと思われている。だから知性を持った人にしかできない仕事が、全て取って代わられるという怖れが潜在的にあるので、自動改札などとは全く違う次元で、エモーショナルなところを刺激されるんだと思います。AIという、わけのわからないものに対する恐怖というか」。

デザインスタジオ Triple Bottom Line ファウンダー/デザインディレクターの柳澤郷司氏は、「例えばコールセンターに寄せられたトラブル事例を、AI による仕分けで解決方法を導き出せるようになると、オペレーターは不要になります。現実に 3D プリンターを使ったラピッドプロトタイピングの普及によりプロトタイプを内製できるようになったことで、試作の業界では仕事が減ってきているという声も聞きます。そういう意味では、AI や自動化に仕事を奪われるというのはあるかも知れない」と述べる。

だが、氏はAI に対して前向きだ。「仕事を奪われると言っても、AI がやるような仕事がないと生きられないの?とも思います。AI が仕事をしている間、人は違うことに時間を使えばいい。AIや自動化で捻出した時間でいいものを生み出すことができると考えれば、AIは怖くないと思います」。

石井氏も同様に、うまく利用して行けば良いのではないかという考えを述べた。「僕らは職人というところから始まっているので、職人は根性とか努力している姿がカッコいい、と思っていたのですが、AI の前に自動化が入ってきて、いかに涼しく仕事をするかという感じに自然になっていった世代なんですよ。だから、コンピューターにできるところは AI にやらせて、仕事に活かす感性みたいなものを高めて行こうとしていますね」。

では、今後は AI が「感性」の部分まで人に代わって担うこともできるようになるのだろうか? 「感性は、美的感覚とかと同じだと思うんですよ」と、西村氏。「美の基準は、皆がひとりひとり違うものですよね。でも、カッコいいとかカワイイとかではなくて、例えば身体的に健康であるとかいうのを外観から読み取って、いいもの、いいカタチというのを選別することは AI でもできますよね。だから、理想とされるものをたくさん示してやれば、合理的な美的センサーというものをどんどん高めてやることはできるはずです」。

「僕のデザインでも、ロジックでいろいろ積み重ねていくわけですが、一度そこから離れて自分の美的感覚・感性だけで見たときに、なんか汚いなとか、カタチが変だなと思うことがあります」と、西村氏は続ける。「それでもう一度調べ直してみると、材料を無駄に使っていたりするなど、どこか非合理な部分が見つかったりするんです。だから “感性”と言っても、それを理論や知識の積み重ねや総合知のように捉えていくとしたら、AIが“感性”と言われている部分まで入り込んで来てもおかしくないと思います」。

同じくデザイン分野に関して、柳澤氏は「自分の仕事を奪ってもらわなければ困る、とも思います」と述べている。「西村さんの言われた積み重ねはまさにその通りで、例えばデザインを評する時に使われる“座りがいい”と言う表現がありますが、これは個人の主観というより、社会的、地域的な要素を多く含んでいます。具体例を挙げると、洋の東西で好まれる比率は、ヨーロッパをはじめとする西洋では皆さんがよく耳にされる黄金律 (1:1.618) なのに対し、アジアをはじめとする東洋では 1:1.41、白銀比と呼ばれる数字に落ち着くことが多いんです。建築物などでも東洋風、西洋風と言われているものを精査すると、不思議とこの数字が頻出します」。

「認知行動学者のドナルド・ノーマンが述べたのは、僕たちが社会的に生きている中で、モノを見て“良いデザインだ”と思うのは、実はデザインを見ているのではなく社会性を見ている、ということです」と、柳澤氏は続ける。「これがいくらのモノでどのくらい収入がある人が買っていて、どこで作られどこで売られているか、という社会性の積み重ねの上で、集合知としてあるもの、そういう概念をもし AI が手に入れたらすごいことだと思う」。

西村氏は最後に、AI や自動化の背後にいる人たちと、ものづくりを行う人たちの関係について、次のように語ってくれた。「プログラマーやエンジニアとものづくりの現場にいる人、そして AI がチームを組んで、その結果、人がハッピーになればいいですよね」。

製造業における AI の利用は、着実に進んでいる。パネリストたちのコメントからも分かるように、今後は「自動化による効率化」だけでなく、「より人間らしいこと」も求められているように感じる。AI に関する議論全般で、人間が現在行なっている仕事の代替となってしまうことへの恐怖より、その可能性をさらに広げてくれるツールとしての期待値が大きかったことが印象的だ。業界全てを巻き込む可能性があるこの潮流を、今後も注視していく必要があるだろう。

構成: 吉田メグミ

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