大気汚染モニタリングに Plume Labs が鳩を活用

by Kimberly Holland
- 2016年10月6日
大気汚染モニタリング鳩
[提供: DigitasLBi]

ロンドンの特別区や街路を飛び回る鳩の群れは、目新しい眺めではない、だがロンドン市民が、鳩の存在を正しく尊重しているとは言い難い。

air-pollution monitoring pigeon fancier
[提供: Plume Labs]

これまでロンドン市民は「羽根のあるネズミ」である鳩を、その糞害と地域住民の健康リスクを理由に、果敢にも追放しようとしてきた。前市長は、より餌の多い場所に鳩を移動させようと、トラファルガー広場など観光客に人気のある場所で鳩への餌やりを公に禁止したほどだ。だが、こうした取り組みは実を結んではおらず、鳩は相変わらず居座り続けている。

だが、その鳩に贖罪の機会が訪れようとしている。ロンドン市民にとって最大の健康リスクのひとつである大気汚染の把握とその克服に、鳩が一役買っているのだ。汚染され、健康に悪い空気を肺に取り込んだことが原因となり、毎年約 9,500 人ものロンドン市民が、天寿を全うすることなく亡くなっている。イギリス全体では、さらに数千人が同じ理由で命を失っている。

フランスのテクノロジー企業 Plume Labs は、この 3 月にロンドンで大気汚染監視鳩のプロジェクトを 10 羽体制でスタートさせた。Plume Labs 創立者兼最高責任者であり、Autodesk Entrepreneur Impact Program のメンバーでもあるロマン・ラコンブ氏は、ロンドンを選んだ理由を「帰巣機能のある鳩を首都の上空に飛ばし、呼吸する大気の汚染についてツイートさせてみてはどうでしょう?と真面目な顔で提案できるのはロンドンだけだからです」と話す。「Pigeon Air Patrol」と名付けられたこのプロジェクトは、3 日間にわたって実施された。

鳩が共同で行う仕事は、大気の汚染レベルをリアルタイムに測定する空気センサーのバックパックを装着した状態で、ロンドンの特別区の上空を飛び回ること。ロンドン市民が @PigeonAir にツイートすると、郵便番号や特別区に応じた汚染レベル報告を受けることが可能だ。Twitter リクエストを送った時点の、そのエリアにおける二酸化窒素、オゾン、揮発性化合物のレベルが送られてくる。

air-pollution monitoring pigeon backpacks Plume Labs
センサーを搭載した小さなバックパック [提供: Plume Labs]

Plume Labs は鳩愛好家や鳥類専門の獣医と密接に連携して、大気センサーを装着しても鳩には負担がかからず、快適な飛行が確保されるようにした。Autodesk Fusion 360 によりバックパックをデザインするチームを率いたラコンブ氏は、鳩にとって快適なレベルにするには、センサーの重量を文字通り「羽根のように軽く」なるまで削り落とす必要があったと言う。

この大気汚染への戦いに協力する飛行隊は、一般的な野生鳩ではない。Plume Labs が使ったのは、時速 100 ~ 130 km を出せる レース鳩だ。一般的な野生の鳩の寿命が 4 年程度なのに対して、愛好家に飼われるレース鳩は最長 20 年も生きる。

効果が人間味あふれた (そして願わくばプロジェクトへの関心を集める) ものとなるよう、この鳩軍団のためにチームはココ、ノーバート、ジュリアスというキャラクターまで作成した。

air-pollution monitoring Coco pigeon Plume Labs
[提供: DigitasLBi]

鳩を利用して大気汚染の記録と監視を行うというアイデアは、ピエール・デュケノワ氏によるものだ。このアイデアで彼は 2015 年のロンドン デザイン フェスティバル アワードを受賞している。デュケノワ氏は、ラコンブ氏と Plume Labs にアプローチして、Pigeon Air Patrol の設立と立ち上げに協力した。「何万人ものロンドン市民がこの取り組みに参加し、Pigeon Patrol アカウントにツイートして、各エリアでの空気の質を追跡しました」と、ラコンブ氏。リアルタイムの測定値は、鳩による大気汚染測定の結果を知ろうとツイートした 2 万 5 千 を超えるロンドン市民の興味をそそるものだったが、本当の目的は大気汚染そのものへの関心を高めることにあった。

「エンジニアであり、教育を受けたデータ サイエンティストだが、本業は環境問題専門家」であると自称するラコンブ氏は、フランスで応用数学を、またマサチューセッツ工科大学 (MIT) で炭素市場と技術政策を学んでいる。MIT の後はフランスに戻り、スタートアップ企業がより簡単に公衆データを利用できるようにする公共政策の具体化に、首相と共に取り組んだ。

air-pollution monitoring Plume Labs air report app
[提供: Plume Labs]

「政府で働き始めて数年が経つと、政府をより透明なものにするための取り組みと、取り組みで集積されたデータの相対的な少なさとの間のミスマッチにフラストレーションを感じるようになりました」と、ラコンブ氏。「パリ マラソンに向けたトレーニングでパリ市内を走る際に、大気の状態を明確に把握できない理由はどこにあるのか、そして何よりも、どうすれば大気汚染をなくせるのだろうと考えたのです」。

自分を取り巻く環境を、簡単に理解できるような透明性と手段は存在しなかった。それが、ラコンブ氏がフランス政府の職を辞して Plume Labs を立ち上げるという、より有意義な方法で地球温暖化との戦いに参加するきっかけとなった。

「ハードウェア デバイスとコンテクスト アウェアネスを用いた (行動や状況を理解する) アプリによって、晒されている汚染を監視できます。都市生活者へ、汚染を避ける手段を学ぶ力を提供することで、大気汚染に影響されない世界を目指しています」と、ラコンブ氏は話す。Plume Labs は、より多くのデータを収集することで、国際社会が気候変動との闘いに対する重要な決断を行うための、より広い見識が得られるようになると考えている。

Pigeon Air Patrol は、Plume Labs が手掛ける、大気汚染に関する啓蒙活動の第二段階と言えるものだ。最初の取り組みだった Plume Air Report というアプリでは、ユーザーは街の大気の質の測定結果を見ることができる。このアプリには全ての都市が組み込まれているわけではないが、ニューヨークやクリーブランド、ボイシ、メンフィス、セントルイスなどの米国内の都市を含む、世界各地の 300 を超える地方自治体が含まれている。

air-pollution monitoring human sensors Plume Labs
[提供: Plume Labs]

Pigeon Air Control プロジェクトの成果を受け、Plume Labs は次の段階の取り組みを実行する、100 名のボランティアをロンドン市内で採用するに至った。ボランティアたちは今秋、数週間にわたって Plume Labs の大気汚染監視センサーのプロトタイプを装着する予定だ。

この実験は、Plume Labs とインペリアル カレッジ ロンドンとのパートナーシップにより実施される。クラウドソースによる汚染測定が、呼気に含まれる成分や健康への影響、汚染に関連する健康リスクの低減方法に関する人々の理解にどう役立つのかを、追跡、監視、理解するために役立てられる。

「ロンドンでのボランティアが数週間にわたって持ち運び、主要都市での大気の状態がうまく計測できるかを検証する、シンプルかつで軽量でポータブルな個人用センサーのプロトタイプのデザインと 3D プリントを、オートデスク製品を使用して行っています」と、ラコンブ氏。「これまで開発してきた優れたテクノロジーを、万人に入手可能なものとしていくのに役立つでしょう。誰もが大気汚染データを入手できるようにすることが、結果として、環境とその健康への影響に対する私たちの関わり方に大きな変革をもたらします。それが、この街を再び深呼吸できる場所にする手助けを行うでしょう」。

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