未来の旅をより良いものにする国際空港のデザイン 4 例

by Rosa Trieu
- 2017年6月26日
空港デザイン イスタンブール
イスタンブール新空港のレンダリング画像 [提供: iGA]

公営空港の建設は、1920 年代初頭に世界各地で始められた。それらの空港は長い年月を経て、大規模な航空会社の国際ハブ空港へと成長を遂げ、旅行者にとって重要な乗り継ぎ空港になっている。

だが、どこかの時点からその他の空港が、恐らくは新しい空港だという強みもあって、効率や利便性、技術革新、建築デザイン、そして旅行者に楽しい体験を提供するという点で上位を占めるようになった。

世界的にも傑出していた筈の空港が、遅れをとったのはなぜだろう。他とは一線を画す空港デザインと旅行体験とは、どのようなものなのだろうか?

このストーリーでは、ロサンゼルス国際空港、イスタンブール新空港、香港国際空港、ラガーディア空港に携わったデザイン チームそれぞれが、大規模な国際空港に取り入れた改善点や、テクノロジーを活用したデザインの決定へ影響を与える情報の提供方法、成長する世界人口へモダンな旅行体験を提供するのに不可欠なものを紹介している。

LAX North Base expansion rendering
MSC 北コンコース [提供: Corgan in Association with Gensler]

1. ロサンゼルス国際空港
南カリフォルニアにあるロサンゼルス国際空港 (LAX) は、米国西海岸で最大の規模と航空旅客数を誇り、空港周辺の交通渋滞では悪名高い空港だ。改修プロジェクトのスタート以前は、そのトータルな空港デザインや旅行体験が、空路の重要なハブの立場を反映しているとは言えなかった。建築事務所 Gensler で航空部門シニア プロジェクト マネージャーを務めるティム・サリヴァン氏によると、これまで LAX の改修プロジェクトが棚上げされていた理由は、空港と航空会社、近隣地域の対立が原因だった。

「ここ 10 年ほどで状況は変わりました」と、サリヴァン氏。「近年の政権は、空港プロジェクトの前進にはコミュニティとの関係構築が必要であると理解しており、その役割を極めて立派に果たしています。関係が構築されると、すぐに空港開発再開の許可が出されました」。

トム・ブラッドレー国際線ターミナルの改修は、2010 年にスタート。当時のロサンゼルス市長アントニオ・ビラレイゴウサは、旅行者のエクスペリエンス向上と、他のグローバル都市に対するロサンゼルスの競争力の維持を強調した。

LAX modernization program (LAX モダン化計画プログラム) には 2023 年までに総額 140 億ドル (約 1.6 兆円) が投じられる予定で、そこにはミッドフィールド サテライト コンコース (12 の新しい搭乗ゲートを備える)、幾つかのターミナルの改修、Landside Access Modernization Program (ランドサイド アクセス モダンか計画プログラム) も含まれている

Gensler の建築家たちはバーチャル リアリティと BIM (Autodesk Revit) を使用して空港当局や地方自治体などのクライアントへプロジェクトに関する助言を提供し、彼らを 3D 空間へ没入させた。

Gensler で航空運輸業務のエリア リーダー兼主任を務めるキース・トンプソン氏は「建築やデザインの教育を受けていなければ、2 次元の紙の上で最終的な結果を視覚的に理解するのは難しいのです」と述べている。「デジタル ツールが役立つのは、まさにこうした場面です。我々がデザイナーとして直面する問題をクライアントに理解してもらい、提案するソリューションへの共感を得ることができます」。

Istanbul New Airport interior
イスタンブール新空港内部のレンダリング画像 [提供: iGA]

2. イスタンブール新空港
デジタルへの転換は、イスタンブール新空港でも基準となる。これは世界最大の空港プロジェクトだ (オートデスクの 2016 AEC Excellence Awards のファイナリストにも選出されている)。この空港の構築と運用に 25 年契約を結んだ iGA のデザインによるプロジェクトは 4 段階で実施され、第1期は 2018 年初頭に完成予定だ。

第1期の終わりまでに、独立した滑走路 2 本と 130 万平米のターミナル、70 万平米の駐車場、143 本の搭乗ブリッジと、それらに必要な全ての空港支援機能が完成予定で、年間 9,000 万人の旅客に対応できるようになる。2028 年のプロジェクト完了時には 6 本の滑走路と病院、ホテル、コンベンションセンターを含む複数の施設、1 日 3,500 回の発着を可能とするキャパシティで、年間旅客 2 億人に対応可能となる予定だ。だが、プロジェクトを成功させるのはそう簡単ではない。

iGA で BIM のディレクターを務めるオズカン・キョセグル博士は「空港のデザインと構築は、ビルやターミナル、滑走路、搭乗ゲート、駐車場、鉄道、道路など、さまざまなインフラが組み込まれた、極めて複雑なものです」と話す。「BIM は、単一のバーチャル環境にあらゆる分野と関係者を融合させる、戦略的な役割を果たします。予定通りに竣工できるよう、デザイナーとエンジニアはプロダクションのスケジュールを短縮して、デザインと建設の進行を加速できます」。

クラウドでの BIM (とりわけ BIM 360) の活用が、プロジェクト効率に大きな影響を与えた。日々の業務と QA/QC プロセスは、現場のエンジニアが (150 台の) iPad を使用し、3D BIM モデルにアクセスして監視、実行を行う。だが、BIM のプロセスは空港の完成後も続く。

「空港の完成後、iGA は少なくとも 25 年間に渡って空港を運用していきます」と、キョセグル博士。「デザイン段階と建設段階、運用段階を通して 6D BIM を使用したのも、そのためです」。

[注: 6D BIM とは 3D の情報モデルに各コンポーネントのスケジュール データ、概算コスト、ファシリティ マネージメントをサポートする属性データへのリンクを追加したもの]

aerial view of Hong Kong International Airport
上空から見た香港国際空港 [提供: HKIA]

3. 香港国際空港
イスタンブールの特徴が世界最大の空港プロジェクトなのに対し、香港国際空港 (HKIA) はエンジニアリング事務所 AECOM のサポートを受け、最も環境に優しい空港を目指している。この空港は、自然光を最大限に生かしたデザイン、エネルギー削減、屋上へのソーラー パネル設置、さらには沖合の海上指定公園 (シナウスイロイルカ保護のための空港当局による取り組み) といったサステナビリティ関連の特徴を有している。

AECOM のオペレーションズ ディレクター兼常任理事、アイヴィー・コング氏は「空港のサステナブル デザインは、建物の基礎構造をアップグレードすることで断熱性を高め、コンコース内を涼しく快適な状況に保つことでエネルギー使用量の削減を目指しています」と話す。「その成功には、ビルディング サービス エンジニアリングと構成要素が重要になります」。

この新空港では、新たに3 本目の滑走路を追加したスリー ランウェイ システム (3RS) が要となり、ミッドフィールド コンコースや SKYCITY、ターミナルの拡張も含まれる。その実現は至難の業だ。AECOM イノベーティブ ソリューション部門ディレクターのトムソン・ライ氏は「AECOM は、3RS の効率的なデザインと建設プロセスを作成する総合 BIM コンサルタントとして HKIA と契約を結んでいます」と話す。「AECOM は HKIA と連携し、BIM ストラテジー、規格、デザインおよび建設段階の要件を構築するとともに、BIM ワークフローと設計契約の成果物のクオリティを監督します」。

さらに、AECOM は HKIA をスマート空港へと発展させている。「例えば飛行機から降りた際に、手荷物を受け取ったり、ショップに寄ったり、港内のエンタメ施設を利用したりすることがあるでしょう」と、コング氏。「その際に、テクノロジーが最速ルートを知らせてくれるようになります。非常に混雑しているターミナルビルで、これは便利です。こういった場所にはウェイファインディングが必要です」。

コング氏は、空港改修の複雑性を考慮し、ファシリティ マネジメントでの細部への配慮に特に感銘を受けたと話す。たとえば、AECOM は、保安検査場で乗客の機内持ち込み荷物を効率良く点検する方法について検討する必要があった。

「税関業務や保安業務の知識は全くありませんでした」と、コング氏。「デザインと建設に関する HKIA の要件とその理由を、ひとつ残らず知る必要がありました。そして情報をひとつにまとめ、全体としてスムーズな運用をもたらすビルを、確実に実現する必要がありました」。

LaGuardia expansion rendering
ラガーディア空港の拡張工事のレンダリング画像 [提供: WSP]

4. ラガーディア空港
ニューヨークのラガーディア空港プロジェクトに携わる関係者にとって、BIM はデザイナーやオーナー、マネージャーが空港建造物をさまざまな面から理解するのに役立ち、リスク緩和ツールとしても機能する。

WSP で BIM マネージャーを務めるジェイ・メッツアー氏は「4D モデルを見れば、建設順序を確認したり、建設可能性を検証したり、変更を加えたり、現行のスケジュールとモデルを基に決定を行ったりできます」と話す。「干渉チェックにより、デザイナーに干渉の起こる部分を報告でき、デザイナーはデザインを更新することができます。また図面を出力する際には、建設時の現場での問題も減少することが期待できます」。

ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモは 2015 年に、米国副大統領ジョー・バイデンと共に、予算 40 億ドル (約4,470 億円) の改修計画を発表した。現行の複数のターミナルを、ターミナル ブリッジで連結されたひとつながりのビルへと改修する計画だ。クオモは、この空港を世界最高ランクの空港と同レベルにしたいと話した。それは、最先端のテクノロジーを使用し、空港までの公共交通機関の機能を改善して、フライトの遅延を低減し、空港周辺の交通渋滞を緩和させることを意味している。

最高かつ最新の旅行体験を生み出そうと、WSP チームは現ターミナルの暗くて低い天井とは対照的に、軽快で広々とした空間となるよう新ターミナルをデザイン。新しいブリッジとコンコースもデザインされている。

WSP 統括責任者のマキシン・ヒル氏は「乗客がリラックスできる場所になることを心がけました」と話す。「比較的短時間で通過できますが、座ってくつろげる素敵な施設や場所がたくさんあります」。

新しいラガーディア空港は変わっている。小さな専有面積に建てられた、かなり背の高い空港となる予定で、飛行機はゲートへのブリッジの下をくぐって移動できるようになっている。「当初は、このデザインに否定的な見解が出るのではないかという懸念がありました。ほとんどの空港ビルは長くて背の低いデザインになっていますから」と、ヒル氏。「建設可能性からの観点だけでなく、必要となる空間についてその利点を検討したとき、私たちは垂直なデザインの意味を理解しました。このブリッジは、この場所の印象にもリンクしています。まさにニューヨークの存在そのものです」。

関連記事