サンフランシスコ国際空港の計画を実現する「ビッグ ルーム」でのコラボレーション

by Cathy Chatfield-Taylor
- 2018年9月10日
サンフランシスコ国際空港 ターミナル 1
「ビッグ ルーム」でのデザイン連携もあり、サンフランシスコ国際空港のターミナル 1 は改修工事中も運営を継続できている [提供: Woods Bagot and HKS]

1960 年代に建設された、芸術的な構造のサンフランシスコ国際空港 (SFO)。その格納庫内にある 3,300 平米超の「ビッグ ルーム」が、ターミナル 1 搭乗エリア B 再開発プロジェクトの計画に携わる建築家、建設業者、エンジニア約 200 名の作業場だ。

HKS の主幹、リック・リー氏はビル内に設けられたこのビルを、同社がコラボレーションと協調を促進するために選択した「最もエキサイティングかつ意欲的な手法」だと述べている。

「サンフランシスコ国際空港は、デザインビルド チームとオーナー代表の拠点を1 カ所に集約する空間に投資しました」と、リー氏。「素晴らしい決定でした。そのおかげで、生じた問題を解決するため、いつでも話し合うことができたからです。デメリットは、四六時中会話をしてしまうことでしょうか。仕事を片付けられるように「静寂の時間」を設定する必要がありました」。

この取り組みが、24 億ドル (約 2,660億円) に上るプロジェクトで実行できる限界をさらに拡大。1963 年に建設された旧ターミナル 1 は解体され、新ターミナル 1 センターと搭乗エリア B は 2 組のデザインビルド チームによって建設される予定だ。Woods BagotHKSKendall Young AssociatesED2 International が設計を担当する、建設施工会社 Austin Webcor Joint Venture 率いるチームが、51,000 平米の搭乗エリアと 27 カ所のゲート、営業スペース、アメニティ設備のプランニングとワールドクラスの未来的な旅客体験を可能にする、革新的な手荷物処理システム提供を手がける。

SFO のプランニング スペース「ビッグ ルーム」で連携する建築家とエンジニア [提供: Woods Bagot and HKS]

SFO の「利用者の体験に革命をもたらす (Revolutionizing the guest experience)」という構想の実現には、ビッグ ルームにも収まらないほどの才気が要求される。デザイン チームはさまざまな分野と地域をまたいで才能を登用し、オートデスクのプロジェクト デリバリー、建設マネジメント用クラウド プラットフォームの BIM 360 など、デザイン インテリジェンスのツールとテクノロジーを活用した。

Woods Bagot でプロジェクト デザイン テクノロジー リーダーを務めるパルディス・ミルマレク氏は「これほど複雑なプロジェクトには、世界中から最高の才能を集める必要があります」と述べる。「サンフランシスコ、ニューヨーク、メルボルン、ニューデリー、ドバイに点在するチーム メンバーがコラボレーションを行い、目の前でリアルタイムにデザインが更新されていきます」。

「クリエイティブのプロとして数百回、数千回ものデザインのイテレーション (反復) を行いますが、それには多岐にわたる分野と関係者の連係が必要です」と、ミルマレク氏。「合理化や統合ワークフローの構築が行われないと、建設予算や時間の大きな損失につながるかもしれません」。

クラウドに追加プロジェクト チームの空間を付加し、パートナー企業の適切な人材が一丸となって取り組むことのできるバーチャルなビッグルームが作られた。このクラウド上のコラボレーションは、SFO の構想や優先事項、プロジェクトの制約事項の間で回避できない問題の解決に役立っている。

空港の運営管理

空港の運営管理が、当初から最優先された。デザインビルド チームは SFO と連携し、6 年をかけて段階的にプロジェクトを計画。2016 年着工、2019 年 7 月までにゲート 9 カ所、2020 年 3 月までに追加の9 カ所、さらに 2021 年第 1 四半期に 7 カ所をオープンさせるスケジュールだ。2022 年末までに搭乗エリア B は完全運用ができる予定で、27 カ所のゲートのうち 7 カ所を多機能なスイング ゲートとして使用することで、より多くの国際線にフレキシブルに対応できる。

ターミナル 1 新ゲート外部 橋脚 レンダリング
ターミナル 1 の新ゲート外部の橋脚のレンダリング画像 [提供: Woods Bagot and HKS]

サイド プロジェクトとして旧ターミナルの一部が、新空港ビルの建設作業中にも利用者を収容できる、フル運用可能なゲート 9 カ所を擁する臨時搭乗エリアとして機能するよう改修された。稼働中のコンコースに隣接した空間に全ての建設活動を収めるため、多数のデザイン反復が行われた。Woods Bagot 地域搬送リーダーのリチャード・スペンサー氏は「計画は念入りに調整、準備が行われ、現場で利用可能な空間を残らず使用することになりました」と話す。「このプロジェクトを建設する手順は、施工会社や運営側とタイトに統合されていました」。

スペンサー氏によると、これまでのところ、SFO は建設中も当初のターミナルのキャパシティの 60% を維持できている。コンコースの一部は、解体、建設中にターミナル運営を継続させるべく、現在建設と改装の最中だ。乗客の誘導が数回必要なため、SFO は臨時の壁や AirTrain のプラットフォーム、その他の通路をアートやターミナル 1 プロジェクトに関する情報で覆って混乱を回避している。

最善のソリューション

デザイン面での野望と予算上の制約、空港運営を継続しつつ現実的に建設可能なことの間で生じる利害の対立は、最終的にはバーチャル ビッグ ルームで解決される。デザイン チームは毎週の BIM 会議でファイルや情報の交換、重要な問題への対処、優先事項の確認、重要なタスクのスケジュールにおいて実行すべき解決策のまとめを行う。建設手順とスケジュールは、施工会社の 4D モデルが提示。

「弊社のデザイナーと施工会社の評価者、管理者のタイトな統合なしに、建設方法の最適なソリューションを得ることはできなかったでしょう」とスペンサー氏は話す。

SFO ターミナル 1 内部 新クラブ ラウンジ レンダリング画像
SFO ターミナル 1 内部の新クラブ ラウンジのレンダリング画像 [提供: Woods Bagot and HKS]

こうしたやり取りが、デザインの選択肢に関する対話の機会も生み出す。リー氏が記憶しているビルディング エンベロープに関する議論はは、まぶしさや熱伝導を緩和しつつ自然光を取り入れる方法に重点を置いたものだった。ソリューションに選択されたのはダイナミック グレージング (英文情報)と呼ばれる方法で、日光に反応して窓の色を変化させることで、利用者には日中のビル内部が快適な空間となり、窓からサンフランシスコ湾の景色を楽しめるようになっている。

「内部空間をより良い環境にするため、幾度もの議論から生まれた、最もイノベーティブなソリューションでした」とリー氏は話す。このソリューションは、LEED ゴールド認証の取得を実現するという SFO の目標にも寄与するものだ。LEED 認証に向けた取り組みは、初期の基礎伏図と断面図のモデリングから始まった。採光と風向のモデリングに Autodesk Revit を使用した HKS ディレクターのクリスタル・バリスケール氏は「日光、日陰、熱利得、眩しい日差しの影響を正確に分析してビルのデザインを最適化し、暖房、冷房、照明の必要性を最小限に抑えることでエネルギー コストを削減。LEED サステナビリティ目標を実現し、利用者にとっての心地よさを確保できました」と述べている。

もうひとつのイノベーティブなソリューションは、SFO のバゲージ サービスと、スーツケース紛失がもたらす不便にうんざりしている旅行者の両方に恩恵をもたらすだろう。米国初となる手荷物の個別搬送システム (Individual Carrier System (ICS))は、セキュリティとプロセスを向上させるはずだ。RFID での追跡が可能な手荷物コンテナと搬送システムのスペースを設けることは、ターミナルのその場所で十分に価値のあるトレードオフとなった。このシステムはまた、従来の手荷物コンベアに比べて大幅にエネルギー効率が優れている。

ロマンスを取り戻す

年間5,580 万人以上の SFO 利用者の快適度は、空港幹部が公式に表明する最優先事項だ。目標は「空の旅のロマンスと興奮を取り戻す」ことであり、デザイン チームはこれを自身の試金石とした。

サンフランシスコ オフィスで業務に取り組む Woods Bagot チーム [提供: Woods Bagot and HKS]

デザイナーたちは、これまでの巨大なターミナル空間に代わって、現代の旅客機に搭乗して旅に出る、より多くの利用者向けにコンコースのサイズを設定。都市部の中心街から繁華街、公園のような環境や子供たちの遊び場へと発展する「地区」を生み出した。「これは未来のターミナル デザインへの取り組みの前兆となるものです」と、スペンサー氏。「荘厳な表現を追求するのでなく、体験を変化させ、大規模で複雑なビルの内部に、独特の「地区」を生み出すのです」。

サンフランシスコ市のスーパーヴァイザー (監督委員) でゲイの権利活動家だったハーヴェイ・ミルクにその名の由来を持つ SFO の新ターミナル 1 は、バーチャル ビッグ ルームに集った、航空デザインの未来を広い視野で考える逸材の産物だ。ミルマレク氏は「これは、よりインテリジェントにデザインされ、より効率よく提供され、そして最終的に新たなレベルの旅行者体験を定義する空港に求められる役割を示す、最初の例となるでしょう」と予測している。。

 

 

 

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