小惑星採掘: 兆万長者になるのは誰だ?

Image composite: Earl Otsuka

希少性を重んじるのは、人類特有のことだ。供給量が限定されたものを、豊富に入手可能なものより高価にすることで、経済は促進されてきた。だが、こうした希少性がビジネスに組み込まれたのは、資源は地球に限定されたものだと考えてきたからだ。

現在、起業家たちのグループが、小惑星採掘が一部の資源不足の解消に役立ち、限られた人々を異常なほど裕福にするかもしれないと考え始めている。これは単なる夢物語だろうか? ニール・ドグラース・タイソンは、どうやら別の考えのようだ。

小惑星採掘は、控えめに言っても困難なものになるだろう。だが様々な難題にもかかわらず、Deep Space IndustriesKepler Energy & Space EngineeringPlanetary Resources といった民間企業が、小惑星採掘競争に乗り込む計画を練り始めている。小惑星をその手を収めるのが誰になろうと、そこへ到達するために使う手段は同じようなものになるだろう。

価値ある小惑星の特定

小惑星採掘の最初のステップは、それにふさわしい対象をリストアップして選択することになる。採掘会社は望遠鏡を使い、天空に目をこらし、地球に近くて比較的低速 (5.5-8.0 km/秒) な小惑星を見つけ出す。

適切なターゲットを幾つか特定できたら、それを C タイプ、S タイプ、M タイプの 3 種類のカテゴリに分類する。最も高い関心を集めるのは、コロニーでの生活や、人間が作業の一部を担う大規模な採掘作業の支援に使用できる、水や炭素、リンを豊富に含む C タイプだ。この種の小惑星は即座に採算が取れるものではないが、長期的な宇宙空間での取り組みにおいては、重要な要素になり得る。

C タイプには独自の価値があるが、小惑星採掘事業者のメイン ターゲットにはならず、その栄誉は残る 2 タイプのいずれかに与えられる。S タイプの小惑星は、貴金属を豊富に含有。M タイプは金属を多く含み、S タイプと比較すると、採掘する価値のある有用元素を含んだ鉱床を 10 倍程度も含んでいる。

言うまでもないことだが、営利目的の企業であれば、まず S または M タイプの小惑星を確保し、採掘作業が順調に進んだ後のために C タイプをキープできれば最高だ。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸態勢のロゼッタ探査機ランダーからの景色
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星への着陸態勢のロゼッタ探査機ランダーからの景色 [提供: NASA]

小惑星の確保と採掘

小惑星採掘の初期段階は似たようなものであっても、確保や採掘の段階は、小惑星のサイズや鉱石のある位置、地球からの距離によって変わってくるだろう。

現在のところ、小惑星採掘の方法には幾つかのアイデアが検討されている。例えば小惑星を安全な地球の軌道まで引っ張り、派遣した採取用の宇宙船で大きな塊を削り取って、少しずつ地球へと持ち帰ったものを地上で処理するという案がある。

このアイデアは見込みがありそうだが、私には少し退屈に思える。人類の宇宙との関係を一変させ、個人の富の概念を劇的に拡大するかもしれない産業の話なのだから、圧倒的に豊かな宇宙の恵みを収集するための、奇抜な手法を考えてみてもいいのではないだろうか?

私が将来的に提案したいのは、自己複製可能なマシンを積んだ宇宙船を、採掘事業者が対象の小惑星へ送り込む方法だ。各マシンは小惑星上で一斉に採掘を行い、地球へ帰還する母船へ戻る前に処理を行う。これなら自動化によって諸経費を大幅に削減でき、宇宙飛行ごとの採算性を上げることができる。

初期段階の小惑星採掘のもうひとつのアイデアは、深い縦坑を掘り下げるというより、収集に近いものだ。火星は大気が希薄なため、小惑星はほぼそのままの状態で火星に落下することが分かっている。だから、カリフォルニア州を流れる河川の流域に転がっていた金を採取できたフォーティナイナーズ同様、火星に最初に降り立つ者も、地表に転がっている鉱石を採掘できるかもしれない。

では、目的地にたどり着いた採掘会社は、何から利益を得るのだろうか?

アーティスト 小惑星採掘 予測
小惑星採掘はこういう方法で行われるようになるのだろうか? [提供: DSI]

小惑星から何を採掘するのか?

小惑星採掘が富を生む商業活動になるなら、採掘会社は地球上では極めて希少な元素を探し求めるだろう。金、銀、プラチナ、銅、インジウム、鉛、パラジウムなど、そのリストは延々と続く。

有価金属の他にも、小惑星では月面コロニーなどの宇宙ベンチャーへの水供給用や、地球の枯渇または汚染された水資源の補充用の水も採掘できる。

地球にとって貴重な資源のひとつに、ヘリウム 3 がある。核融合の燃料源となる可能性を秘めてた同位体だ。地球のヘリウム 3 含有量は極めて少ないが、衛星である月には比較的豊富に含まれている。つまり、仮に人類が核融合炉の稼働に成功すれば、地球にほど近い場所に大量に蓄積された効率の良い燃料を使って、数世代にわたって地球にエネルギーを供給できるようになる。

宇宙空間で確保可能な資源を網羅できたわけではないが、ここまでの話で、ある程度の大きさの小惑星ひとつが持つ価値の大きさが分かるだろう。これは数百京ドル規模の話であり、NASA の推定によれば、小惑星帯全体の価値は 7 垓ドルに上る。

小惑星採掘は現実的か?

端的に言うと、現時点ではそうではない。小惑星採掘を完全に実用化するには、克服すべき数々の技術的、経済的な困難が待ち受けている。まず、SpaceX が再利用可能なロケット技術によるコスト削減へ懸命に取り組んでいるとはいえ、宇宙空間への進出は、国家はもちろん企業にとっても、いまだに法外に高価なものだ。

仮に宇宙旅行の価格が急激に降下したとしても、小惑星採掘会社には、軌道上や別の惑星上に建設する処理設備など、宇宙空間インフラの構築という重労働が残される。そうした施設がなければ、採掘された資源を全て地球に持ち帰って、それを加工しなければならない。何百万 km もの距離の往復は、採掘ミッションを複雑にし、採算性を低下させるだけだ。

その上、数十年間にわたって宇宙空間における困難に対処し、ほぼ監視が必要ない状態で採掘作業を遂行できる設備を建築するには、技術的な限界もある。もちろん、これまでの NASA 惑星探査機の輝かしい実績を考慮すれば、この障壁は他のことよりもずっと簡単に克服できるだろう。

小惑星採掘技術は、人類が自らの存続を共同で守る必要性によって促進されるかもしれない。

小惑星採掘においては、あらゆるベンチャー企業に、テクノロジーだけでなく経済的要素も大きく立ちはだかる。採掘プログラムの開発、小惑星の調査、選出した鉱床付近でのインフラ構築、採掘物を持ち帰る効率的な運用体制の設置コストは膨大なものとなる。事実、ある研究によると、小惑星採掘の初期コストは 11 兆円だと推定されている。これは 2016 年度に、科学と教育に充てられる連邦予算とほぼ同額だ。

とどのつまり、小惑星採掘の夢は、いまだに夢でしかない。だが、NASA と ESA (英文情報) による最近のミッションは、宇宙空間での採掘が近い将来に実現するのではという希望を感じさせる。さらに重要なことに、小惑星採掘技術は、人類が自らの存続を共同で守る必要性によって促進されるかもしれない

小惑星が人類を滅ぼしかねない存在であることは長年知られているが、絶滅を招きかねないものから人類を守るために必要なテクノロジーの開発は、これまで驚くほど行われてこなかった。だが状況は変わりつつある。小惑星の軌道を変える (つまり軌道を制御する) ため、宇宙空間に関する、より突っ込んだ調査や真剣な取り組みが行わるようになっていのだ。

さて、小惑星採掘業界から世界初の、100 兆円規模の資産を持つ者は誕生するのだろうか? 断言はできないが、小惑星採掘のパイオニアたちが、100 兆円単位の大富豪となる可能性は高い。ただし、それが良いことなのかどうかは議論の余地があるだろう。

本記事はカイル・マクシー氏の執筆によるものです。本記事の別バージョン (英文) が Engineering.com に掲載されています。

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