ロボットがやって来る! 無人ブルドーザーと建設業界における自律自動車技術の兆し

by Matt Alderton
- 2015年11月16日
提供: Rio Tinto

アメリカ独立戦争で伝令として活躍した愛国者ポール・リビア氏が、自身を有名にした真夜中の騎行を現代に行うのであれば、彼が叫ぶのはイギリス軍の到来を知らせる警告ではない。同胞に注意を促すのは機械のことだろう。「ロボットがやって来る!」と馬上から叫ぶに違いない。それとも、運転するプリウスの中からだろうか。独立戦争での伝令とは異なり、ロボットの到来を告げるこの知らせは警告ではなく、むしろ誕生の知らせだと言える。自律自動車技術は未来の話ではなく、もはや現実なのだ。

このロボット革命の核にあるのが自動運転車だ。米国内の5州とコロンビア特別区では既に認可が下り、2020 年には一般に使用可能となるだろうと予想されている。しかし、自動化の準備が整えられているのは車だけではない。バスや電車、トラックも無人化へのアップグレードが着実に進んでおり、建設業界も同様だ。自動化は産業界にも、自動運転車が消費者にもたらすと考えられているもの同じ利点をもたらす。

autonomous_vehicle_technology_rio_tinto_driverless
[提供: リオ・ティント]

「テクノロジーの導入に関しては、重機は自動車部門から10年ほど遅れる傾向があります」と、建設業界誌「Engineering News- Record」の代表取締役、チューダー・ヴァン・ハンプトン氏は説明する。「自動車部門では、メルセデス・ベンツ S クラスが次世代技術の指針です。S クラスに搭載される技術は、いずれ長距離輸送トラック部門に取り込まれ、そこからオフロード用重機に取り込まれます」。

昨年、駐車や車線変更、ハンドル操作、さらにはブレーキ操作までを自動化する「インテリジェント・ドライブ」システムを搭載した 2014 年モデルの S クラス・セダンが、自動運転車として初の大量生産車となった。トラクターやブルドーザー、クレーン車、ダンプカー、掘削機が同様に自動化されるのも時間の問題だ。

効率的な採鉱
鉱業における新手法の数々は、いずれ建設業界に姿をあらわすであろう手法を垣間見せると、シスコの「Internet of Everything」部門シニア・ディレクターのトッド・グレーラ氏は話す。彼は多国籍鉱業・資源グループであるリオ・ティントと綿密に連動し、西オーストラリアにあるピルバラ鉄鉱石鉱山での自動化実現を行った。ピルバラは、リオ・ティントの「マイン オブ ザ フューチャー (未来の鉱山)」プログラムの本拠地ともいえる場所だ。

autonomous_vehicle_technology_rio_tinto
リオ・ティントのピルバラ鉱山で稼働する無人ダンプカー [提供: リオ・ティント]

「リオ・ティントは採鉱作業の効率の最適化における最先端です」とグレーラ氏は説明する。彼によると、リオ・ティントはまず車両のパフォーマンスをモニターできるよう採鉱用の全車両に診断センサーを装備しており、収集したデータを活用して無人重機の動作改善やスピードアップ、安全性向上に役立てる。例えばリオ・ティントは現在所有している 69 台の無人ダンプカー(コマツ製)はピルバラ鉱山で稼働中しており、それぞれが GPS を使用して高純度鉱石の無人運搬を行っている。また無人の重牽引長距離鉄道システムの開発と検証も行っており、オペレーター 1 名で複数の掘削装置の遠隔操作を可能にする発破孔の自動穿孔システムを配備している。

リオ・ティントは自動牽引システムについて「これらの自動運転車両は、積み荷をより効率的に運搬して遅延と燃料使用量を最小限に抑え、オペレーターが車両の周辺環境をより詳細に遠隔コントロールすることで、さらに高い運転安全性を確保できます」と述べ、また無人掘削システムについては「オペレーターの安全性が大幅に高まり、精度と装置稼働率を最大限に高めることができます」と話す。

現場環境の向上
重機メーカー各社は、リオ・ティントがオーストラリアで実現した効率性を他の建設現場でも再現するべく、自律走行車の開発に力を注いでいる。例えばコマツは 2013 年に世界初のブレード完全自動制御を搭載した、半自動ブルドーザー D61i-23 を発表した。キャタピラーとジョン・ディアも同様の車両開発に取りかかっており、当初はコマツ同様に半自動の車両だが最終的には完全な無人自動運転車両を展開させる予定だ。

autonomous_vehicle_technology_caterpillar
約 90 m 離れたところにあるトレーラーから、オペレーターがキャタピラー社の D11T ブルドーザーを遠隔コントロール。スクリーンにはブルドーザーに取り付けられたカメラからの映像が映し出される。[提供: キャタピラー]

これらの重機の建設現場への導入は、ヴァン・ハンプトン氏は 10 ~ 20 年のうちに起こると予測しており、次のような点が向上するだろう:

  • 安全性: リオ・ティントでは無人車両を遠隔制御しているが、これは人間のオペレーターが危険にさらされていないことを意味する。しかし、車内での操作が必要な車両でも、自動化はオペレーターの安全につながる。「オペレーターというのはきつい仕事です」とヴァン・ハンプトン氏。「オフロードを走るので首や腕、手に負担がかかります。また最近では作業が夜間に行われることが増えたため、オペレーターは業務時間内に非常に短い仮眠を取りながら作業を行います。これらすべてがプロジェクトのリスクを高めます。たとえばオペレーターの居眠りを検知するスマートなマシンを開発するなど、安全機能の自動化はこういったリスクを下げることにつながります」。
  • 生産性: 「こういったシステムは、安全性だけで売り込むことはできません。安全性に経済的価値が加わる事が重要です」とグレーラはこう話し、人的ミスを排除すれば生産性が向上するとの前提に基づいてアルバータ州のオイルサンド輸送に無人トラックを導入しているカナダの石油会社サンコー・エナジーを引き合いに出した。「オイルサンド輸送では、400 t の輸送用トラックが 1 日約 20 往復します。トラック 1 台当たりあと 2 往復できれば、トータルとしては生産量にかなりの向上が見込めます」。
  • 効率性: 無人重機の重要な機能のひとつに、遠隔診断がある。これは「テレマティックス」とも呼ばれ、インターネットに接続したセンサーを活用して、車両が確実に最高のパフォーマンスで動作するようモニターする仕組みだ。結果として重機の耐久性は向上し、たとえば運送用無人トラックのタイヤの持ちは、グレーラによると最大 50% も向上。必要となる作業労務は減り、燃料消費は低下するため、結果としてコスト減につながる。「例えば燃料効率は、その大部分が重機を操作するオペレーターの熟練度にかかっています。必要以上の馬力を使用するオペレーターは燃料も余分に使用しているのです」とヴァン・ハンプトン氏は説明し、3D モデルの導入によりさらなる時間とコストの削減が可能だと話す。「3 次元の地形モデルをマシンに読み込ませることで、マシンが独自に作業を行い、モデルで特定した傾斜に合わせて作業を最適化します。BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)と同じですが、この場合は垂直方向ではなく水平方向に利用します」。
autonomous_vehicle_technology_caterpillar_driverless
上の画像のオペレーターが制御中のキャタピラー社ブルドーザー

無人デザイン: どれほど多大な利点をもたらすとしても、自動化がオペレーターの絶滅につながることはない。「今後、オペレーターは民営航空会社のパイロットのような役割を果たすようになると思います」とヴァン・ハンプトン氏。「アイデアや情報の提供、またマシンに不具合が生じた場合の介入など、オペレーターはまだまだ必要です。だからこそ、彼らの知識はレバーやジョイスティックの操作といった機械操作よりも重要なものとなるでしょう」。

自動運転車が通勤をより楽しいものにするのと同様、オペレーターが必要かどうかに関係なく、無人のブルドーザーやクレーン車、トラック、掘削機により時間や労力、コストの節約が実現し、その結果としてオーナーやデベロッパーはより優れたデザインに時間や労力、コストをかけることができるようになり、最終的に喜びをもたらす建造物へとつながる。

「デジタル モデリングによる建設の最適化が進み、自動化または半自動化された機械による建設作業が増加するにつれて」とヴァン・ハンプトン氏。「建設のクオリティはさらに向上し、完成までの時間は短縮され、建設に関わる人々に還元される利益は増加し、そこからエンドユーザーが得る価値は高まるでしょう」。

関連記事