Barovier&Toso が吹きガラスの伝統をデジタル デザインの時代へ

by Drew Turney
- 2017年11月7日
Barovier&Toso Taif chandelier
The Taif chandelier, designed by Angelo Barovier in 1980, is a Barovier&Toso icon. Courtesy Barovier&Toso.

最古のテック系企業は、どの会社になるだろう? Google は来年 4 月に創業 20 周年を迎える。Apple や Adobe が創業された年に生まれた人なら、ティーンエイジャーの子供がいてもおかしくない年代だ。IBM が Computing-Tabulating-Recording Company として創立したのは 1911 年に遡る。

では、1295 年に設立されたテック系企業はあるだろうか? この年号は誤植ではない。Barovier&Toso は、マルコ・ポーロが中国の旅から戻った時代から、イタリア・ベネチアで伝統的な吹きガラス製法によるガラス製のオブジェを製作している。このメーカーはテック系企業ということになるのだろうか? Barovier&Toso は創業以来、自社の工芸技術を革新し続けてきた。そのツール セットに加えられた最新技術が、デジタル 3D デザインだ。

だが自らの事業を熟知し、それを 700 年以上にわたって続けてきた企業が、いったい何を変える必要があるというのだろうか? Barovier&Toso のデザイン部門を統括するサラ・ペドラリ氏は、これは単に時代を超えて生き残った手法というわけではないのだと話す。「私たちが長年業界をリードする立場にいられたのは、常に更新を続け、最新の知識を取り入れてきたからこそです」と、ペドラリ氏。「私たちは、伝統を守るために新しい技術を用いています」。

ガラス細工の意匠図案家は、伝統的に油性鉛筆を使い、塗工紙にランプやシャンデリア、装飾作品を手書きしたものを顧客に提示してきた。それは平面的な図面となるため、色や材料が異なる場合は想像力を働かせる必要がある。

だからといって、この昔の作業手法が一種の芸術形態ではないということではない。Barovier&Toso は、そのデザインの多くを、長い時間をかけて実現してきた。その中には、このメーカーの芸術監督を務め、後に経営者となったエルコール・バロヴィエール氏 (1889–1974年) が製作した作品の数々も含まれる。彼は、自身の全盛期である 1930 年代に、紙と鉛筆を使用していた。Barovier&Toso は 25,000 点を超える、手書きのデザインライブラリーを保持している。

だが時代は変わり、今やガラス製品は製造前にデジタル モデルでコンセプトを作成して、その技巧的処理について制限無しに検討できるようになった。建築物やロゴ、その他あらゆるもののデザイン プロセスと全く同じだ。ペドラリ氏とチーム スタッフ、コラボレーターは、デザインやビジュアライゼーション、シミュレーション、製造に Fusion 360 を使用しており、それがデザイン データを集中化させ、合理的なワークフローを実現するのに役立っている。

「私たちの強みは、カタログに掲載されているほとんどの製品の、色やサイズのカスタマイズの要望に対応できることです」と、ペドラリ氏。「全ての製品を、そのお客様のためだけに、個別に製造しています」。3D デザインが提供する最大の利点は、かつてないほどの短時間で製品のデザインや微調整、納品ができることだ。しかも、提供可能な製造オプションをデザイン段階で提示することができる。また最終製品のレンダリング画像を、その製品が置かれる空間内に表示して、その場にふさわしいものへとフル調整できるのだ。

Barovier&Toso には、フォーシーズンズホテルやルイ・ヴィトン、カルティエなどの大企業から、個人や建物へサービスを提供するインテリア デザイナーまで、さまざまなクライアントがいる。ペドラリ氏は、偏りなく存在しているどの顧客の要件にも共通するテーマが「ラグジュアリー」だと話す。「お客様は単に豪華なだけでなく、他にはない高級さ、「時代を超越した」美しさを持つ作品を求めています」と、ペドラリ氏。

Barovier&Toso 溶解炉室
Barovier&Toso 本社にある溶解炉室 [提供: Barovier&Toso]

この資質は Barovier&Toso の DNA に組み込まれたものだ。デザインや分析、シミュレーション、ビジュアライゼーションを経て実際の製造が行われる溶解炉では、ガラスを吹き、回転させ、切断して成形し、熔解炉の中で微調整するという、吹きガラス職人の作業手法は変わっていないとペドラリ氏は話す。だがレオナルド・ダ・ヴィンチの時代以前から 2 世紀にわたって続けられてきたこの営みに、職人たちは今もなお極めて忠実であるため、最新のツールやテクニックを一蹴する者もいるのではないだろうか?

コンピューターや CAD に拒否反応を示した職人はいなかったかという質問に、ペドラリ氏は「順応しやすさは、人により異なります」と答える。「でも大半が熱意を持って変化を受け入れました」。

これは、ある意味でガラス細工のデザインのコンセプト段階を一変させた。Fusion 360 を用いることで、Barovier&Toso はコンセプトをデジタルで作成し、必要があれば顧客の要望に合わせて変更できるようになった。最終デザインを顧客にプレゼンテーションする際にも、 Barovier&Toso チームは Autodesk VRED で 3D レンダリング画像を出力し、ベッドルームやショールーム、ホテルのロビーなどの環境にあるデザインを提示できるようになった。

Barovier&Toso 職人 2D 図面
Barovier&Toso の職人たちは現在も 2D 図面を使用している [提供: Barovier&Toso]

顧客がフル 3D レンダリング画像の価値を理解するようになったとしても、Barovier&Toso の吹きガラス職人たちには、今後も製造用の 2D デザインが必要だ。それは Fusion 360 から簡単に出力できる。つまり、これまでとは逆に、顧客へのプレゼン段階でデザインの素材が生み出されるのだ。

もちろん、デジタルを駆使したトリックや新たなシステムも、重要な場所で向上をもたらさないのであれば、大した価値はない。Fusion 360 を始めとするオートデスク製品の導入以降、売上も増えているとペドラリ氏は話す。

彼女とそのデザイナー チーム、外部コラボレーターはスピードと操作性に満足しているというが、吹きガラス工芸のデジタル化は、果たして Barovier&Toso のビジネスを今後 700 年にわたって保証するものとなるのだろうか? ペドラリ氏曰く、その証は顧客の反応のみだ。「プロジェクトを画像として実際に見せることができることは、顧客の最終作品の理解に役立ちます」と、ペドラリ氏。「想像する必要すらありません。実際に見ることができますからね!」。

関連記事