ロシアは BIM テクノロジーの北極星となるか?

by Kim O’Connell
- 2017年7月13日
BIM テクノロジー ヘッダー
Image composite: Brandon Au

昨年のリオでもそうだったが、オリンピックは世界最高峰のアスリートたち、開催都市に新設されたスポーツ関連の複合施設とインフラの両方に、眩しいほどのスポットライトを当てる。

2014 年に冬季オリンピックがロシア・ソチで開催された際にも同じことが起きた。ロシアは、4 万人を収容するフィシュト・オリンピック・スタジアムの開発に全力を尽くした。このスタジアムは現在、2018 年の FIFA ワールドカップに向け、ドーム型からオープンエア型のアリーナへと改修工事が進められている。

bim in russia spartak stadium
2018 年開催の FIFA ワールドカップ会場のひとつ、ロシア・モスクワのスパルタク スタジアム [提供: Courtesy AECOM]

Populous and BuroHappold Engineering がデザインを行ったフィシュト・スタジアムは、ロシア国内で需要が高まりつつある BIM テクノロジーを活用する建築事務所、SODIS Lab が提供するサービスの支援を受けて運用されている。

ロシア建設省は現在、ロシアを BIM デザインにおけるリーダーとして売り出し、そのサービスを世界各地に輸出しようと努力している。各地の企業が BIM を、世界中のプロジェクトのコラボレーター間で寸法や外観、機能、コストなどさまざま建築データのコミュニケーションを行う効果的な手段として使用している。

モスクワの建設省で都市計画および建築活動部門のディレクターを務めるアンドレイ・ベリュチェンコ氏は、BIM テクノロジーを使用することで「社員たちは、建設現場や文書の準備が行われている場所にいる必要はありません」と話す。「それが、このテクノロジーの見過ごせないメリットであり、BIM サービスを輸出可能としている点です。ロシア企業が関わる国際プロジェクトの数と量は、ダイナミックに成長しています」。

bim technology Fisht Olympic Stadium Sochi
ロシア・ソチにあるオリジナル版のドーム型フィシュト オリンピック スタジアムの BIM モデル [提供: SODIS Lab]

チェチェン共和国のグロズヌイに建設中の 100 階建アフマト タワーや、サンクトペテルブルクの多目的施設ラクタ センターなど、注目のプロジェクトにロシア企業数社が BIM を使用し始めている一方、グローバルなビジョンの実現には、まだ障害もある。主要な問題はコストと教育、規制上の障壁、そして国際的に認知された BIM 規格の欠如だ。

「このテクノロジーの導入に関連するコストに、多くの企業が懸念を抱いています。ソフトウェアや、よりパワフルな機材の購入と、スタッフの教育などにかかるコストです」と、ベリュチェンコ氏。「BIM を導入するには、ビジネス プロセスの多くを大幅に再編成する必要があり、そこには BIM マネージャーや BIM コーディネーターなど、新しい役割や役職も含まれています。それにロシアでは、BIM の活用に関する知識と経験を持つ人材の不足にも企業が直面しています」。

社内での BIM 導入が高いハードルであるのに加えて、こうした大きな改革をクライアントに納得させることは、さらに一層の難題となる。「最大の難関は、市場参加者の考え方を変える必要があることです」と、ベリュチェンコ氏。「多くの企業が業務に、それが非効率なものであっても、保守的な手法を使用することを好みます。その一方で、国は新しいテクノロジーや優れた効率の建設テクノロジーを必要とし、新たな規則を定めています」。

bim technology akhmat tower
ロシア・グロズヌイに建設中のアフマト タワー。2020 年に完成予定。[提供: Gorproject]

このような目標の下、建設省は早ければ来年にも BIM をあらゆる建設プロジェクトで必須とする、段階的なシステムを確立させようと計画している。「ノルマを設定する予定です」と、ベリュチェンコ氏。「例えば、来年はロシア連邦からの請負契約の 20% を BIM で実行しなくてはならない、というようにします。その後、この規則を地方自治体の請負契約へと拡大させる予定です。そして、2018 年に BIM を使用して構造体がデザインされた場合、2019 年には、その構造体の建設も BIM を使用して実行します。こうすることで 5 年以内に、ロシア連邦の予算制度内の全レベルで公的調達の約 50 %を BIM に切り替えられるでしょう」。

これを後押しするためにも、ロシアは国際的に認知された BIM 規格を導入する必要があり、これが情報伝達の共通言語を確立することになる。建設省は、ロシアにとって魅力のあるモデルを開発するため、BIM コンサルタントのグループから成る専門委員会と部会を設置して、イギリスなどの他国で作成された規格を検討している。オートデスクは、一般用語集、品質保証の規則、特定のプロジェクトに対するモデリングのマイルストーンへの手引きを含む、ロシア向け BIM 規格のテンプレートを提供した。

「イギリスは現在、BIM におけるリーダー的存在になっています」と、ベリュチェンコ氏。「先駆者であるだけでなく、優れた実績を残しています。イギリスや、他のヨーロッパやアジア各国の経験を研究して、活用すべきです。それが、イギリスの BIM 規格をモデルとして使用する理由です」。

bim technology Laktha Center
ロシア・サンクトペテルブルクのラクタ センター。2018 年に完成予定。[提供: Gorproject]

ロシアの BIM 標準が定まった際には、より小規模な地方の施工会社や協力会社も、BIM 能力の開発とコストの吸収における遅れを取り戻す必要がある。幸いにも、建設省は企業にソフトウェアの導入やトレーニングの余裕を与える段階的な BIM 義務化に加えて、教育の機会の増加にも取り組んでいる。

そのリソースには、ベストプラクティスや養成コースのほか、世界の市場から収集された有益な情報が盛り込まれる予定だ。また、モスクワ国立土木大学 (Moscow State University of Civil Engineering) など多くの大学が、BIM 関連のコースの提供を開始している。

ロシアは政治的にも経済的にも、世界の舞台で否定的な意見に直面している。だが、BIM 規格の幅広い採用と、世界的の建設プロジェクトでの BIM 活用に対する政府からのトップダウンの支援により、潜在的な顧客がロシアという国を違った角度で見るようになり、ロシアの経済を促進させる機会を提供することになるかもしれない。

「国際社会における立場の強化と BIM サービス輸出の拡大が、ロシアを新たなレベルへと引き上げてくれるでしょう」と、ベリュチェンコ氏。「それは、人々の認識にも影響する筈です。ロシアは国際社会の目からも、内部の成長にも外部との連携にも先進技術を用いる国として映るようになるのです」。

これこそ、オリンピックレベルの大志と言える。この国に輝く BIM という星が、どれほど輝きを増していくかに注目しよう。

関連記事

Success!

ご登録ありがとうございました

「創造の未来」のストーリーを紹介中!

日本版ニュースレターの配信登録