エアバスがフライトの未来に向けてバイオニック デザインを生成

by Ken Micallef
- 2016年7月15日
バイオニック デザイン エアバス
[提供: エアバス]

休暇先へ向かう機内にいると想像してみよう。例えば急な乱気流を避けるため、飛行機が翼の形状を変更。あるいは飛行中に機体へ何かが衝突して生じた損傷が、乗客の目の前で自動的に修復。さらには機体が透明になって、あらゆる方向を見渡すことが可能になったとしたら。

これが 2011 年にエアバスが発表したコンセプト キャビンのビジョンだ。絵空事だと思われるかもしれないが、こうした未来が現実のものとなり始めている。

エアバスは先日、ジェネレーティブ デザイン ソフトウェアと 3D プリントを活用し、ニューヨークを拠点に活動する設計事務所 The Living と連携して バイオニック パーティション を製造した。このバイオニック デザインによるパーティションは、薄くはあるが乗客と客室乗務員のエリアを隔てる極めて重要な壁であり、緊急事の担架 (ストレッチャー) 用のスペースや、離着陸時に乗務員が使用する折り畳み椅子も支えている。

バイオニック デザイン エアバス パーティション 動画
[提供: エアバス]

このバイオニック デザインによるパーティションの重さは、約 30 kg。従来のパーティションに比べて 45% も軽量化されており、燃料と二酸化炭素排出量を大幅に削減できる。だが、このエアバス製パーティションの最大の驚きは、そのデザインが単細胞生物である粘菌を基に作成されていることだ。

エアバスのイノベーション マネージャー、バスティアン・シェーファー氏は「粘菌は非常に興味深い生命体です」と語っている。「この微生物は、食物を求めて森の地表を這い回ります。その過程であらゆる方向へと広がり、自身とその周りにある食物とをつなぐ、重複した網を生み出すのです。私たちは、パーティション内の構造を構築するために、この習性を利用しました。アルゴリズムを使用して、パーティションと機体の主要構造部分との結合点だけでなく、パーティション内部でも乗務員用の椅子をしっかりと支えられるようにしました。これによりパーティション内部に、幾重にも重複する構造網を作成することができたのです」。

エアバス バイオニック デザイン パーティション 位置
エアバス A320 のバイオニック パーティションの位置 [提供: エアバス]

シェーファー氏が言及したアルゴリズムを生成するため、エアバスはジェネレーティブ デザイン ソフトウェアを使用している。チームは、ツールへ制約となる事項を入力し、軽量化と性能の 2 点を目標に掲げた独創的なデザインを生成した。軽量化に関しては、チームは 30% の削減を目標としていたが、45% の削減を実現できた。

「ジェネレーティブ デザインとは、簡単に言ってしまえば目標の定義付けです」と、シェーファー氏。「つまり目標が軽量化なのであれば、ソフトウェアがアルゴリズムを使用して、その目標の達成を支援してくれます。また構造上の性能など、それ以外の目標を実行することもできます。このバイオニック パーティションの場合は、16 G の衝突実験でパーティションに 200mm 以上の歪みが出ないことに目標を定めました」。

バイオニック デザイン パーティション 分解図
[提供: エアバス]

これらの最初の制約事項から、チームはパーティション デザインの 1 万を超えるバリエーションを得ることができた。そしてエアバスはビッグデータ分析を利用し、デザイン反復の数を減らすとともに、最も性能の良い最終的な製造デザインを決定した。「私たちはある種のビジュアル図を使用しており、2 つの制約である重さと歪みをグラフに示して、全てのデザイン ソリューションを点で示すようにしています」と、シェーファー氏。「幾つかのデザイン ソリューションを選択し、より詳細な分析結果を用いて、詳しい検討を簡単に行うことができました」。

製造デザインの決定後、エアバスは Bosom Concept Laser M2、EOS M290、EOS M400 (長いパーツ用) という 3 種類の異なるアディティブ マニュファクチャリング システムを使用して製作を行った。「パーティション全体を複数のサブコンポーネントに分割し、プリンター内の作業空間サイズに合わせてプリントしました」と、シェーファー氏。「そのため、どのプリンターでどの部分をプリントするのか決める必要がありました。その決断を行った後、複数のプリンターで並行してプリントを実施しています。1 つのパーティション全体を作成するのに、最低でも 7 回に分けてプリントしました」。

バイオニック デザイン パーティション エアバス 形成
バイオニック デザインによりパーティションが形作られる [提供: Airbus and David Benjamin/The Living, an Autodesk Studio]

「116 個のパーツ(全てのパーツには接合部があり機械加工が必要)がありましたが、問題は「これらのコンポーネントで作成したパーティションが果たして機能するのか?」という点でした」と、シェーファー氏。「結果としては、全てうまくいきました。パーティションを持ち上げたとき、それは驚くほど軽く、しかも堅固なものでした。このテクノロジーは必ず成功すると大きな自信が持てましたね」。

シェーファー氏は、同等の軽量化は従来は不可能だったとも指摘する。「これが実現したのは、ジェネレーティブ デザインと 3D プリントの組み合わせだからです」と、シェーファー氏。

現行の工業用積層造形マシンでは、大抵は航空機用の小型部品しかプリントできない。より大型のプリンターの登場が、より大きな部品を製造可能となることを意味している。いずれエアバスも、3D プリント製のコクピットに狙いを絞るようになるだろう。コクピットにはパーティションの倍の大きさがあり、完全に密閉されなければならず、また万全の安全性が求められる。デザインの指針に粘菌を活用することに留まらず、エアバスは新しいヘッドレストを作成するため、植物をもとにした他のアルゴリズムを開発するようになるかもしれない。人間の特性をベースにした、超強力な垂直尾翼やジェット エンジンの部品をデザインするアルゴリズムが、現実のものとなるかもしれないのだ。エアバスは、ジェネレーティブ デザインを活用し、飛行機全体が 3D プリントで製造可能となる日を待ち望んでいる。

「空の旅の未来に関するエアバスの大きな理想のひとつとして、もちろん持続可能性があります」と、シェーファー氏。「私たちは製品自体だけでなく、事業運営と製品の製造方法にも特別なライフサイクル アプローチを取っています。そのため飛行機の設計に、新しい手法であるバイオミメティクスを取り入れることができるのです。バイオニック パーティションは、バイオミメティクス分野にそのルーツを持つ製品です。ですが私たちの製品は、最終的には製品寿命を終えるとリサイクル可能である必要があります。そのため製品のライフサイクル プロセスには注意を払っています。2020 年になるか、22 世紀になるのかは分かりませんが、将来的に飛行機は食べられる材料で製造されるようになるでしょう」。

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