ブルガリの新ファクトリーが実現した伝統のアップデート (と盗難の阻止)

by Taz Khatri
- 2017年9月21日
ブルガリ ファクトリー
イタリア・ヴァレンツァのブルガリの新ファクトリーは、ヨーロッパ最大のジュエリー工房 [提供: ブルガリ]

紀元前 6 世紀にエトルリア人が優れた職人技の伝統をスタートさせて以来、イタリアン ジュエリーは長い歴史を持ち、まばゆく輝く宝石を数多く生み出してきた。

イタリアは現在も世界有数のジュエリー生産国であり、輸出国になっている。大手高級宝飾品、時計メーカーであるブルガリも、この持久力に貢献しているメーカーのひとつだ。同社はイタリアの歴史に敬意を表しつつ、未来にも目を向けている。

ブルガリ ファクトリー コラージュ
[提供: ブルガリ]

イタリア・ヴァレンツァに設立されたブルガリの新ファクトリー (英文記事へリンク) は、伝統と最新鋭テクノロジーのユニークな融合を明確に表現している。ヴァレンツァは、1817 年頃に金細工職人のフランチェスコ・カラモーラが工房を構えるまでは、活気のない小さな村だった。カラモーラは、ヴァレンツァに自身の技巧を持ち込んで共有し、世界有数の「黄金の都市」(英文記事へリンク) へと変貌させた。ブルガリがその新施設用に厳選した場所は、かつてカラモーラの工房があり、「カッシーナ・デロリフィチエ(金細工職人の農場) 」と呼ばれている農園の母屋だ。

ブルガリは、ボローニャを拠点とする建築事務所 Open Project の協力を得てカッシーナ・デロリフィチェの修復と改築、拡張を行い、その事業内容すべてを取り込んだ現代的かつアヴァンギャルドな施設として蘇らせた。光沢のあるガラスとスチール製の構造物が管理事務と歓待用の施設を形成しており、ファクトリー全体は 600 平米の内庭を有する 3 階建てビルで構成されている。施設全体は 14,000 平米もあるヨーロッパ最大のジュエリー工房となっており、LEED ゴールド認証を取得したサステナブルな工房でもある。

ブルガリ ファクトリー エクステリア
ラスとスチール製の構造体が施設の管理事務所の入口として機能する [提供: ブルガリ]

工房を機能的なものとするにあたり、Open Project は数々の独特な要素を検討する必要があった。ロケーションの文化的重要性を保ち、ブルガリの高い美的水準の要求に応えることに加え、高級宝飾品の生産における技術要件と厳格なセキュリティの必要性にも対処しなければならない。Open Project の共同経営者であるルカ・ドラーゴ氏は「ここはジュエリーを製造する工房ですから、当然セキュリティは非常に重要です」と話す。

最優先されたのは、施設内と輸送中の両方で金やその他の高価な貴重な材料を守ること、そしてブルガリの企業秘密を保護することだった。Open Project は、ブルガリのセキュリティ コンサルタントと緊密に連携し、実現可能なソリューションを生み出した。このプロジェクトにおける、数々のコラボレーティブなプロセスのひとつだ。「最終的に、通行証が必要となる複数のレイヤーを持つ、タマネギのようなビルをデザインしました」と、ドラーゴ氏。「金やその他の価値あるものを奪うためのビルの攻撃に必要となる時間を、建築設計とシステムにより、できるだけ延ばそうと努めました」。

ドラーゴ氏は、Wallpaper 誌にいたずらっぽく次のように語っている。「金を手に入れるには、数々のシステムやアラームをくぐり抜ける必要があります。ジャックポットのように簡単ではありません。映画「ミニミニ大作戦」が参考になりましたね」。

ビルを覆うスキンがタマネギの最初の層であり、幾つかの役割を果たしている。アルミ製パネルで構成されたこのシステムは、建物の外壁から約 1.8 mメートルのところに取り付けられ、「建物内部を覗き込むことができないようにする、視覚上の最初の防衛線」として機能すると、ドラーゴ氏。

だが、このアルミ製のスキンは単なる目隠し以上の役割を果たし、この建造物を珠玉の建築作品にしている。アルミ製パネルは、日中の太陽の動きに合わせて変化する、電解着色処理でコーティングされている。パネルの質感はさまざまに変化し、穴のサイズや配置が変わることで外からの視界を遮る目隠しとなるが、驚くべきことに、このスクリーンは内側からの視界を妨げない。ブルガリは「金属製の膜が光のカーテンへと変化する」と評し、職人は周辺環境の田園地帯へ溶け込んだように感じられる。

施設内は厳重に警備されており、就業時間中、社員はずっと構内に留まるよう指示されている。ここでも Open Project は建物の建築様式を用いて、この問題に対処した。作業空間に自然光を取り込むだけでなく、社員が日中に休憩を取るためのギャザリング スペースとしても機能する、巨大な屋内型の中庭をファクトリーの建物内にデザインしたのだ。

ブルガリ ファクトリー ジュエリー
[提供: ブルガリ]

Open Project は、セキュリティ上の難問に加えて、施設の厳格な技術的要件のための、学際的なデザイン プロセスを作成する必要もあった。「製造プロセスを最適化しようと努めました。しかもそれを、あらかじめ組み立てられた構造要素と、貴金属の加工に必要な機械や電気、水力、特殊設備の各システムにより課せられる制約内で調整する必要がありました」と、ドラーゴ氏は話す。

ファクトリーは、製品ファミリーごとにグループ分けされた、アイランド (島)と呼ばれる 18 の工房から構成される。各アイランドには、ジュエリー職人や石留め職人、研磨職人など、特定の製品の製作に必要な職人が配されている。このレイアウトは、200 名からなるジュエリー職人のワークステーションを構成しており、それぞれ独自のプロセス システムにつながっている。この複雑な配置は、プロジェクトにとって極めて重要な、機械、電気、配管の設備 (MEP) エンジニアとの効率的な連携を実現している。

ブルガリ ファクトリー オフィス
ブルガリ ファクトリーの屋内型中庭 (左)、周囲から施設を眺めた様子 [提供: ブルガリ]

Open Project は、そのコラボレーティブなデザイン アプローチに、BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) と Autodesk ソフトウェアを活用した。Open Project の BIM マネージャーであるジャコモ・ベルゴンゾーニ氏は「スケジュールが非常にタイトだったので、建築、構造、MEP それぞれのチームの各エンジニアが、同じモデルを同時に扱う必要がありました」と話す。「Autodesk の建築設計、公共インフラ、建築向け BIM ツールキットである AEC Collection を使って Revit モデルを開発しました。結果的に、このモデルが非常に重要なものとなりました。特に、こうしたプロジェクトでは極めて複雑なものになる MEP システムでは重要でした。

ブルガリは建築設計、セキュリティ、製造プロセスにおける最新のテクノロジーを使用することで、ラグジュアリー ブランドに相応しいファクトリーを作り上げた。ヴァレンツァの敷地内に併設された、前途有望なジュエリー職人を養成する新アカデミーと共に、ブルガリは、イタリアン ジュエリー製作の伝統におけるその地盤を固めている。今後は、建築的にも美しく、快適な職場でもある、この新ファクトリーで。

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