カスタマイズ チョコを削り出す Candy Mechanics の加工モジュール

by Kimberly Holland
- 2017年4月4日
カスタマイズ チョコ
[提供: Candy Mechanics]

「己を知り、それを世界に語れ」。それがロンドンのキングストン大学におけるデザイン プロジェクトの一環として、サム・パート氏へ与えられた課題だった。熟考した彼がたどりついた妥当な答えは「自分は好ましい (likeable) 人物だ」というものだったが、メモには間違って「舐めたくなるような (lickable) 人物」と書き留めていた。この間違いが、結果として素晴らしいインスピレーションをもたらすことになる。

プロジェクトを完成させるため、パートは Lolpop なるものを作り出した。これは、極めて詳細な人間の顔の 3D レンダリングを、棒付きチョコレートで再現したものだ。このデザインはのちに、新進クリエイターの作品を表彰する著名なコンペ D&AD New Blood Award へノミネートされる。

最初の Lolpop から 6 カ月後、パート氏はベン・レッドフォード氏と Candy Mechanics を共同設立したのだが、その時点では Lolpops の世界進出への挑戦は始まったばかりだった。授業でのプロジェクトを実社会の需要を満たすものへとスケールアップするには、創意工夫と幾つかのユニークなツールが必要だった。

試行錯誤 ― 重ねた失敗
Candy Mechanics は、まずは 3D プリントに取り組んだ。「3D プリントのクオリティは素晴らしく、見事なモールドを作成できました」と、パート氏。「ただし 3D プリントの作成と複製にかかる時間の長さ、使用していたマシンの失敗率の高さは、商業化の難しさを意味していました」。

そこで 2 人はドローイングボードに戻り、真空成型による頭/顔のモールドを検討した。このプロセスでは、まず対象物にエッチング処理を施し、その後で薄いプラスチック板を真空吸着させる。こうして元型と同じ形状のモールドが出来上がり、そこにチョコレートを流し込むと、チョコレートは 3D レンダリングされた形状に固まる。この方法はある程度上手くいったが、彼らはまだ満足できなかった。

チームが次に目を付けたデバイスは、以外にもCNC (コンピューター数値制御) マシンだった。CNC は木材や金属といった素材に使うが多い。パート氏は、これがチョコレートに使えないかと考えたのだ。木材同様、チョコレートも適切に扱いさえすれば、彫刻に適した柔らかさとその形状を維持する固さを備えている。

Candy Mechanics のコンフェクショナリー ディレクターで、イギリスの製菓会社 Green & Blacks テスター長だったウィル・リー氏は「チョコレートは扱いの難しい製品です」と話す。「(開始当初の) 検討事項に、ドリルのスピードがありました。回転速度が速すぎると、チョコが溶けてしまうのです。テスト段階では、いろいろなものがチョコまみれになっていましたね」。

Candy Carve の登場
CNC マシンを用いたフライス加工では、コンピューターにより精密ドリルが 3 方向 (上、下、横) のいずれかに動かされ、その動きにより対象が削り出される。この場合、それがチョコレートだ。Candy Mechanics のチョコレート制作には、理論上はどんな CNC ミルも 使用できる、とパート氏は説明する。「ただし私たちのプロセスは、特定の種類のツールと注意深く選択された刃先形状を使う、チョコレート向けに最適化されたものです」と、パート氏。検証を重ねることが、適切な設定へとつながったのだ。カスタマイズされたこのマシンには、「Candy Carve (チョコレート彫刻)」の名が授けられた。

タイムラプス カスタマイズ チョコ candy mechanics
[提供: Candy Mechanics]

「大量生産に対するベストな方法として CNC ミルを選択したのは、CNC が (3D プリントと比べると) わずかな時間で 3D プリントと同レベルのディテールを生成でき、信頼性が高いからです」と、パート氏。「ごくわずかなディテールを犠牲にすることが、完全カスタマイズの製品を世界にもたらす、拡張性のあるプロセスを生み出すことにつながりました」。

製造のニーズに最適なマシンを選び出す一方、パート氏と彼のチームは、カスタマーの顔とデザインを作品へ変換する、コンピューター化されたシステムも考案する必要があった。彼らは、様々な市販のソフトウェアを試すことからスタートした。「この組み合わせ方が、プロセスを独特なものにしています」と、パート氏。

彼らは Autodesk の Forge API プラットフォームと Autodesk ReMake (現 ReCap) を活用し、カスタムのソフトウェアを追加した。このソフトウェアを使えば、顧客は自分のスマートフォンから Candy Carve に短いビデオをアップロードできる。このビデオから、マシンのソフトウェアが彫刻に適した顧客の顔の 3D イメージを作成する。「Lolpops が、スマートフォンから直接作成できる、世界初のカスタマイズ可能な消費財製品になります。非常に素晴らしい機能です」と、パート氏。

オーダーメイドのスイーツ
Candy Mechanics は、その製品のカスタマイズ性から、スクリーン印刷のチョコレートや型打ちのチョコレート トリュフなど、他の技術を用いた製菓に立ちはだかる存在となっている。2015 年、イギリスの人気デパート チェーンであるセルフリッジズで Lolpops の少量の、とはいえかなりの成功を収めたテスト販売をスタートさせて以来、Candy Mechanics は大幅な成長を遂げている。

カスタマイズ チョコ lolpops キャンディ
[提供: Candy Mechanics]

昨年、Candy Mechanics はそれに続く製品 Candy Cards を発表した。顧客は、オンライン アプリを使用して独自のデザインを作成する。Candy Carve マシンがそのデザインを彫刻し、幸運な受取人へ、世界にひとつだけの食べられる芸術作品が、送られる。Candy Mechanics は、製品ラインアップにダークチョコレートのオプションも追加する予定だ。また、顧客が Lolpops に派手さを加えたい場合、3D プリントされたチョコレートの顔に食用の金箔スプレーをかけることもできる。

Candy Mechanicsは、消費者側の使い勝手と製造側の信頼性の高い製造プロセスにより、双方に満足のいく製品を実現している。「3D スキャニングと製品カスタマイゼーションを、年齢や技術能力に関係なく、誰もが楽しめる愉快な方法で利用可能なものにできればと考えています」と、パート氏。「チョコレートで自分の顔を再現するのは、最高に楽しいですよ」。

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