米連邦議会議事堂のドーム修復で交わり合う歴史とデザイン

by Lara Caldwell
- 2017年2月28日
米連邦議会議事堂 修復
米連邦議会議事堂の西側正面 [提供: Architect of the Capitol]

ワシントン D.C. にある米連邦議会議事堂は、その建設から 150 年にわたり、吹雪やハリケーン、容赦ない日照り、2011 年の地震、そして南北戦争をも耐え抜いてきた。

米連邦議会議事堂はナショナル・モール国立公園の東端に建っており、3.2 km 離れたもう一端にワシントン記念塔がある。ここはまた、米連邦議会と上院が招集される場所でもある。アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定された、この新古典主義建築様式の議事堂で非常に象徴的なのがドームだ。だが、このドームは 2013 年の時点で鉄製部分が錆びて水漏れし、議事堂のロタンダ (大広間) に雨漏りするようになっていた。議事堂ドームの大規模改修は、長年の懸案事項だった。

米連邦議会議事堂 修復 ブルフィンチ
チャールズ・ブルフィンチ設計の米連邦議会議事堂ドーム (ウィリアム・H・バートレット画、1840 年頃) [提供: Architect of the Capitol]

議事堂建築監を務めるスティーヴン・T・エアーズ氏は、2 年の工期を経て 2016 年 10 月にドームの最後のフィニアル (頂華) の改修を行った。これは、ドナルド・トランプのアメリカ合衆国大統領就任式が執り行われた 2017 年 1 月 20 日よりずっと前のことだ。このプロジェクトは、エンジニアやコンサバター (修復家)、画家、建築家による、長年にわたる熱心な計画と改修が積み重ねられたものだった。

米連邦議会議事堂は、その建造当初から災難に見舞われており、1823 年のドームの完成以前、1812 年の米英戦争で一部を焼失している。3 代目議事堂建築監チャールズ・ブルフィンチにより設計された初期の議事堂は、現在のドームに比べてずっと小さく低い構造だった。木と銅を用いたドームの上張りは、時が経つにつれ、拡張する議事堂のサイズに釣り合わないものになる。また火災の危険もあった。

1855 年から 1866 年までの間に、政府は新たなドームを再建した。元のドームの 3 倍の高さで、4,500 t 近くもの鋳鉄が使用された。フィラデルフィアの建築家トーマス・U・ウォルター氏 (4 代目議事堂建築監) が設計を行い、米陸軍工兵司令部の建設監督指揮の主任であったモンゴメリー・メグズ氏が建設を監督。

ウォルター氏とメグズ氏が議事堂のドーム建設を進めていく過程には、初期には両者間の内輪揉めもあり、より頑丈な二重ドームの考案を含むデザイン変更もあった。パリのパンテオンなど、ヨーロッパの優れたドームから着想を得たウォルター氏は、自身による初期のデザインを変更し、ドームの高さを 92 m から 85 m へと縮小して、より大きなフリーダム像トロス (円形建造物) を配置できるようにした。南北戦争中も建設は継続されたが、それはエイブラハム・リンカーンが国家存続の象徴として作業続行を望んだからだった。

最後にドームに総合的な改修が施されたのは 1960 年。破損や亀裂のある鋳鉄板の溶接などが行われたが、これが構造を脆弱化させた。現在の米連邦議会議事堂プロジェクト リーダーで建設管理者のジョー・アブリアティス氏によると、100 年物の古い鋳鉄の安全性を確保する上では、溶接は正しいアプローチとは言えないものだった。「あの経験から、鋳鉄は溶接してはならないと学びました。溶接により鋳鉄の硬度が高まり、非常に砕けやすくなって亀裂を悪化させるのです」と、アブリアティス氏。「1959 年から 1960 年にかけて行われた溶接のほとんどに再び亀裂が入り、建物内への雨漏りを許してしまいました」。

より優れた、持続性の高い解決策を研究するため、エンジニアリング チームはアメリカ国立標準技術研究所 (NIST と提携して、改修に効果的なろう付け処置を検討した。まずは磁粉探傷試験を用いて鋳鉄の構造的脆弱性を診断。その後、ドーム プロジェクト チームは Lock-N-Stitch Inc. に補修を依頼した。

Lock-N-Stitch の技術は、金属棒を縫い針のように使用して亀裂を補修するものだ。ドームには補修を必要とする亀裂が多数あった。正確には、その全長は 203 m にもなった。「これは、溶接が不可能な船舶や機械の大型エンジンの修復に使用され成功を収めている最新のプロセスです」と、アブリアティス氏。「亀裂の長さに合わせて一連のダブルフック ピンを突き通し、打ち付けてはめ込みます。ピンは隣り合うピンと 10% ほど重なるようにし、亀裂をふさいで固定して、補修部分が水漏れしないようにします」。

「次に、鋳鉄に 18 個の穴を開け、さらなる強度が得られるよう“ロック”を鋳鉄に叩き込むための空洞を作成します」と、アブリアティス氏は続ける。「最後に、周辺の鋳鉄と表面が滑らかになるよう研磨し、上から塗料を塗ります。このメタルステッチ処理なら、通常であればもとの位置では処理が不可能な数 m に及ぶ亀裂を現場で補修できます。このプロセスは、1 時間で 3.2 cm ほどの金属のステッチを行うことができます」。

米連邦議会議事堂 修復 足場
内部円蓋、アメリカ合衆国議会議事堂ドーム内部の「ジョージ・ワシントンの神格化」(左) とドームの足場の様子 (右) [提供: Lara Caldwell]

203 m にわたり 1,000 を超える亀裂へ対処する“ロック”や“ステッチ”が鋳鉄板を強化して密閉状態を生み出し、歴史的建造物の材料の劣化スピードを低下させた。天井画と採光構造を持つドーム内部にも改修が行われた (ドーム外部の採光デザインは変更されていない)。コンサバターにより、アメリカの歴史を描いたフリーズとロタンダの頂部、コンスタンティノ・ブルミディのワシントンの神格化 (初代大統領ジョージ・ワシントンが明るい青色の天国へと上っていく様子を描いている) を含む芸術作品が修復された。コンサバターはまた、ドームに影響を及ぼす亀裂がないかどうか、ドーム内部の確認を行った。

壮大な改修により、驚くべき宝ももたらされた。修復チームは、ロタンダのしっくいに残された「アル・ポーツ」という作業員のサイン、鋳型の欄干内に 1860 年代の粘土製の喫煙パイプを発見した。またチームは、ロタンダ内に (Autodesk AutoCAD を使用して設計された) 275 t の足場を設置すると、詳細な塗料分析により、歴史に鑑みても正確なオリジナルのフレスコの色彩を再現した。初期のロタンダの写真はすべてモノクロだったので、オリジナルのフレスコ画の色彩はこれまで判明していなかった。

この改修工事により米連邦議会議事堂のドームは、今後 75 年間にわたって良好な状態を保つことができるだろう。ドームには定期検査が行われ、12~18 年ごとに再コーキング処理が行われる予定だが、近い将来に費用をかけて足場を組む必要はないだろう。米連邦議会議事堂のドームは、独創的な技術、歴史に名高いその過去への視点、関係者の甚大な寄与により、次の世代に対してもその輝きを保ち続けることになる。

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