建築家のコミュニケーション スキル向上でプロジェクト コラボレーションを成功させる 6 ステップ

by Kim O’Connell
- 2016年8月8日

映画では、ビルはまるで魔法で建てられたかのように簡単に完成する。建築家がテーブル ナプキンに図面を走り書きすると、次のカットは落成式でテープ カットが行われていたりする。だが現実世界の建築家にとって、それは単なるエンターテインメントに過ぎない。実際のビルの設計プロセスは、長く、多大な努力を要し、かつ複雑なものだ。建築家やエンジニア、施工会社、クライアントなど多種多様な関係者で構成されたチームが、最初のコンセプトから最終的な実地検証に至るまで、ほぼ恒常的に連携を保つことが必要とされる。

だが、それには障害がある。建築家は、設計段階では非常に時間に追われているため、コミュニケーションの実践力やスキルを磨く余裕が無い場合があるのだ。また、インテグレーテッド プロジェクト デリバリー (IPD) 契約が万全の準備を提供すると考える者もいる。しかし、混乱のなかで何ひとつ、そして誰ひとり迷子にならないようにするためにも、まだまだコミュニケーションと連携が極めて重要だ。

米国全土で住宅、ホスピタリティ、商業プロジェクトを提供するミネアポリスの中規模設計事務所 ESG Architects は、あらゆるステージでコラボレーションを促進している。創立者のマーク・スウェンソン氏 (アメリカ建築家協会フェロー) によると、2007 年~ 2009 年の景気後退で労働力の 2/3 以上を失った FAIA は、現在は当時よりも多くの社員を擁し (現在 106 名)、生産性は 35% 以上も向上している。

建築家のコミュニケション スキル Park 205 ESG Architects
イリノイ州シカゴの Park 205 [提供: ESG Architects]

それを実現できた理由は、コラボレーションとフィードバックに対する適切なツールと優れたシステムを手に入れたことだ。この記事では統括責任者のデイヴ・エグバート氏 (アメリカ建築家協会会員) と、共同経営者で建築デザイナーのマイク・エンジェル氏 (アメリカ建築家協会アソシエート)、スウェンソン氏が、コミュニケーション スキルを構築して関係者とのプロジェクト プランを強力なものにする、建築家への 6 つのアドバイスを伝授する。

1. 形式ばらずにスタート
効果的なコミュニケーションは、肩肘を張らない対話から始まる。友好的な電話での会話や短いミーティング、テーブル ナプキン (あるいはiPad) 上のちょっとしたスケッチなど、それが何であるにしろ、コラボレーションは会話から始まる。「見込みのある新プロジェクトに関しては、かなり略式のプロセスを開始して実行可能性を検証するため、話し合いの機会を持つこともあります」と、スウェンソン氏。「これが長い期間、場合によっては 1 年、2 年とかかることもあります」。

新規クライアントの場合は、親密な関係を構築するのに、直接のやりとりがかなり必要になる。「新しい関係で一番大切なのは、同じ部屋にいる時間を増やし、一緒に仕事をしたいと思える相手に相応しいつながりと信頼を築くことです」と、スウェンソン氏。

2. コミュニケーションの中心人物を決める
プロジェクトが発進すると、ESGでは主任とプロジェクト マネージャーを 1 名ずつと複数の建築家、デザイナー、コンサルタントからなるチームが結成される。そのうちの 1 名 (通常は管理建築士が担当する) は、コミュニケーションの中心人物に任命され、アップデートやフィードバック、告知を関係者に伝達する役割を果たす。

建築家のコミュニケション スキル Lodge Kohler
ウィスコンシン州グリーンベイ、ランボーフィールドの Lodge Kohler [提供: ESG Architects]

「管理建築士が同時に担当するのは 1 ~ 2 件のプロジェクトのみで す」と、スウェンソン氏。「多数のプロジェクトを扱わないので、チーム メンバーとコンサルタントの間の作業を調整することに集中できます。我々の管理建築士の多くは株主でもあり、ほとんどのプロジェクト マネージャーの先輩です。有能な管理建築士は、[Autodesk] Revit のノウハウを持ち、法規制の知識があり、いかにビルディングを詳述するべきか心得ています」。

3. プロジェクトのミッション、共通の目標、予定表、タスクの合意を確認する
ESG は、設計プロセスの初期においてさまざまな関係者を幅広く取り込む、コンサルタントとの協調的な取り組みを強調する。IPD 契約はプロジェクトを成文化するひとつの手法だが、書面による事前契約が有無に関わらず、ESG チームはプロジェクトのミッションと目標について、全当事者の理解と合意を確認するようにしている。

「プロジェクト ミッションについての意見の一致を図るため、デベロッパーとゼネコンを引き合わせる会合を頻繁に開きます」。

4. 定例会議を開き、議事録を作成する
チームが結成され、プロジェクトがスタートすると、ESG では定例 (大抵は週次) 会議を開催する。いずれかの参加者が議事録を取り、発言と合意の内容に誤解がないよう配布する。

建築家のコミュニケション スキル Latitude 45 ESG Architects
ミネソタ州ミネアポリスの Latitude 45 [提供: ESG Architects]

「ほぼ全てのプロジェクトで、週 1 回のデザインチーム ミーティングを行っています」と、スウェンソン氏。「これは、全員が毎週一堂に会し取り組むための実践的な戦略です。初めのうちは実際に顔を合わせるミーティングを何度も行う必要がありますが、時間が経てば GoToMeeting を使ったビデオ会議でもうまく進められるようになります。オフィスで 1 日か 2 日かけて行う シャレット のために、飛行機で毎月のようにここを訪れるクライアントもいます。特別な議題があれば、いつでもミーティングを追加できます」。

5. 厳密な締切を設定する
定例会議には定期課題がつきものだ。「何をいつ行うべきかの概要を説明するクリティカルパス チャートを作成し、これをゼネコンのアウトラインと相互参照します」と、スウェンソン氏は話す。全員が最初から参加し、任務が定期的かつ継続的に提供される場合、プロジェクトが決められたスケジュールと予算どおりに進む可能性は、より高くなる。

「設計決定がまだ流動的な場合」と、エグバート氏。「締切を設け、期限までに結論を出す必要があると伝えます。設計決定は、それ以外のあらゆる部分に影響を与えますから、滞りなく進める必要があるのです」。

建築家のコミュニケション スキル Hyatt Regency ESG Architects
オレゴン州ポートランドのオレゴン州ポートランドの Hyatt Regency Convention Center Hotel [提供: ESG Architects]

6. テクノロジーを活用する
BIM テクノロジーは、まさに革命的ともいえる影響を ESG に与えた。特に 5 年間をかけた、AutoCAD から Revit への移行による効果は大きい。BIM を使用することにより、ESG は、より迅速に反復を行い、より優れたビジュアライゼーションを作成できるようになった。「コミュニケーションと変更作成がずっと効率的になりました」と、エグバート氏。「マルチビューで確認したり、同じ情報をさまざまなグラフィック手法でプリントしたりできます。これにより設計の修正方法が一変しました。もう、一箇所だけに修正を加えるだけでいいのです」。

ESG は、従来の手法を完全に捨ててしまうのとはほど遠く、スウェンソン氏は毎日手書きで製図しているが、伝統とテクノロジーを組み合わせる方法を絶えず模索している。特にマイク・エンジェル氏は、さまざまなスケッチ/デザイン プログラム (FormIt 360 など) を Revit に組み合わせて活用し、ワークフローをうまく管理する方法を幾つかのクラス (英語) で教えている。

エンジェル氏にとって、テクノロジーは単にコミュニケーションに役立つだけでなく、関係を構築して維持する手助けとなるものだ。「最終的に、それが信頼につながるのです。クライアントにこれまでの実績を理解してもらえますから」。

だが、その信頼が揺らぐことのないよう、コミュニケーションや協調、BIM を組み合わせて安全装置として機能させ、プロジェクトが確実に問題なく進むようにする、とスウェンソン氏は話す。「BIM が、不一致とエラーの可能性を大幅な低下させています」。

つまり建築家は今後、まさに映画のように嬉々としてテープ カットの日を迎えることができるようになるかもしれない、ということだ。

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