低コストで頑丈な 3D プリント製コンクリート造住宅を NPO が拡大している方法

by Susan Kuchinskas
- 2018年11月26日
New Story と ICON による3D プリント製コンクリート造住宅
New Story と ICON のパートナーシップにより生まれた 32.5 平米の 3D プリント製コンクリート造住宅は 4,000 ドルのコストで 24 時間以内に建設可能 [提供: New Story]

1985 年、国連は 10 月の第 1 月曜日を世界ハビタット (人間居住計画) デーに制定。世界の住宅危機に対する取り組みについて、今年はバルセロナ、パリ、ジャカルタ、ニューヨークなど 30 カ所以上の都市で意見交換の場が持たれた。国連は不適切な住宅を人権問題と定義しており、そのサステナブルな開発目標に、貧困の中で生活する人の数を 2030 年までに少なくとも半減することを盛り込んでいる。

国連の概算 (英文 PDF) では、世界の 8 人に 1 人が不適切な住宅に暮らしている。この「不適切」とは、上下水道が利用できない、あるいは十分な空間や安全性を有していないことを示しており、その中には政変や自然災害に現在も喘ぐ国々からの増加する移民や難民も含まれる。

苛酷な状況で生活する世界各地の家庭に向けた住宅を建設する NPO、New Story は 3D プリント製コンクリート造住宅の活用により、その活動の拡大を目指している。New Story 共同設立者兼 COO のアレクサンドリア・ラフチ氏は「品質に妥協せず、素早く、よりコスト効率に優れた方法で建設する必要があります」と述べる。「新たなイノベーションやテクノロジー、つまり手法の理論的枠組みを変える何かがなければ、俊敏さや時間短縮、低価格の実現は不可能です」。

2010 年のハイチ地震後のテント キャンプ
2010 年のハイチ地震後のテント キャンプ

別の方法で実行

New Story は 2015 年、ハイチのレヴェックで活動を開始した。その当時、人々はまだ、ずたずたになった防水シートの下で暮らしていた。この防水シートは 2010 年の地震後、数カ月間の仮住居として提供されたものだ。

「住宅建設と家族支援という、現場での取り組みを向上できるはずだと考えました」と、ラフチ氏。「NPO の活動全般でも、かなりの部分を向上可能だと感じました」。

New Story は現地のパートナーと連携し、シンプルなコンクリートブロックとしっくいを使用して、限られた数ながら、波状のアルミ製屋根と鍵付きの木製扉、よろい窓を備えた住宅を建設。現地の労働力と材料で建設された住宅には、居住者のニーズと要望に応じて 3 – 4 部屋が設けられていた。

New Story の支援活動 (寄付の提供者には入居予定家族の映像が紹介された) により、レヴェックは 151 棟の住宅からなるコミュニティへと発展した。それ以降、New Story は、ハイチ、エルサルバドル、メキシコ、ボリビアの 14 のコミュニティで 1,113 棟の住宅を建設し、6,000 人以上の人々に住居を提供している。エルサルバドル・アワチャパンで行われた最近のプロジェクトでは、新しく安全な 80 棟の住宅を提供。このプロジェクトの建設期間は 10 カ月、1 棟あたりのコストは約 6,500 ドル (約 74 万円弱) だった。

コンクリートでプリントされた住宅 vulcan 3d プリンター
Vulcan コンクリートを活用している状況のレンダリング画像 [提供: New Story]

多大なニーズに応える新たなテクノロジー

だが New Story は、より俊敏な行動を望んでいる。モジュラーやプレファブリケーションなどの建築工法の選択肢を 1 年にわたって研究した結果、ラフチ氏が見出したソリューションが、3D プリントによるコンクリート製住宅だ。その後、テック界のコネクションにより、New Story とコンクリート用 3D プリンターを提供する数少ない企業、ICON の引き合わせが行われた。

New Story は ICON と連携し、ICON の Vulcan コンクリート プリンターを検証。3D プリントによるコンクリート造の建物では、流し込んだコンクリートを硬化させるために混合剤が使われることが多いが、ICON はセメント、砂、水などのベーシックな材料を使った、独自のモルタルの配合を開発。「ハイチの僻地での活動で、特殊な材料が届くのを待つわけにはいきません」と、ラフチ氏。

ICON は今年、同社の拠点であるオースティンに、概念実証のための住宅を完成させた。この 32.5 平米の構造物には、リビング、キッチン、寝室、バスルームとポーチが含まれる。

さまざまな条件のもとでも実行できるよう、デバイスの調整が行われている。例えばオースティンでのプリント作業中には、雨によって何度もポンプが詰まった。現在 ICON は、人里離れた場所へのトラックでの運搬、電力供給が不安定で浄水が不足する状況での運転にも耐え得る、次世代の Vulcan の制作に取り組んでおり、新バージョンの完成を数カ月以内と見込んでいる。

迅速、低コスト、そして頑丈

コンクリート 3D プリントは、建設分野における世界的なトレンドとなっている。複雑な形状やこれまでにない構造を可能にする、この技術の自由度にデザイナーたちは強い関心を示す。Logan Architecture はオースティンの概念実証住宅のデザインに Autodesk Revit を、構造工学技術者たちは AutoCAD を使用した。

Logan Architecture 設立者のアンドリュー・ローガン氏によると、実務上のデザインの制約は、従来のコンクリート造のビルに類似している。ローガン氏は、ICON のエンジニアリング チームによる壁厚の仕様を反映する Revit ファミリを構築。その後チームは AutoCAD を使用して、壁の最終的な内部構造を作成した。

コンクリートプリント製の住宅 New Story
New Story による低価格住宅には、リビング、キッチン、寝室、バスルーム、ポーチが含まれる [提供: New Story]

ローガン氏はオースティンの住宅に曲面状の壁を追加して、3D プリントを含む総合的な建設技法の可能性も示した。ICON は社内ソフトウェア ツールを使用して AutoCAD ファイルを G-code に変換。これはマシンに動作の指示を与えるプログラミング言語だ。

ICON 共同設立者兼 CEO のジェイソン・バラード氏は「3D プリンターによる住宅デザインで興味深いのは、従来のアプローチでは非常に困難かつ高価で不可能だったことに、こうした全く新しい可能性が開かれることです」と話す。「曲線やスロープ、有機的な、あるいは生物的な形態などの形状が可能になりました。高価でもなく、むしろかなりシンプルになりました」。

このテクノロジーにより、New Story は各住宅を 24 時間以内に 4,000 ドル (約 45 万円) で建設可能。プリンターはデザインをそのままプリント アウトするため、ヒューマン エラーや手抜き工事を排除できる。

プリンター自体は高価だが、材料は低価格で容易に入手可能であり、労務費はずっと低い。その上、プリント製住宅は、その土地のニーズに合わせて簡単に修正や変更が可能だ。New Story はコミュニティデザイン プロセスを用いて入居予定者からの意見を求めている。デザイナーは CAD ベースのデザインを素早く修正でき、建設管理者はその後プリンターのメモリーに読み込まれた種類豊富なデザインから選択ができる、というアイデアだ。

公営住宅向けの新たな計画

New Story は新世代の Vulcan のコストをカバーするため、60 万ドル ((約 6,800 万円)) を集める必要がある。この資金は、研究開発の資金供給を希望する大口の寄付で集められることになっている。もうひとつの寄付への訴えは個人にも向けられ、こちらの資金は住宅のための労務と材料費に全て使われる。この 60 万ドルでまた新たなコミュニティを建設できる一方で、それによりもたらされる利益は、それぞれのプリント製住宅で節約できると予測されている 2,500 ドル (約 28 万円) 以上のものになる。

コンクリート プリント製住宅 logan architecture
テキサス州オースティンに概念実証住宅を建設した New Story は、2019 年の次世代バージョン Vulcan プリンターの制作、中南米での 3D プリントによるコミュニティ建設のための資金を調達中 [提供: Logan Architecture]

New Story は、このモデルと 3D プリントのプロセスを、他の慈善団体が導入することも期待しており、このシステムが他の NPO 施工者も再現可能なものになるよう取り組んでいる。モバイル アプリを使った、住宅に住む人々からのデータ収集、僻地でのプロジェクトへの建設マネジメントや品質管理の提供、さらにはプリント可能な住宅デザインのポートフォリオも検討中だ。

「住宅建築の多くが停滞しています」と、ラフチ氏。「過去 30 年にわたって、改善や変更、住宅が果たす機能への洞察、家族の心情への配慮がほとんどない、全く同じ住宅が建設され続けてきました」。

New Story は現在、2019 年第 1 四半期に世界初の 3D プリント製コミュニティの建設を開始するべく、中南米で用地と現地パートナーを探している。New Story が公営住宅施工のエコシステムをより優れた、効率的なものにできれば、「私たち人間の生活にも、わずかながらも影響を与えられるかもしれません」と、ラフチ氏。

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