つながるデザイン、つながる製造業で地球と収益を救う

by Stephen Hooper
- 2018年2月27日
つながる 製造業

本記事はオートデスク サステナビリティ部門の上級副社長、ライネル・キャメロンが共同執筆を行ったものです。

メーカーであれば、時の移り変わりの速さは十分承知しているだろう。そうしたディスラプションが、消費者の需要や技術の進歩、労働力の推移などを受けて、さらに加速していることも把握しているはずだ。では、デザインと製造のプロセスをつなげることによる、経済と環境の両面における潜在的影響についても検討してきただろうか?

現在の製造業に同時発生しているさまざまなトレンドは、混乱にも好機にも成り得る。この変化をメーカーが最大限に活用するには、生産・納入手法を再検討することが必要だ。こうしたディスラプションを適切に活用することで、ビジネスと環境の両方に好影響がもたらされる。そのためには、次の 3 つの領域での取り組みが必要だ。

1. メーカーは、より多くのモノを作る必要がある
世界の人口は、2050 年までに実に 100 億人に到達すると予想されており、その半数が中産階級となる。これは、収入に余裕を持つ人々が増加し、都会の生活様式に合わせて、より多くの製品を求めるようになるということだ。この需要に応え続けることは、生成される膨大なユーザー データ (2020 年までに 600 ゼタバイトに達すると予測されている) の管理と同じくらい難題だ。

crowded city street

2. メーカーはテクノロジーを活用して、より良いモノを作る必要がある
ハードウェアとソフトウェアのテクノロジーは、ますます高度なものとなっている。AI と機械学習の進歩により、プロダクト デザイナーは大量のカスタマー データを活用して、より迅速に新技術を導入できる。生産においては、インダストリアル IoT と新しい自動化技術により、つながるハードウェアが増加している。こうした先進技術を組み合わせることで、より高いレベルの製品のクオリティやバラエティ、パフォーマンスが得られるようになっている。

3. メーカーは、地球に与える悪影響を低減しつつモノを作る必要がある
米国における製造業界の二酸化炭素排出量は年間 13 億 t で、これは国内総排出量の約 1/5 を占める。地球規模でも、業界が占める割合はほぼ同じだ。世界の 83 億 t のプラスチックのうち 60% は、埋め立てゴミとなるか、自然環境に投棄されている。現在、アメリカ合衆国環境保護庁の全国優先地域順位表には、1,345 のスーパーファンド サイト (有害物質による汚染除去のための信託基金の対象となる土地) が掲載されている。過去 100 年間の市場拡大と、その変化への対応は、予想しなかった結果をもたらした。

より多く、より良いモノを作り、それが与える悪影響をできるだけ抑えるため、メーカーは自身が生成するデータを使用して変化する顧客のニーズを予測し、その変化に基づいて行動して、デザイン プロセスと製造プロセスの間をさらに緊密につなぐ必要があるだろう。

今後の機会

デザインと製造のプロセスをつなぐことは重要だ。それまで別々に運用されていたものを結び付け、隠された価値を明らかにできるからだ。持続可能なデザインとエンジニアリングの実践者たちは、製品の影響を初期段階やデザイン プロセスで頻繁に検討し、評価を行うシステムの重要性を力説する。判断とつながりのシステムの理論的な根拠は、プロセス全体から思いもよらないような隠された機会を見出し、法外な費用がかかるものになる前に、こうした機会をフル活用する点にある。判断システムを促進する最良の方法は、システムの全ての部分を理解し、デザインから生産までのプロセスの全工程から得られるデータをつなぐことだ。

例えば生産プロセスをデザインにつなげ、ハイブリッド積層造形や切削プロセスなど高度な製造技術に関与することで、つながることがなければ検討されなかったであろう、潜在的なデザインの選択肢や制約が明らかになるかもしれない。また機械学習も、こうしたプロセスの連結に利用できる。ソフトウェアは製造データを使用し、部品の持続可能性の最大化、材料選択における法規制の順守の確保、生産コストの管理といった、複雑なデザイン目標や妥協点を最適化する新しいデザインを生成できる。

エアバス バイオニック パーティション デザイン オプション
エアバスはジェネレーティブ デザインを使用して、特定のデザイン目標に基づく無数のデザイン オプションの評価を行った [提供: Airbus]

エンド トゥ エンドのプロセスをつないだ初期の例として、旅客機用の軽量な客室パーティションを開発したエアバスのバイオニック デザインがある。エアバスは、データとジェネレーティブ デザインによる機械学習で製造とデザインをつなぎ、デザインの目標と制約を検討して無数のデザイン オプションを生成するプロセスにより、パーティションの重量を軽減できた。構造的な完全性と安全性を確保しながら軽量化を目指し、10,000 を超えるデザイン オプションを生成。デザイン プロセスの初期段階に製造についても検討することの利点を生かして、最終的にはパーティションの重量を 45% 軽量化することに成功した。燃料費は年間 13 億ドルにも達するため、たとえわずかでも機体を軽量化することが、収益と環境に大きなプラスの効果をもたらす。

エンド トゥ エンドのプロセスをデータでつなぐことにより促進される重要な新興トレンドに、サーキュラリティ (循環性) がある。サーキュラリティとは、サプライ チェーンと資源の流れを製品寿命に結び付けることで、資源を繰り返し「アップサイクル」するという概念だ。原料の回収と処理はコストが高く、物価相場に応じて価格が変動する上、大量のムダを生み出し、地域環境を悪化させる。バージン アルミの採掘と生産だけでも、全世界の温室効果ガス排出量の 1 %を占めている。2018 年までに年間 5,000 万 t に到達すると予測される、ますます増大する電気電子機器廃棄物量と組み合わさると、この問題は決定的なものになる。

先ごろ Apple は、再生可能またはリサイクル可能な材料のみを使用するという公約を発表した。この公約を達成する上で重要なのが、顧客からの製品回収と廃棄対象製品をサプライ チェーンの起点とつなぐことで、そこにロボットが活用されている。Liam と名付けられたこのロボットは、iPhone 1 台をわずか 11 秒で解体できる (年間に 120 万台の iPhone を処理可能)。解体された構成部品は、その後リサイクルされ、新品の iPhone として生まれ変わる。こうすることで、新品の原材料を処理する必要性を緩和可能。こうした機会を識別し、その正当性を確認するには、PLM を解体ロボットやデザイン システムにつなげること同様、データを共有し、その意味を理解することによって、プロセスをエンド トゥ エンドでつなげることが必要だ。Apple は使用と解体から得られた教訓から、耐久性の強化、製品回収までの期間延長、Liam ロボットの解体スピードの向上にも成功している。

今後のワークフローには、エアバスや Apple の例における有望性をはるかに超えるような明るい見通しがある。製造におけるデータの急増と、それに機械学習と AI を組み合わせることで実現する新たなデザインと製造能力により、ボタンひとつを押すだけの製造が可能になるだろう。この「プッシュボタン」製造の実現に重要なのは、ワークフロー全体からの洞察を提供することにある。思いもよらないようなソリューションを発見し、サプライ チェーンとデザイン、製造、製品使用、製品寿命をイノベーティブで高度に最適化された方法でつなぐことだ。エアバスはデザインと製造のプロセスをつなぎ、Apple は廃棄物の流れを材料の流れとつないだ。どちらも、従来のリニアなプロセスでは、あるいは先進技術無しには不可能だった。

行政の影響

テクノロジーは急速に進化しているが、今すぐにプロセスとデータをつなぎ、より良いモノを、より少ない材料で製造するべきなのには、他にも差し迫った理由がある。政府のイニシアチブは、欧州連合のリサイクルと有毒性に関する指令や歴史に残るパリ協定のように、製造による環境への悪影響の低減に取り組むものだ。多くの国が削減対象としてエネルギー供給者と輸送手段を重要視するなか、中国は明確に、製造業に影響を与える資源と省エネ対策を対象としている。

消費者の 3 人に 1 人は、より環境に配慮したブランドの製品の購入を好む。

こうした政府の動向は、家電製品から自動車、家財に至るまで、市場の需要にも影響を与えている。近年の研究によると、消費者の 3 人に 1 人は、より環境に配慮したブランドの製品の購入を好む。またミレニアル世代の 4 人に 3 人は、環境に配慮した選択肢に対して、より多くの金額を支払う。

これには企業も注目し始めている。ウォルマートは先日、製造パートナーと連携し、企業間のプロセスとデータをつなぐことを要件化することで、自社のサプライ チェーンの二酸化炭素排出量を 1 ギガトン削減すると発表した。自動車メーカー各社も競って完全電気化を進めており、車種をゼロから新設計し、プロセス全体にシステム アプローチを応用することが必要となっている。

性能とカスタマイゼーション、製品品質を高め、プロセスを向上させることで競争力を維持し、生き残りが可能となる。また、製造する製品とその手段について正しい判断を行うことにより、人々や環境に与える影響を低減しながら、より多くの製品を実現できるようになる。つながるワークフローを活用し、より優れた、より多くのモノを、より少ない材料で作る機会は、もうそこまで来ているのだ。

Manufacturing Leadership Journal」2018 年 2 月号に、本記事の別バージョンが掲載されています。この記事は、許可を得て引用したものです。

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