コネクトするプロダクト: 冷蔵庫が従来のものでなくなる日

by Andrew Anagnost
- 2015年4月2日
Micke Tong

覚えているだろうか、「あの頃」のことを?

壁に取り付けられたサーモスタットが、小さな文字と温度計の赤い針が付いた、誰も気にとめることのない備品でしかなかったあの頃。

洗濯機のスイッチがダイヤル式で、大きな音を立てるダイヤルを回して洗濯、脱水、すすぎの基本設定を選択するしかなかったあの頃。

冷蔵庫にエキサイティングな新機能を搭載!と謳われた自動製氷機能にワクワクしたあの頃。

old_thermostat時が経ち、デザインの進化した現在では、これらはとてもベーシックな機器に思えるが、デビュー当時は相当な注目を浴びた (そして現在でも不可欠のツールとして多くの家庭で使用されている)。しかし今、サーモスタットや洗濯機、冷蔵庫に、新たな革新のゴールデン・タイムが訪れようとしている。Wi-Fi アクセスなど、まさに21世紀を感じさせる機能が登場し、急成長中のモノのインターネット (IoT) カテゴリーに正面から参入しようとしているのだ。

新時代のサーモスタットは、ユーザーとその嗜好に関する情報を収集できる。ユーザーが在宅でないことを感知し、温度を自動的に調節。さらにはエネルギー効率を考慮した判断を行って、ユーザーの節約に貢献する。どうやら小さな赤い針に勝ち目はなさそうだ。

洗濯機の操作パネルに用意されたオプションの数にも驚かされるだろう。Wi-Fi 対応の洗濯機は、旧来のブザーの代わりにユーザーのスマートフォンへのメッセージで洗濯の完了を知らせる。

冷蔵庫に至っては完全に別レベルだ。庫内の食品の賞味期限を知らせるアプリや、牛乳が残り少なくなると自動的にオンライン注文するアプリまで用意されている。

しかし、この種の IoT 機器に関しては、少し懐疑的な感情を抱くことも否めない。果たして食洗機がデータを収集したり、ユーザーにメッセージを送信したりする必要があるのだろうか? それは難しいところだ。大手メーカーのワールプールでさえ、「スマート」洗濯機の試みが「現時点ではハンマーが釘を探しているようなもの」であると認めている

Nest 社製家庭用サーモスタット_モノのインターネット
Nest 社製家庭用サーモスタット [提供:Nest]

現在はまだ初期段階に過ぎないが、IoT イノベーションは今後より優れたユーザー・エクスペリエンスを実現し、実用的かつ収益性のある用途を提供するものへと発展、成熟していくだろう。

最も重要なポイントは、プロダクトはもはや単なるプロダクトではなく、生きているのだ! (『フランケンシュタイン』のワンシーンほどドラマティックではないにせよ…)。仕事をこなし、サービスを提供するだけでなく、自らの性能を向上させることができる。これは消費者に素晴らしい選択肢を新たに提供する一方で、ビジネス面で要求される適応も膨大だ。すぐに対応を図らなければ、企業にとっては壊滅的な状況にもなりかねない。

これまで慣れ親しんできたプロダクトの終焉を示す主な兆候と、迫り来る「コネクションの時代」におけるプロダクト・デザインと開発で模索すべき点を、以下に挙げてみよう。

つながるプロダクト: 冷蔵庫はあなたが思う以上にあなたのことを知っている?
デジタル世界と物理的世界のコネクションは、ますます複雑で強化されたものになりつつある。

これは洗濯機に話しかけるサーモスタットに限った話ではない。ほとんどのプロダクトが、本来の「意図された」目的に加えて、データの狩猟採集者として機能し始めるようになるだろう。プロダクトのデザインと機能に対するアプローチでは、こうしたアイデアを具現化し、正しいバランスを見つけることが必要不可欠となる。単にスマートな洗濯機を作るという目的でスマート洗濯機を開発していてはだめだ。データやコミュニケーションは、本質的に消費者に役立つものでなければならない。

昨日よりも今日の方が製品を気に入っている… 明日はもっと好きになる。
これは、完了メッセージを送信する食洗機や洗濯機に限ったことではない。Wi-Fi 接続への対応は、それを大きく上回る機能をもたらす。

Wi-Fi-enabled-wall-oven_range-app_GE
Wi-Fi 対応オーブンを制御するアプリの例 [提供: GE]

現在のプロダクトは、そのほとんどの場合において購入と同時に劣化の道をたどるのだが、いまやそれをリアルタイムで向上させられる可能性がある。メーカーは、プロダクトをインターネットに常時接続させておくことで、そのプロダクトを「改善」することができるのだ。

ひとつ例を挙げよう。あるメーカーが、食洗機の水循環に関する新機能を開発したとする。この機能を使用するのに、ユーザーは新しい製品を待つ必要がなくなるのだ。メーカーは Wi-Fi 接続を介してソフトウェアを即座にアップロードし、ユーザーのキッチンに設置された食洗機の水循環機能を向上させることができる。

こうしたシナリオは現実のものとなっており、この種のソフトウェア・アップデートはさまざまな製品で既に実用化されている。スマートハウス・システム・メーカー Wink は、GE と連携して古い家電をよりスマートに向上させるシステムのパイロット生産を行うことを発表。2009 年以降に製造された冷蔵庫の一部のモデル向けに Wi-Fi デバイスを提供することで製品寿命を更新するという、非常に興味深いプロダクトの改良に着手しようとしている。

プロダクトがセールスマンとなる
消費者がクオリティの高いプロダクトを求めるようになり、プロダクトが時間と共に向上することを期待するようになるにつれ、コンポーネントやサービスの販売へと、重要なビジネスモデルの転換が起こるだろう。

これは、そう突拍子もないアイデアではない。Apple と App Store について考えてみて欲しい。トランザクションやクオリティ向上、カスタマーとのコネクションは、電話というプロダクトの購入後も続く。消費者はアプリを通じて電話での体験を増やし、発展させていく。それによりプロダクトは向上し、ユーザーのライフスタイルに合わせてパーソナライズされていく。業界は、このビジネスモデルが非デバイス型プロダクトにも転用可能であると認識し始めたばかりだ。プロダクトは、サービスとより大きな収益をもたらす手段である。

準備しよう
プロダクトとテクノロジーにとって、エキサイティングな時代が到来している。テクノロジーの進歩が、全く新しいプロダクトの創造を推進する (タブレット、スマートフォンなどはこうして生まれた) が、その大半は未開発のままだ。こうした変化は一夜にして起こるものではないが、物理世界とデジタル世界の組み合わせが、私たちの生活のより多くの部分に関わるようになるだろう。心しておこう。これからのプロダクトは、従来と同じではない。

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