コネクテッドトイ: ゲーム “Fabulous Beast” が導くジェンガやポケモンとモノのインターネットとの出会い

by Matt Alderton
- 2015年10月19日
提供: Sensible Object

「戦艦撃沈!」

子供の頃にレーダー作戦ゲームなどのボードゲームで遊んだことがある人なら、このフレーズを聞くと懐かしさがこみ上げてくるだろう。友人や兄弟、両親の口から発せされるこのフレーズは、敗北を認める究極の言葉だ。しかしこの言葉には「お前の勝ちだ」という宣言以上に、ある種の「愛」が込められていた。プラスチック製戦艦に打ち込まれるペグが大打撃だったとしても、どうってことはない。それは充実した時間と共有される喜びを生み出すものであり、最愛の友人や家族と見せかけの戦争を繰り広げることは、侵略行為のふりをすることと同じく、心からの親愛のジェスチャーであったからだ。

過ぎし日のボードゲームをどれほど気に入っていたとしても、これらのゲームの子孫ともいうべきデジタル ゲームに驚異の目を見張らないわけにはいかない。マルチプレイヤー オンライン バトル アリーナ (MOBA) ゲームという新ジャンルのテレビゲームでは、各プレイヤーが超人キャラクターで構成されるチームの一員となり、敵チームの本拠地の破壊を目指す。プレイヤーはそれぞれ別々の場所からモバイル デバイスを使用してプレイに参加するため、“League of Legends” や “Heroes of Newerth” といった MOBA ゲームには従来のボードゲームのような温かみや曖昧さはない。ただしデジタルという構造上、はるかに戦略的なものとなっている。

ゲームデザイナーのアレックス・フリートウッド氏は、ひとつのジャンルに没頭することを避け、これら両方にまたがる「コネクテッドトイ (つながるおもちゃ)」となるゲームの開発に 10 年を費やしてきた。

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ゲーム “Fabulous Beast” [提供: Sensible Object]

「ハイブリッド」ゲームというコンセプトの先駆者となるべく 2015 年 7 月に設立された、ロンドンを拠点とするスタジオ Sensible Object の創立者であるフリートウッド氏は「私たちには、人の心をつかんで離さないスクリーン ベースのデジタル ゲーミングに、とても豊かな伝統があります」と語る。ハイブリッド ゲームとは、IoT を活用して触知性とデジタルなゲームプレイを組み合わせたゲームのことを指している。「しかしその一方で、ゲームには社会の営みとして非常に長い歴史があります。ボードゲームやカードゲーム、アーケードゲーム、遊び場でのゲームでは、私たちを取り囲んでいる物理世界と交わりながら遊びます。私は昔から、こうした全く異なる 2 種類のゲームプレイ形態を交差させることに興味を持っていました」。

「IoT と聞くと、通常はサーモスタットのようなものを思い浮かべるでしょう」と彼は続ける。「でも私が思い浮かべるのは、遊びと楽しみにもたらされる、新しく素晴らしい可能性です。IoT は、スクリーンが人間味を持ち具体化されたソーシャル体験の支援要素となる、新しい方向を示唆していると私は思うのです」。

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[提供: Sensible Object]

Sensible Object 初のゲームは “Fabulous Beasts” と名付けられた。マルチプレイヤーのバランス ゲームで、フリートウッド氏によるとジェンガとポケモン カードゲームのクロスオーバーのようなものだ。物理的な構成要素としてはプラットフォームと 3D プリントにより作成されたオブジェクトがあり、プラットフォーム上にオブジェクトをバランスよく積み上げていく。対するデジタル構成要素はそれに付随する仮想世界で、タブレット上でこの世界を探検できるようになっている。

「このゲームのプレイヤーは、創造主の役割を演じます」とフリートウッド氏。「オブジェクトは生き物を表していて、プラットフォームにうまく乗せることができると、デジタル世界にその生き物 (ビースト)が現れるわけです」。

各プレイヤーは、自分のオブジェクト (ワシやサメ)をタワーに積み上げて遊ぶ。タワーに追加された各オブジェクトは、デジタル世界に影響を及ぼす。各ビーストは、たとえば互いを捕食したり、生息地に大発生したり、新たな環境へと移動したりする。そのためプレイヤーは、タワー上のオブジェクトの物理的バランスを考えつつ、デジタル世界の生物学上のバランスを考えながらオブジェクトを追加していく必要がある。

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[提供: Sensible Object]

「このゲームの面白さと興味は、レゴのようにオブジェクト同士が整合するようにはデザインされていないことにあります」とフリートウッド氏。「ビーストはそれぞれ独特な形状をしており、繰り返し遊ぶことで、プレイヤーは新しい積み上げ方を発見していくのです」。

このような奇抜なアイデアのコネクテッドトイやゲームの作成には、驚くほどのクリエイティビティだけでなく、卓越したエンジニアリングも必要とされる。たとえば、この「独特の」形状を得るために、3D プリントによるビーストには Autodesk Fusion 360 で何百回ものデザインが反復された。フリートウッドのチームは Fusion 360 を活用することで、さまざまなオブジェクトのプロトタイプを素早く作成して、検証することができた。

ゲームのテクノロジーも、デザインと同じくらい思慮に富んだものとなっている。「最初に浮かんだのは、タワーでの操作の検出にカメラとコンピューター ビジョンを使用するアイデアでした」とフリートウッド氏は説明する。彼は、バース大学工学部と共同でゲームのインフラを開発した。「でもコンピューター ビジョンはゲーム関連で使用するにはかなり高価でリスキーな技術であるとすぐに判明しました。そこで、代わりとなるよりシンプルなアイデアを模索しました。オブジェクトを積み上げるプラットフォームの土台の下に、キッチンスケールに使用されているのと同じロードセルを取り付けたのです。このロードセルはタワーの荷重変化を検知します」。

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[提供: Sensible Object]

このロードセルはビーストに内蔵されているパッシブ RFID タグと連動しており、どのオブジェクトが操作されているのかをゲームが検出して検証できるようになっている。最後に、Bluetooth によりオブジェクトとプラットフォームがプレイヤーのタブレットと同期する仕組みだ。

「このようにセンサーを組み合わせることで制作できるこの種のゲームには極めて興味深い可能性があると思います」とフリートウッド氏。

ただし “Fabulous Beasts” が示すとおり、テクノロジーは目的ではなく、むしろ手段だ。

最後にフリートウッド氏はこう話す。「このゲームには、このゲームプレイに対応するデジタル・デバイスでしか実現できないある種の深みと精巧さがあります。しかし、重要なのはスクリーンをのぞき込むことではありません。スクリーンを使用して友達や家族とのソーシャルな体験を可能にすることなのです。人として、また親として、こういった価値を尊重したいと思っています。私がこの世界でもっと目にしたいと思っているのは、こういった種類のゲームプレイなのです」。

Sensible Object は “Fabulous Beasts” を、2015 年 10 月 23 ~ 25 日にカリフォルニア州カルバーシティで開催された IndieCade で紹介しました。

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