施工から取り組む BIM: 矢作建設工業が進める業務効率化

by Yasuo Matsunaka
- 2018年11月29日
施工 BIM を推し進める矢作建設

施工段階における BIM の活用が急速に広がりを見せている。設計段階で作成された建物の BIM 3 次元モデルを建設会社が引き継ぐことで、よりクリエイティブな施工計画を立案可能とされているが、「施工 BIM」の推進には、それとは異なるアプローチも存在する。

愛知県名古屋市東区に本社を構え、土木、建築、その他建設工事の企画から測量、設計、さらには監理、施工、コンサルティングの請負まで幅広い事業を展開する矢作建設工業株式会社が、本格的な BIM 活用に着手したのは 2014 年。同社建築事業本部 施工本部施工部 工務グループマネジャーの伊藤篤之氏は「設計図からではなく、施工図を Autodesk Revit で描くことから始めました」と述べる。その理由は「ひとつのモデルから平面図と立面図、断面図などを切り出すため、図面相互の整合性が高い」ことだ。

BIM 推進を担当する同工務グループ係長の太江慎吾氏も、「モデルを動かすと寸法値もついてくるので、モデルの作り方を工夫すれば、その後の修正にも対応しやすい」と述べる。「ファミリ (Revit で使用する要素) の作成や、施工図の梁符号や柱符号などの情報を引き出すタグを自由に作った表現など、Revit は施工図とも相性が良いと思っています」。

「施工 BIM の 3 要素として、ビジュアライゼーション、シミュレーション、インフォメーションが挙げられますが、働き方改革で最も重要なのは、インフォメーションをうまく活用することだと思います」と、太江氏。「仮設計画では、一度モデル化することで、建物がどのように作られるかが非常にわかりやすくなります。それにインフォメーションを加えることで、本部の業務、現場の業務を高めることができます」。

インフォメーション活用の一例が、モデルに時間の情報を与えるフェーズ機能を活用した施工ステップ図の作成だ。「クレーンと工区の位置関係などが、平面図で書いたステップ図では、何が書いてあるかが分かりづらいんです」と、伊藤氏。「フェーズを利用して、工区が変わっていく際に、そのときのクレーンの位置を 3D でビジュアライゼーションすることで、非常に分かりやすくなる。それを、手間をかけずにできるようにファミリを使って簡単に描ける仕組みを作り、その改良を進めています」。

 

「例えばクレーンのファミリは定格荷重を算出できるようにして、簡単に建方計画図を描けるようにしていますし、山留めの場合は、簡単にモデリングができるだけでなく、見積もりの集計、概算金額の算出もできるようになっています」と、太江氏。

「いまは平面図、立面図、断面図だけでなく、積算、ステップ図、干渉チェックまでできています。今後は検査書類まで作れるようにしようと思っています」と、太江氏は続ける。「最も重要なのは、業務プロセスに組み込むことです。部材を置いただけのファミリは変更に弱く、修正にも非常に時間がかかる。パラメトリックに動くようにすることで、変更に強く修正もしやすくて、なおかつ情報を引き出して活用できるようになります」

BIM モデルを活用した測量・墨出し作業の効率化

2017 年には ICT 技術を活用した現場支援プロジェクトを立ち上げ、Revit や NavisworksBIM 360 Docs などの BIM ソリューションを活用して、現場密着型の施工 BIM による現場支援を開始。現在建設中の物流倉庫では、測量や墨出し (仕上げ工事の前に、建物の柱の中心線や床・壁の仕上げ面の位置など、工事の基準となる線を構造体などに記す作業) まで BIM の活用が拡大されている。

 

「正確なモデルが無ければ測量で使うことはできませんが、測量のためだけにモデルを作るのでは費用対効果が低すぎます」と、伊藤氏。この現場では着工時から施工 BIM を活用。仮設計段階では BIM モデルの精度はそれほど高くせず、その後フェーズ毎に精度を上げて施工図レベルの精度に仕上げた。「各ランプ棟の施工図、鉄骨建方計画図から、最後の測量の墨出しまで、ひとつの BIM モデルを使っています。その精度を上げていくことで、測量に耐えられるモデルを作り込みました」。

「ランプ棟の施工図を作るにあたっては、手摺のファミリを作り、パラメトリックに動くようにしました」と、太江氏。「床のレベルに沿うようにパラメーターを入れていくことで、手摺が自動的に動きます。傾斜の付いている建物を図面にするのは難しいのですが、整合性の高い平面・立面・断面の図面を作成できました」。

どの高さまでコンクリートを打設するかの現場ポイントを設置するための墨出し作業には、トプコン製レイアウトナビゲーター LN-100 と Autodesk Point Layout を使用。現場ポイントの設置は、従来は非常に手間と時間のかかる作業だったが、「Point Layout を使えば、先に測量してポイントの高さを書いておき、あとからポイントを打っていける。従来のやり方では 3 人での作業が必要でしたが、これならひとりで素早く作業できるので、かなりの業務改革になります」と、伊藤氏。

「Point Layoutは、コンクリートの基礎に数百本のアンカーボルトを高精度で打ち出す現場などでも使い始めています。間違いがないかをランダムでチェックすることもできますし、普通に施工管理ができる人であれば、BIM が使えなくても運用できます。入力そのものは本社で行い、そのデータを活用して施工管理ができるので、現場支援に最適ですね。難易度の高い物件の位置出しなどに、今後も活用していきたいと思います」。

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