建設テクノロジーにおける 2017 年のイノベーション 8 選

by Angus W. Stocking, L.S.
- 2017年12月28日
建設 テクノロジー 2017 ガウディにインスパイアされた歩行者専用歩道橋
ガウディにインスパイアされたマドリッドの歩行者専用歩道橋は、市販の 3D プリンターを使って現場で作られた [提供: IAAC - Institute for Advanced Architecture of Catalonia]

11 月 17 日、イギリス構造工学協会 (Institution of Structural Engineers) が 2017 年度構造賞 (Structural Award) の受賞者を発表。大きく波打ったスペイン・ビルバオのサッカースタジアムの屋根 、アデルの「25」ツアー用に作られた可搬性の高いステージ セット、エレガントでありながら堅牢で地震に強いチリのバハーイー教寺院など、世界各地のプロジェクトが選ばれた。多種多様のエントリー作品は独創的な芸術性という共通点を持ち、建設技術の限界を押し広げ、従来は建設が不可能だった構想を実現している。

技術革新は、あらゆる分野で急速に広がっている。ここで紹介する 2017 年にインパクトを与えた新たな 8 つのソリューションのいずれかが、建築・建設の分野で生計を立てている読者のプロジェクトの品質や芸術美、収益性を向上に貢献することになるかもしれない。

1. 環境に配慮したアスファルト

建設業界は 1960 年代初頭に再生ゴム、主にリサイクルした使用済みタイヤを、アスファルトの混合剤として使うことに成功。これにより、アスファルトの品質向上と材料費の低減、埋め立てゴミの削減を実現できた。近年では、アスファルトに使用済みペットボトルや使い捨てプラスチックが使用されるまでに広がっている。

オランダ・ロッテルダムでは、再生プラスチックを 100% 使い、レゴのようにつなげるブロックで構成した自転車専用道路の建設が計画されている。しかも、アスファルトに混合される再生材料はプラスチックとゴムだけではない。オーストラリア・メルボルンの RMIT 大学の研究者たちは、タバコの吸い殻を追加することで、車道の質を向上させつつ重金属を安全に含有させられることを論証。シドニーでは、環境に配慮したアスファルト混合剤に、リサイクルしたプリンター トナーが取り入れられている。

建設 テクノロジー 2017 レゴのようなブラスチックブロックで自転車用道路を建設
ロッテルダム市はレゴのようにつなぎ合わせられる再生プラスチック ブロックで自転車用道路を建設中 [提供: PlasticRoad]

2. 3D プリントされたコンクリート製の橋

アディティブ マニュファクチャリングによるコンクリートのプリンターは、必ずしも新しい技術ではないが (Redshift でも、この技術を 2015 年に紹介)、2017 年は市販の 3D プリンターを使った橋が 2 基も建設された点で画期的だった。

ガウディにインスピレーションを受けたマドリッドの歩行者専用歩道橋は、Institute of Advanced Architecture of Catalonia がデザイン。オランダの自転車用橋は、アイントホーフェン工科大学と建設会社 BAM Infra のエンジニアたちがデザイン、建設を行った。

3D プリントは、数々の利点を提供する。構造に使用するセメントは少量で済み (二酸化炭素排出量を抑制)、型枠が不要となって (廃棄物を削減)、これまで CG の映像技術でしか実現不可能だった形が実際に建設可能となった。

3. 建設現場用ロボット

地ならし機やローダー、バックホーなどの機器を機械制御する実績を持ったコンセプトが 2017 年にはさらに拡張され、自律制御とロボット技術がフォーカスされるようになった。

その新たな応用例が、既に建設現場へ配備され始めている。人間のレンガ職人と一緒に働き、生産力を高める一方で労働者の身体の酷使を緩和する、SAM (Semi-Automated Mason) と呼ばれるレンガ積みロボットがその一例だ。また Built Robotics の自律トラック ローダーは LIDAR、GPS、デジタル ファイルを使用して建設現場を自動走行し、必要に応じて穴を掘ったり埋めたりできる。

それ以外の活躍中の建設用ロボットには、トラックやダンプカー、また「メガマシン」と呼ばれる、 320 t もある自動運転の巨大重機などがある。現在、オーストラリアの企業 Rio Tinto が、これら巨獣の一群を採鉱作業に展開中。各マシンは、現場から数千マイルも離れたパースの本社から制御されている。

建設 テクノロジー 2017 Built Robotics 自律トラック ローダー
Built Robotics の自律トラック ローダーは LIDAR、GPS、デジタル ファイルを使用して建設現場を自動走行する [提供: Built Robotics]

4. 建設前段階での VR

バーチャル環境は、最近までテレビゲームや訓練のシミュレーションに限定されていた。だが VR や没入型デザインは、いまや建設業界に旋風を巻き起こしつつある。例えば 2017 年、Layton Construction は アラバマ州フローレンスの 4 万 5 千平米、全 280 床の医療センター向けに 20 点のバーチャル モックアップを作成して、手術室やその他の重要な医療設備のユーザー検証を実施した。

病院のオーナーは、物理的なモックアップを排除することで 25 万ドルのコストを回避し、建設された各部屋の効率性を向上できた。Layton はそれ以来、同様のテクノロジーをさらに広範に用いるようになっており、サウンドによるキュー、触覚フィードバック、拡張現実などで、そのリアリティを高めている。

5. AR (拡張現実)

VR 同様、建設への AR の応用も、これまで長年にわたって実践よりも理論上だけのものだった。だが状況は変わりつつある。「究極の AR 測定ツールキット」として AirMeasure という名の iOS アプリも登場。このアプリは 15 種類のモードを提供し、スマートフォンだけで現場を正確に計測できる。

AR といえば、Google Glass のことは覚えているだろうか? この眼鏡タイプのシステムは、コンシューマー向け製品としては時流に乗れなかったが、製造業向けには極めて有用であると密かに立証されており、恐らく建設用途にも存在意義が見出されるようになるだろう。DAQRI Smart Helmet も注目度の高いウェアラブルで、没入型の 3D BIM モデルが現場で利用可能になる。

construction technology 2017 Google Glass
Google Glass システムは、一部の製造業向け用途では不可欠なものとなっている [提供: AGCO]

6. サーキュラー ビジネス モデル

テクノロジーというよりも一種の哲学であるサーキュラー ビジネス モデルは、製品のライフサイクル全体を考慮するものであり、2017 年にその勢力を伸ばした。ヨーロッパの建設グループ Royal BAM がパイロット プロジェクトとして建てた Circl は、当初から解体を想定した巨大なパビリオンだ。そのアイデアは、モジュラー ビルディング技術と入念なリソースの追跡により、Circl の構成要素全てを別の建物で再利用できるようにするというもの。

BAM のサステナビリティ部門グループ ディレクター、ニテッシュ・マグダニ氏は「使用されている材料の一部は、実際に価値が高まるはずです」と話す。「実際のところ、私たちは、この未来の価値をしっかり取り込むことができるような、材料を貸し出す手段を開発するつもりです」。この目的を達成するため BAM は、100% の再利用と、より再利用に適した新たな契約手段を可能にするオンライン マーケットプレイスを展開している。

7. 自己治癒するコンクリート

インフラにおいて、全ては最終的にコンクリートに行き着く。とどのつまり、コンクリートは世界で最も一般的に使われている建材なのだ。そのコンクリートが、もし亀裂を自己治癒できるとしたら? 奇妙に聞こえるかもしれないが、古代ローマ人は 2,000 年以上も前に自己治癒力を持つコンクリートを使用していた。現代の科学者たちは今、同じことを行う方法を見つけ出そうとしている。そのアプローチのひとつが、石灰石を生成するバクテリアに由来するものだ。ラトガース大学の材料科学者たちは、亀裂が生じると同時に治癒するコンクリート混合剤として、トリコデルマ・リーゼイと呼ばれる石灰石を生成する菌を使用している。

8. 太陽光を利用した車道とスマート高速道路

2014 年、Solar Roadways (製品名であり、社名でもある) は、車道の表面に埋め込まれたモジュール式ソーラー パネルによる発電システムを宣伝するビデオを公開した。大々的な喧伝により、ビデオ「Solar FREAKIN’ Roadways」は YouTube で 2,200 万回もの視聴回数を達成し、アイダホ州サンドポイントにおけるパイロット プロジェクトの資金として、クラウドソースで 200 万ドル以上を確保した。

工学上の懸念やパイロット テストの結果を引き合いに、批判的な人々は、この取り組みはクレイジーであり、大失敗だとのレッテルを貼った。だが 2017 年、ミズーリ州運輸局は Solar Roadways のパイロット プロジェクトを採用し、アメリカ連邦高速道路局は Solar Roadways に開発検証用の助成金 75 万ドルを交付した。

オランダの企業 SolaRoad がアムステルダムでテスト中の、太陽光を利用した自転車専用道路も有望だ。同社の見解では、テクノロジーの向上に伴ってコストは低下し、15 年で採算が取れる。

フランスの企業 Colas は、National Institute of Solar Energy と連携して Wattway の建設を行っている。Wattway はノルマンディに建設される 966 m のソーラーパネル道路で、今後 5 年で 人口 5,000 人の町の照明用電力の供給に十分な電力を生成できるようになる予定だ。Wattway システムはまた、助成による再生可能テクノロジーの爆発的増加の一端として、米国ジョージア州西部の農村地域でもパイロット検証中だ。

世界各地の道路をスマート化する、その他の手法もますます加速している (英文情報)。エネルギーを削減し、暗闇で光る車道が検証中であり、走行中の電気自動車を充電できる磁場を埋め込んだ誘導優先レーンも開発されている。未来への道は常にスムーズだとは言えないが、その展望はかなり明るいと言える。

関連記事

Success!

ご登録ありがとうございました

「創造の未来」のストーリーを紹介中!

日本版ニュースレターの配信登録