設計・製造・運用のコンバージェンスが、より優れた製品と健康な地球を実現する理由

by Jon Pittman
- 2016年3月29日

産業革命の前は、靴や衣服は地元の靴屋や仕立屋により、各人のサイズに合わせて手縫いで作られていた。それは中産階級にしか手に入らないものだったが、排他性も持っていた。産業革命以前の時代、最貧層が成人してから死ぬまでに所有する衣装はせいぜい 2 – 3 着程度 (参考記事: The Fashion Industry) であり、それは恐らく自分で作ったものだったと思われる。

第二次産業革命と、産業と大量生産の革新が経済成長と生活水準の向上を実現した。平均的消費者は、貧困ラインに近い一部の消費者を含めて、それまで手が届かなかった品を利用できるようになる。だが大量生産により豊かさとアクセス性がもたらされたとはいえ、それは面白みに欠けるものだった。大量生産は規模の経済を前提とするため、あらゆるものがコピーとなった。メーカーは利益を得るため、同一の製品を大量に生産する必要があったからだ。

21 世紀の消費者は、それ以上を求めるようになっている。もはや画一的アプローチと大量生産経営は、かつてほどの訴求力を持たない。安くて短時間で生産される製品は時代遅れになった。製品の価値は、極端な例では消費者の手に渡ってから数分しか持たないことさえある(例えばマクドナルドのハッピーセットのおもちゃがそうだ)。しかし、より柔軟な製造と消費者からのリアルなフィードバックを組み合わせることで、メーカーはユーザー各自のニーズに合わせた製品を生み出すことができる。

design-make-use convergence linear process
Design – Make – Use の直線的なプロセス

ここで登場する次なる革命が、自らを改良する製品とマシン、建造物だ。直線的な製造プロセス (製品がイメージされ、生産、消費される)は、より効果的なプロセスへと変化しつつある。これが「Design (設計)-Make (製造)-Use (運用) のコンバージェンス (収束・収れん)」と呼ばれるものだ。これらの3要素の関係性が一体となることで、消費者は、より長持ちする製品を入手し、購入する商品からより高い価値を得て、その体験からより大きな楽しみを感じることができる。その一方で、地球上のごみの量も減る。

ここでは、真のコンバージェンスに至るまでの 3 つの段階と、Design-Make-Use の連続するループを生み出すことの重要性を説明しよう。

1. 設計へのフィードバック・ループ
生産される製品は、ますますスマートになっている。センサー内蔵の製品が増え、生命を持たないモノから、より重要で「生きた」モノへと進化しつつある。こうしたつながるデバイスが上手く機能すれば、実際に製品がどう使用されているかに関するデータをデザイナーが理解できる形で生成でき、この情報を今後の設計の向上に役立てられる。

ただしデザイナーとエンジニアは適切な部分に注意を払い、製品の「全体としての」体験に焦点を合わせる必要がある。メーカーは実用最小限の製品(MVP)の開発に焦点を合わせていることが多く、その場合には「実用」性よりも「最小限」であることが重視されている。つまり、構成と機能に焦点を絞って製品が生み出されているのだ。しかしデザイナーとエンジニアが、これらの機能がどう働くのかを検討・検証する(構成部品だけでなく製品の総合的形態、つまりは顧客経験に目を向ける)ことに全力で取り組まないことには、その製品で長期的成功を得ることはできないだろう。

design-feedback loop
設計へのフィードバック・ループ

その理由は、成功には金だけでなく時間も重要だからだ。頭をかきむしりながら何時間もマニュアルを読んだり、インストールや操作にテクニカルサポートのヘルプが必要だったりするようであれば、それは実用的とは言えない。

ここで MVP が機能する好例を挙げよう。Ring Video Doorbell のユーザーは、スマートフォンを使用してどこからでも (バケーション先からも)呼び鈴に応答することができる。だが優れているのは遠隔機能だけではない。わずか15分で取り付けて、すぐに使用できるのだ。セキュリティと安心を提供するのに加えて、ユーザーの時間を浪費しないので、ユーザーには自分の生活における、より重要な事柄に取り組む時間が提供される。

2. 設計と製作生産のコンバージェンス・ループ
次の段階では、より素早いフィードバックを通じて、設計と製造の段階がよりタイトになり、効率性が向上する。自転車メーカーを例に挙げてみよう。現在、製造ラインの生産可能台数は 5 万台に設定されており、そのプロセスにユーザー・フィードバックは組み込まれていない。このメーカーは、より柔軟な製造ラインを使用することで、ユーザーの使用状況に関する情報をフィードバックできるセンサーを内蔵した自転車 1,000 台を生産できるだろう。このデータを元に、エンジニアは変更が必要と思われる部分に対処することができる。これはまさに適例だ。ロードバイクに取り付けられたセンサーは、リムブレーキとディスクブレーキの両方向けに設計されており、このセンサーを通じて、メーカーはカスタマーの好むブレーキ・タイプを知ることができる。その後、自転車に取り付けられた全てのセンサーからの通常のフィードバック・ループを活用して、メーカーは、より定期的かつ短い生産工程で変更を適用可能だ。

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設計と製造のコンバージェンス・ループ

3. 設計・製造・運用のコンバージェンス・ループ
このループが実現されると、非常に上手く進み始める。設計・製造・運用の各プロセス間に一貫したフィードバック・ループが生まれると、それにより、つながるデバイスが時間経過と共に反応、変化、適応できるようになる。結果として製品寿命は長くなり、消費者は購入した製品の経年劣化にフラストレーションを抱えることが少なくなり、さらには埋め立てに使われるごみも減る。

テスラモーターズは、設計・製造・運用のコンバージェンスというゲームにおいてはウサイン・ボルトのような存在だが、失敗も経験している。2013 年に起こったテスラの出火事故は、電気自動車の安全性に関する議論に火を付けた。モデル S が車道の落下物と接触した際に、その落下物がリチウムイオン製のバッテリーパックを損傷し、火災を発生させる事故が数件発生したのだ。この事態にテスラは、公道上の全車両に対して無線によるソフトウェア・アップデートを実施し、車両のエアサスペンション・システムを稼働させて「高速走行時における最低地上高を上げる」ことで対処した。

設計・製造・運用のコンバージェンスの、より身近な例が Apple iPhone だ。工場出荷時にはどのiPhone 6sも同じ電子機器だが、ひとたびユーザーの手に渡ると、アプリや連絡先、写真、音楽はどれもそれぞれ異なる。筐体は同じでもソフトウェアによって、持ち主に合わせてあっという間にカスタマイズされるのだ。

design-make-use convergence loop
設計・製造・活用のコンバージェンス・ループ

ビル管理では、施設管理者や住宅所有者は、ビルの冷暖房空調システム、照明、エネルギー消費を監視してパフォーマンスを最適化するITベースのシステム、ビルエネルギー管理システム (BEMS) を通じてエネルギー効率を向上させることができる。例えばオートデスクの上級役員のひとりは自宅の消費電力が多すぎることに気付き、センサーを取り付けたところ、電力漏洩を生じさせていた回路の欠陥を見つけることができた。

設計・製造・運用のコンバージェンスのモデルを導入する企業が増えるにつれ、その製品やデバイスは使用状況や環境に基づいてリアルタイムのフィードバック・ループで反応して、機能を向上させるようになる。現在、こうした反応はソフトウェアを通じてリアルタイムで行われているが、将来的にはどういう意味を持つのだろう?

次に登場するのは、製品がその物理的形状を変化させることを可能にする、設計・製造・運用のコンバージェンスの枠組みだ。飛行機の補助翼を例に挙げてみよう。補助翼とは、主翼にヒンジで取り付けられた、操縦を補助するためのフラップだ。これは鳥の翼の仕組みを真似たものであるが、実際のところ、鳥は全身の形を柔軟に変化させて方向転換を行っている。同じように飛行機も、機体を柔軟に変化させることができたとしたら? このアイデアは、実現できない幻想ではない。ソフトウェアやメディアにより近未来は変わりつつあり、もうしばらくの辛抱だ。やがてモノは自発的に反応し、その形状を変化させるようになるだろう。その時が訪れようとしている。

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