単なるウェアラブルを超えて: コネクテッドプロダクツのデザインがブランド体験のカギとなる理由

by Jeff Walsh
- 2015年11月3日
提供: INDUSTRY

新しい Apple の iPhone 6s が UPS で届いたのは、オレゴン州ポートランドを拠点とするデザインとマーケティングのコンサルタント会社 INDUSTRY の共同設立者にしてエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターのオヴェド・ヴァラデス氏への電話インタビューの予定時刻まであと 30 分というところだった。

箱だけは開封したが、インタビューへの集中が途切れないよう、一線を引くべきだと分かっていた。しかし電話インタビューの間ずっと、ゴールドにきらきらと輝く白の縁取りがなされた iPhone 6s が、箱から手招きを送っているように感じられた。

Designing Connected Products Oved Valadez Full
オヴァド・ヴァラデス氏 [提供: INDUSTRY]

この体験は後に判明するように、ブランドはコネクテッドプロダクツとデバイスの構築とマーケティング手法をシンクロさせる必要があるというヴァラデス氏の主張の中核を立証している。

「あなたはもう捕らえられたも同然ですよ」と、彼は笑いながら言う。「製品を注文して、目の前に箱がある。これはまさに「メーカーがあなたにもたらす発見の喜び」を証明しているのです」。

イベントでの新製品発表からリリースへの期待、それが実際にカスタマーの手に届くまで、Apple 製品の展開方法は一貫しているとヴァラデス氏は話す。そして、製品がひとたびカスタマーのものとなると、注文時にカスタマーが期待した体験へと消費者をつなげるのだ。

「Apple は、私たちが言うところのアートとサイエンスに非常に長けています」と彼は言う。「アートとは「生活にどうフィットするか?」ということです。Apple はこの点で成功しています。次のサイエンスについては、それ自体も素晴らしいものですが、Apple はまるでアルミニウムですら自社で開発したものであるかのような印象を与えていますよね? ビデオで「アルミニウムからボディの表面すべてを削り出し…」と切削加工について説明していますが、Apple が本当に優れているのは、これら 2 つの要素の組み合わせ方なのです」。

もちろん、Apple がブランディングに長けているという指摘には驚きはないだろうが、それに成功している企業はほとんど無い。

「ストーリーをどう伝えるか、消費者が製品の利点をどう理解するかは、特に今日の世界においては、どちらも製品の体験そのものと同じように重要なのです」とヴァラデス氏。彼と自身のコンサルタント会社がナイキやインテル、レッドブル、トニー・ホーク、3M といったブランドに提供しているのは、こういったブランドがコネクテッドプロダクトのデザインに必要となる、このエンドツーエンドの体験を定義するための支援だ。

Designing Connected Products Tony Hawk
[提供: INDUSTRY]

「エンドツーエンド体験が意味するのは、小さなアイデアがブランドにどうフィットするか、アイデアにどう命が吹き込まれ、ストーリーがどのように語られるかということです」と彼は話す。「そしてそれは、これまで成されたことのない何かとなるのです」

INDUSTRY のクライアントとの仕事が他と異なる点は、クライアントが必要とすることに対するクリエイティブ ブリーフィングを、クライアントに要求することがほとんどないことだ。代わりにこの会社は市場と製品に関する徹底的な調査を行い、クライアントと共にクリエイティブ ブリーフィングを作り上げていく。そして何がビジネス上の問題なのか、この市場の消費者が求めているものは何なのか、市場でどのようなことが起こっているのかを完全に理解してから、直面している問題にクライアントが取り組むための支援を行う。

「それがコネクテッドプロダクツであることもありますが、時にはプロダクトではなく、メッセージである場合もあるのです。さらには、体験や、再販上の問題であることもあります。とにかく、いろいろな意味で、ギャップが何なのかを特定することが重要です。そのギャップを特定することにより、チャンスを見出すことができるのです」。

ヴァラデス氏によると、パズルのカギとなる 1 ピースは、人々(彼は「消費者」という表現を好まない)がブランドをどう体験するのかを理解することだという。

「人々にはギャップは見えません。彼らの経験はシームレスです。彼らは知らないのです。製品チームがこの製品を作ったことも、広告チームがこの広告を制作したことも、これとこれがつながっていることも…。人々はブランドというものをシームレスに体験しています。彼らにとって境界は不鮮明です。これらのタッチポイント全てを理解することが私たちの仕事なのです」。

Designing Connected Products Nike
[提供: INDUSTRY]

コネクテッドプロダクツとデバイスを人々がどう体験するかの調査は極めて重要であり、これを怠ると明確さよりも複雑さが強調されかねないとヴァラデス氏は話す。

「たとえば大手ブランドとの仕事では、クライアントのテクノロジー チームやブランド マーケティング チーム、その他多数のグループと連携して、次の展開についてはっきりと定義するようにしています」と彼は言う。「私たちが真っ先に特定することのひとつが「ブランドの DNA と命題は何なのか」ということです。たとえばナイキのそれは、突き詰めていけばアスリートのポテンシャルです。そのポテンシャルに到達することが重要なら、それがブランドの誓いとなるのです。これがブランドの DNA です」

ここから、人々がブランドをどのように体験するかを研究し、人々がメーカーのひらめきと動機にどう反応するかを解明していくのだとヴァラデスは話す。このひらめきと動機は、メーカーを突き動かす信念であり、モノ作りに携わるメーカーとしての信念だ。その後、チームは適切な製品、サービス、マーケティング戦略を模索していく。

Designing Connected Products Solid Bike GIF
INDUSTRYがデザインした初のつながる自転車 SOLID。3D プリントにより製作されたチタニウム製ライフスタイル・バイクだ [提供: INDUSTRY]

「ナイキやレッドブルといった企業は、何かが上手くいかなくなったときに、それを感じとることができます」とヴァラデスは言う。「そして質問を投げかけます。一方的に「問題はこれだ」と断言したりしません。「どうやらギャップが生じているようだが、何をすべきだろうか? 見落としているのは何だろう?」と問うのです」。

知らないという事実をオープンに認めることのできる企業の能力こそ、こういったメッセージ、製品、デバイス全てを有意義な方法で結びつけるというメーカーの誓いを実現する助けとなるのだ。ヴァラデスは、盲点を持つ企業は多いと話す。たとえばテクノロジー系企業だと、純粋に技術のみを追求して技術開発に焦点を置き、技術がもたらす利点を見出すことに力を注いでいないことも多い。

「その結果が、「コネクテッド・エコシステム」、「スマート・センシング」、「ウェアラブル」といった耳障りの良いフレーズです。目を引く対象を追い求め、技術がもたらす利点は何なのか、最終的にどんな体験を提供したいのかというシンプルな問いを投げかけることをしないからです」。

Designing Connected Products Solid Bike
SOLID バイクと共にデザインされたDiscover My Cityアプリは、自転車ライダーにオレゴン州ポートランドの道案内を提供する。バイクと通信してナビゲーションを行い、ナイキのティンカー・ハットフィールドなどの主要なインフルエンサーからの情報を提供する。[提供: INDUSTRY]

もちろん、市場に迅速に適応する企業がもたらす新しい波は、機敏性に焦点を合わせることを可能にする新たなツールを生んでもいる。

「管理職の立場から言えば、Autodesk Fusion 360のような製品は素晴らしいと思います。チームの作業内容を確認してリアルタイムに指示を出すことができるからです」とヴァラデスは話す。「ロサンゼルスにいても、クラウドに接続し、コラボレーション・ツール経由で作業内容を確認して、チームの進捗状況をチェックして最新アップデートを確認し、それに注釈を付けてチームにフィードバックを送ることができます。素晴らしいですね。これこそ未来だと思います」。

多様性に富む最大規模のユーザーベースを持つ大手企業が、極めて明確でシンプルなイメージを使用してそのメッセージを伝えることができるということは、矛盾するようにも思える。

「私のお気に入りの広告のひとつは非常にシンプルなものです」とヴァラデスは話す。「広告掲示板や雑誌のページに美しい画像がプリントされ、そこには「iPhone 6 で撮影」とだけ書かれてあります。50 メガピクセルのカメラだとか、それがデュアルレンズだとか、どんな機能セットが搭載されているかといった説明は一切ありません。見せているのは結果だけ、製品がもたらす利点だけです。私にとって、これがカギなのです。「人々がこの製品に求めているのはこれだ」という点に集中している。ここが見定める際の起点となるのです」。

ここで私はヴァラデス氏に別れの挨拶を告げ、冒頭の状況に戻った。数秒後、iPhone 6s の画面にはこう表示された。「ようこそ」。

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