2010 年のマグニチュード 7.0 の地震の後でハイチを訪れたブレンドン・ブルースター氏が衝撃を受けたのは、パンケーキのように完全に潰れたビルの隣に、ほぼ無傷のビルが並んでいることだった。

Veerhouse Voda の CEO 兼ディレクターを務めるブルースター氏は「通りの片側がより強く揺れたからではありません。ポイントはエンジニアリングと、建材のクオリティのです」と語る。同社はハイチに災害に強いビルを、従来の工法より少ない材料とエネルギーで、より短い工期で建設することを目指している。

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災害に強いビルによるハイチの住宅開発 [提供: Veerhouse Voda]

この2010 年の地震の余波がまだ残る 2016 年 10 月、ハリケーン・マシューがハイチにさらなるダメージをもたらす。支援活動団体によると、このハリケーンは南ハイチの 90 % を破壊し、コレラの流行を悪化させた。暫定的な救援活動に膨大な支援金が注入されたが、次の災害が生じたら果たしてどうなるのだろうか?

ハイチのような開発途上国では、建物の再建は困難を極める。災害後は、食料や飲料水、医療品、仮設住宅など、住民の差し迫った需要に応えることが優先されるからだ。常設避難所の建設や電力の供給といった生活必需品の次の波に対処するには、インフラ再建の長期的な展望が必要となる。エンジニアリングや材料の質に関する最低基準は、残念ながら、低コストかつ早急な建設の犠牲となることが多い。

Veerhouse Voda は、この困難な任務に、適切なエンジニアリングと質の高い建材、低価格で取り組んでいる。同社は Autodesk 3ds MaxRevitAutoCADで構造の開発を行い、レゴのように組み合わせられる軽量の鉄骨フレームのデザインと作り変えを行っている。

Veerhouse Voda は鉄骨間の筋交いとして、リサイクル可能で環境に優しい種類の発泡スチロールである発泡ポリスチレンを使い始めている。断熱特性が内部温度の調節に役立つからだ。また発泡ポリスチレンの外側には特殊なコンクリート モルタルを使用することで、構造をさらに強化している。

ブルースター氏とチームが使用する材料、彼らが生み出したデザインは、いずれもハリケーンや火事、地震、洪水に耐えうるものだ。気候変動の影響により、今後はより頻繁に災害が発生することが予想される。この取り組みは、災害による立ち退きの回避に役立つことが期待されている。

災害に強いビル セント・ボニフェイス病院
セント・ボニフェイス病院を空から見た様子 [提供: Terry Sebastian/BHI]

ハイチ再建においては、今後のレジリエンス (回復力) に重点を絞り、被害を被ったコミュニティの医療ニーズへの迅速かつ長期的な取り組みも重視されている。そうした目的を達成するため、Build Health International (BHI) などの非営利団体は、建物の品質と公共医療サービスを提供する持続可能な仕組みに投資を行っている。

BHI はハイチでさまざまなプロジェクトを行っており、南半島唯一の外科プログラムであるセント・ボニフェイス病院の修繕、拡張のためセント・ボニフェイス・ハイチ基金と提携を行った。改善点には新しい外科センター、感染病用病棟、委託によるコミュニティ公共給水プロジェクトなどが含まれている。

BHI 設立者兼 CEO のジム・アンサラ氏は「南半島で帝王切開を受けられる場所を探している女性にとって、24 時間サービスが保証され、それが必要に応じて、と言ってもほぼ全てのハイチ人が該当しますが、無償もしくは低価格で提供されるのはセント・ボニフェイスだけです」と述べている。

セント・ボニフェイス病院は配電網から完全に分断されており、空調にはディーゼル発電機が使用されている。これはサンフランシスコやボストンでの運用に比べて 5 倍のコストがかかる。

「米国の外科室では、全ての空気が排出され、100 % の外気が流入する仕組みになっていますが、空気の冷却に大量のエネルギーが必要となります」と、アンサラ氏。「ここでは 90 %の空気を再循環させ、汚染物質やバクテリアを濾過できる HEPA フィルターを使っています」。

災害に強いビル 10Power サンドラ・クワック Greentec SA フレッド・ブリッソン
10Power の設立者/CEO サンドラ・クワック氏と、ハイチの太陽光発電パートナーである Greentec SA のフレッド・ブリッソン氏 [提供: 10Power]

米国においては、病院システムに数々の電源冗長性が組み込まれ、医療ガスや冷暖房空調システム ユニット、火災報知機、安全装置など、システムが中断なく動作するようになっている。だがハイチでは、冗長性はシステムが機能しなければ患者に死亡の危険がある箇所にのみ用意されており、BHI は、こうした重要なシステムにおいても柔軟になることを余儀なくされた。

例えば空間を常時明るく照らすのでなく、LED ライト付きの人感センサーを用いることで BHI はエネルギー消費を最小限に抑えている。殺菌装置には、時間はかかるが電力消費の少ない加圧滅菌器が使用されている。

また BHI はRevit と InfraWorks 360 を使用して、スタッフ用の技術文書を簡素化している。スタッフのほとんどはハイチ人であり、正規学校教育の経験が少ない。実際の状況を考慮したビューを用いることにより、現地の労働者に3D モデルを使い、建設の技術的な詳細を明示できる。臨床チームが着工前にデザインを理解でき、エンジニアにフィードバックを提供できるよう、病院施設を実地検証してもらうのにも使用できる。

「図に書かれた文字を読めるかどうかの問題だけではありません」と、アンサラ氏。「どう示すのかも重要です。読むという行為、特に技術文書に慣れていない場合は、その内容を頭の中でまとめるのが非常に難しいのです。別のやり方で行う必要があります。機械的暗記による理解を期待してはいけません」。

長期的影響は、ハイチのような新興市場で再生可能エネルギーに資金提供を行う営利企業、10Power にとっても重要だ。10Power の設立者兼 CEO サンドラ・クワック氏は、真の救済は、災害支援の第一波の後に来るものではないと話す。「人々が忘れがちで地震後に失われてしまう、同じくらい重要な第二波は、長期的な経済復興です」と、クワック氏。「ハリケーン・マシューの影響を受けたエリアでは、徐々に起こる悲劇だからこそ重要なのです」。

Vimeo に掲載された 10Power によるビデオ「10Power | Clean Growth」

2010 年の地震のように 10 万を超える人々の命を即座に奪ったわけではないが、ハリケーン・マシューは 5 万人以上の子供たちに避難生活を強い、約 80 万人を食糧援助の必要な状況に陥らせた。さらに家畜を殺し、作物を台無しにし、作付け期を壊滅させて、多くの農民の暮らしを崩壊させた。

10Power は現在 SolarCity の Give Power プログラムと BuildOn と連携し、ハリケーンを耐え抜いた建物に太陽光発電機能を追加している。こうした構造物は、自宅を失った人々のための仮設住宅としても機能している。

また先日、 #PowerHaitiCoalition もローンチした。これは、ハリケーン・マシュー以降に持続可能なインフラとクリーンなエネルギーを提供するための、現地と国際パートナーによる提携だ。この連合のビジョンは、レジリエンスと繁栄を築く力をコミュニティに与える投資機会の促進だ。

「起こったことは最悪の悲劇でした」と、クワック氏。「しかし、これはより良い未来を再建し、クリーンなビルや再生可能エネルギー、持続可能な方法による経済的機会へのアクセスを生み出せるようになる機会でもあるのです」。

Veerhouse Voda、BHI、10Power は世界の緊急課題を解決するためデザインとエンジニアリングの革新的な使用を行っており オートデスクのサステナビリティ、基金プログラムに参加しています。

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