ドローンの“虚空の眼”が建設現場の時間とコストの節約を実現

by Zach Mortice
- 2018年11月6日
ヘルメットを被った作業員 2 名がタブレットでドローンを操作
ドローンはデータ収集テクノロジーの発展により建設現場での時間とコストの節約に役立っている [提供: PCL Construction]

ドローン市場は、ここ数年で爆発的な拡大をみせている。10 万円台の製品を含めた幅広いモデルが提供されており、その世界的な売上高も 2013 年の 約 50 億円から今年は 1,468 億円へ上昇すると予想されている

このブームは、コンシューマーにとってはハードウェア主導によるものだ。そのシーンをリードするのは、バックパックに収まるサイズで、ゲーム用のようなコントローラーで飛ばせる低価格なドローン。その一方で、ドローンの活用を検討しているビジネス、とりわけ建設会社にとって、この“民主化”はソフトウェアとデータの発展が引き起こしたものだと言える。

建設現場を対象とする、データや画像を収集するドローン アプリやクラウドベースのサービスに特化した企業も多い。そのサービスは、まずはタブレットにインストールしたアプリで飛行経路を自動化し、指定のエリアをスキャンさせるというもの。スキャン結果はクラウドベースのフォトグラメトリー エンジンへとアップロードされ、生画像から地図やモデルへと処理された後、Web ベースのプラットフォームを介して共有される。

アップロードされたデータは、TIFF やその他の画像フォーマット、地形図、点群データ、3D メッシュ ファイルとして戻される。その結果得られるのは、ほぼリアルタイムで建設現場の状況を反映する「デジタル ツイン」だ。常に更新可能で、cm 単位の忠実度でビジュアルを提供し、Autodesk BIM 360 や GIS に統合可能。このデータにより、建設される構造物を設計者の作ったモデルと比較して、作業計画の立案を行なったり、修正に莫大な費用が必要となる前に誤りを発見したりできる。

A closeup of DroneDeploy の Live Map アプリケーションのクローズアップ
DroneDeploy の Live Map はドローンにより現場のデータを収集し、インターネットに情報をアップロードする前に概要を即座に確認できる [提供: DroneDeploy]

ドローン データ企業の DroneDeploy によると、建設現場におけるドローンの活用は、この 1 年で 200 % 以上も増加。建設データ企業 SiteAware でビジネス開発を担当するギル・マイルドワース副社長は「建設におけるドローン活用の価値に、もはや議論の余地はありません」と述べる。「キャプチャされるデータと、そこから建設の統合ワークフローの一部として、正しい洞察をどう抽出するかが重要です」。

PCL Construction で品質管理の責任者を務めるビル・ベニントン氏は、2 年前に社内ドローン プログラムの作成に携わった。同社は現在、米国とカナダ国内に約 30 名の有資格パイロットを抱えているが、このプログラムの有効性は、当初は不明瞭だった。「初期投資を正当化しようと、プロジェクト チームはドローンで解決可能な問題を探していました」と、ベニントン氏。「でも、もう ROI に関する議論を延々と続けることは無くなりました。プロジェクト チームは、日常のコミュニケーションやプロジェクト調整のミーティングでドローン データを最大の拠り所にしており、その利点は明確だからです」。

建設プロジェクトで効率向上の主要な推進力となるのは、時間、品質、コストの 3 要素だ。ドローンは、そのいずれにも貢献できる。溝や駐車中のトラックの合間をすり抜けたり、足場を注意深く上ったりする必要がないため、現場内を人間よりも素早く移動し、空中を猛スピードで飛び回ることができるのだ。

ドローン画像を AR や VR を用いて視覚化するため、ベニントン氏によると PCLは 3DR の Web ベース ドローン プラットフォーム Site Scan を使用して、建設中の建物の 3D メッシュと 3D 点群データ画像を管理している。チームはデザイン モデル上に竣工後の環境を重ねる準備が整ったらメッシュ/点群データ ファイルをダウンロードし、それを Autodesk の RevitReCap などで開く。「3D メッシュや点群データは、従来は高価で高機能なソフトウェアの訓練を受けた人しか扱えませんでした」と、ベニントン氏。「今では、このプロジェクトに関わる誰もが 3D メッシュと点群データにアクセス可能です」。

Uber のサンフランシスコ新本社屋上空から現場データをキャプチャーしたドローン
施工会社の Trubeck は Uber のサンフランシスコ新本社屋建設時にドローンを使用して現場のデータをキャプチャ [提供: 3DR]

3DR でプロダクト マーケティング マネージャーを務めるヒュー・マクファール氏は、ドローンを活用して能率化が図られた他のプロジェクト例を紹介してくれた。3DR はアリゾナ州運輸局と連携して、橋の架け替えプロジェクトの現場を Site Scan アプリで測量。丸 1 日以上は必要だった測量時間が、わずか 30 分に短縮された。カタールでは、Arcadis が幹線道路の土木工事用保管スペースの現場計測を Site Scan で行ったところ、通常の 1/10 の時間で完了できたという。そして、建設会社 Trubeck によるドローンの活用も、注目に値するプロジェクトだ。Trubeck は Uber のサンフランシスコ新本社屋建設時に、竣工モデル用の空撮画像のキャプチャを行った。

ドローン データを利用可能なフォーマットへと変換するクラウドベースのフォトグラメトリー エンジンは、手動で行われることの多かったプロセスの自動化にもつながった。例えば DroneDeploy のリアルタイム フォトグラメトリー エンジンは、クラウドへアップロードする必要がない。その Live Map 機能は、インターネットに接続することなく画像を処理し、2D マップをドローン ファイルとしてまとめ、即座に洞察を提供する。

Web ベースのプラットフォームを介して画像が共有されると、階層状のアクセス権限と制限が設定され、プロジェクト チーム全体で使用可能となる。DroneDeploy のマイク・ウィン CEO は「ドローン データは現場にいない人々の関与を可能にします」と述べる。

カメラの種類に応じて、新たな機能も追加できる。例えば温度カメラは、熱漏れや表面の防水処理の問題の検出、養生コンクリートの管理など、ソーラーパネルの点検には特に便利だ。

A PCL drone maps landscape contours to help contractors manage runoff.
PCL はドローンを使用して現場を計測し、表土流出の管理、隣接するユーティリティとの必要な安全距離の確保を行った [提供: PCL Construction]

プーリーがキーキーと音を立て、アーク溶接機が火花を散らし始める前に、ドローン データが建設現場をより安全にできる。ベニントン氏は、ドローン データと画像は、現場のロジスティックス プランの作成や施工会社への安全手順の確認に重要だと述べる。大雑把な現場地図を指差す代わりに、プロジェクトの 3D 画像 (またはデジタルツイン) 内を案内できるからだ。

PCL は現場の等高線や勾配の測量など追加の安全対策にドローンを使用し、表土流出の積極的な管理や、既存ユーティリティからの適切な安全距離の確保を行っている。だが安全上の最も明白な利点は、品質保証監査のために施工者自身が未完成の建物に登る必要がないことだ。「建設分野で、最も頻度の高い事故原因が落下です」と、マクファール氏。「危険な場所へ人間を向かわせる代わりにドローンを飛ばす。これはフィールド チームの安全を確保する、簡単でコスト効率にも優れた方法です」。

ドローンの次なるステップは構造物への物理的な接触であり、既に風力タービンの除氷には使われている。だが、施工者とドローン データ企業にとって差し迫った懸念は、データとワークフローの相互運用性だろう。

「危険な場所へ人間を向かわせる代わりにドローンを飛ばす。これはフィールド チームの安全を確保する、簡単でコスト効率にも優れた方法です」 – ヒュー・マクファール氏 (3DR プロダクトマーケティングマネージャー)

マクファール氏は、ドローンからより多くの価値を引き出す最良の手段は、さらに高いレベルの自動化機能の追加だと述べる。そこから生まれたのが、準備の整ったドローンを製品として提供する「ドローン イン ザ ボックス」の概念だ。指定の時間にボックスが開いて、ドローンが自動化された飛行経路を移動し、ソーラー パネルでの再充電のため再び着陸する前に、中央処理施設にデータを転送。これらすべてが、人間の手を直接介さずに行われる。「私たちが目指しているのは、こうしたレベルでの自動化です」と、マクファール氏。(ドローンは、現行の規制ではオペレーターの視界内を飛行する必要があるため、米国内では上記の動作のほとんどが実現不可能)

マイルドワース氏は、ドローン モニタリングへの機械学習の応用も期待している。「次のステップでは、これらすべてがさらに自動化された方法で行われるようになり、分析も AI に基づいたものとなります」。機械学習プロトコルが建設現場での問題解決のための提案と優先事項を生成し、過去の経験からの教訓をまとめて、それを今後の仕事に応用。工期が遅れそうな場合や、現場計測が仕様と一致しない場合、施工者がヘルメットを装着していない場合には、ドローンがスタッフに注意を促すことができる。

「ドローンを飛ばしさえすればデータ検討は不要、という世界へ急速に近づきつつあります」と、ウィン氏。「ユーザーは、取るべきアクションについてのレポートを受け取るだけです」。

ドローン データ業界にとって、これは根本的な転換となる。この場合、最終製品はもはや画像やマップではない (ただし、そうした情報はパッケージの一部として含まれることにはなる)。それは、人間のオペレーターの注意を喚起する問いとなる。「データは、それ自体が有益なものです」と、ウィン氏。「でもコンピューター自身がデータを処理して理解できるのであれば、さらに有益なものとなります」。

関連記事

Success!

ご登録ありがとうございました

「創造の未来」のストーリーを紹介中!

日本版ニュースレターの配信登録