建築家を満足させ続けるには: 人材を定着させる 7 つのアドバイス

by Taz Khatri
- 2016年4月23日
主要な設立メンバーであるトム・ハッカーとその妻マーガレットにより70年代に建造された「Hacker House」で、事務所が手がけたこれまでのプロジェクトを巡るチーム育成ツアーに参加したHackerの建築家たち。

ポートランド州立大学建築学部学長のクライヴ・ナイト氏によると、全米建築課程認定委員会 (NAAB) の卒業生の約半数が免許取得以前に辞めている。人材定着は、建築専門職における大きな悩みの種だ。

米国建築家協会サンフランシスコ支部の Equity by Design (EQxD) 委員会が約 2,300 名の男女を対象に行った、建築業界の女性に影響する問題に焦点を当てた調査の『Equity by Design: Knowledge, Discussion, Action!』レポートによると、この業界に足を踏み入れた人材の 1/3 が 4 年以内に業界を去っている。

EQxD 設立メンバーであるローザ・シェン氏は、当初この委員会を The Missing 32% Project と名付けた。それはこのプロジェクトが女性のキャリアにおける「難所」に注目したものだったからだ。

だが離職が性別に基づくものかどうに関係なく、それは企業にとって非常に高く付く。「Inc.」によると、離職に伴う企業のコストは、その生産力と知識の損失、そしてトレーニングや人材採用、面接のコストを考慮すれば年間給与額の 150% にもなる。

architecture firm charette employee retention
シャレット・チームがプロジェクトのソリューションを策定する様子 [提供: Hacker]

離職を防ぐことは、企業の業務の質を維持することにも役立つ。ポートランドの建築事務所 Hacker で主任を務めるチャールズ・ドーン氏は、「スタッフが企業文化を理解し、適切な問いを投げかけ、戦略的に考えることのできる環境づくりに努めています」と話している。「それを実現する唯一の方法は、最高のスタッフを長期間にわたって引き留めることです」。

では、社員の離職を防ぐためにできることは何だろう? ここに、社員の満足度を維持するための 7 つのアドバイスを紹介しよう。

1. 柔軟性を提示する
長時間労働で知られる職種では、理不尽な締め切りや膨大な仕事量の渦中ではワーク ライフ バランスが取れなくなることもある。ポートランドで 11 月に開催された EQxD セミナーで、ZGF の業務執行役員ジャン・ウィレムス氏は「建築業界に根強い疲弊に対処するカギは柔軟性」だと語った。非常勤のスケジュールや在宅勤務を認めることは、社員の生活の要望に応える上で大きな役割を果たす。男は仕事、女は家事という時代はとうの昔に過ぎ去った。現代社会では家事の分担が求められており、それに適切に対応することは建築事務所にとって重要だ。

The Hacker bike-commute challenge. Seventy-seven percent of the staff choose alternatives to single-occupancy vehicles. Courtesy Hacker.
Hacker の自転車通勤チャレンジ。スタッフの 77% が自動車に代わる通勤手段を選択している [提供: Hacker]

EQxD レポートの報告にもある通り、女性は特に育児や介護に必要となる柔軟性に価値を置いている。調査によると、柔軟性を失うことを恐れて職を離れたり、プロジェクトの機会を遠慮したり、昇進を辞退したりする女性は男性よりも多い。

一部の事務所はここに着目して、対策を行いつつある。その一例である Hacker は「ライフ ワーク バランスの文化を推進」し、「各主任が残業状況を監督し、働き過ぎの社員に声をかける」ことを行っているとドーン氏は話す。

2. オープンなコミュニケーションを奨励する
積極的な関与を実感するには、建築家は定期的なフィードバックを受け、意見を交換して事務所の目標と展望を理解することが必要だ。「コミュニケーションを行い、(社員が) 未来の展望を理解することで、満足度はずっと上がります」と、ドーン氏。

この流れから、Hacker は3カ月ごとに主任ミーティングと事務所全体の討論会を行い、また毎週オフィス公報を発行している。組織的なミーティングは、スタッフとリーダー間のオープンなコミュニケーションを促進し、日々の打ち解けたコミュニケーションをより良いものにする手助けとなる。「The Architect’s Handbook of Professional Practice」(プロ建築家の実務ハンドブック) の「スタッフ育成と定着」の章によると「事務所の目標やクライアントの方針、プロジェクトの問題に精通する社員は、常により良い決断を行い、事務所の業績向上につながる」。

3. スタッフ育成に力を入れる
社員が興味を持つ分野における社員の育成も、社員を定着させる優れた方法だ。ウィレムス氏はポートランドで次のように語っている。「私は、社員が会社に着いて最初にすることに注目します。前の晩にずっと考えていた細部の処理を行うために Revit モデルに手を付けるのか、あるいはメールに返信するのか」。これは、この人物がデザイナー向きなのかプロジェクト マネージャー向きなのかを判断するヒントとなる。社員が得意で楽しいと感じていることに目を向け、そのスキルを後押しすることは、人材定着に極めて重要だ。

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Hacker がデザインしたオレゴン州シスターズの Black Butte Ranch での社員ピクニック [提供: Hacker]

4. ハードルは高く、ビジョンは明確に
社員を定着させる方法のひとつに、高い業務水準を維持し、社員がその企業への関与を誇りに思うようにすることがある。社員はまた、高級リテールやカスタム住宅、機関向けのものなど企業が行う仕事の種類にもモチベートされる。

だが企業が特定の専門分野で評価を得ている場合、路線変更は(たとえそれが正しい措置であったとしても)短期的な不利益を生むことがある。「我々の業務が機関相手の仕事から、より多角的な仕事へと転換した際に離職の問題が生じました。勤務期間の長い社員の一部はその戦略を疑問に感じて、会社を離れることを選択しました」と、ドーン氏。

5. 業績を評価し、報いること
The Coxe Group 共同経営者のヒュー・ホックバーグ氏は、EQxD で「社員は業績が評価され、報われていると感じていれば、その企業に留まります」と語った。評価と報奨は、昇給やボーナス、昇進、さらにはミーティングや社報で名前を挙げて感謝の意を示すなど、さまざまな形式で行える。あるいは、締め切りに間に合わせるため長時間を費やした社員に代休を与えるという形を取ることもできる。

また、収入のために建築家という職業を選んだのではないとしても「有能なスタッフの定着という点では、報酬は非常に重要です」と、ドーン氏は話す。Hacker は、退職後に備えた貯蓄のための財務アドバイス・サービスも、無償で社員に提供している。

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Hackerの絵画クラス [提供: Hacker]

6. メンターとチャンピオンを引き出す
Dao Architects オーナー兼代表のジョアン・リー氏は「胸を張って学校を卒業したのに、キャリアにおいてはスポンサーや支援が見つからないことも多く、それで自信を失い、職を離れることもあります」と、EQxD で語った。多くの企業で、先輩社員が後輩の専門知識の開発経過を定期的に確認するメンターシップ プログラムが組織的に導入されている。

だが時として「最も効果的なメンターシップは、非公式な場面で起こります」と、ホックバーグ氏は言う。「例えば主任と若手社員が同乗してミーティングに向かう車内で、さまざまなテーマについて話す機会などです」。

7. 目的と情熱を与える
社員のキャリア育成は、その企業に留まるべき優れた理由を社員に提供する。たとえば、企業内でサステナビリティへの熱意を具体化することは、社員にとって目的を明確にするのに役立つ。「Hacker には非常に強力なサステナビリティ委員会があって、2030 Challenge に調印しており、気候行動計画を制定してカーボンニュートラルなオフィスを達成しています」と、ドーンは話す。これほどサステナビリティに関与することが、スタッフの価値共有に役立っている。

最終的には、適合するかどうかに尽きる。ホックバーグ氏は EQxD で「スポーツ選手も、あるチームでは輝くのに、別のチームでは能力を発揮できないということがあります」と述べ、これは建築家にも当てはまると話した。つまり、企業に合った人材を見つけることが極めて重要だということだ。そうした優れた社員を見つけ、雇用することができたなら、彼らの満足度を保つことを忘れてはならない。

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