製造の未来に対して起こっている変革では「メイカー」と「3D プリント」がお決まりのヘッドラインだ。この現在進行中の時代には「ものづくり 3.0」や「第三次産業革命」「メイカーズ ムーブメント」などさまざまな呼び名が付けられている。

その注目度はますます増幅している。3D プリントの用途には食品や装飾、楽器など一見ありふれたものもあれば、医療機器、さらにはバイオプリントなど、よりシリアスなものもある。しかし、それだけではない。

3D プリントの普及の外で、恐らくは素晴らしいビジネス利益を生み出す、ものづくりの新たなエコシステムが根付きつつあるのだ。時間とコストを大きく削減する迅速なプロトタイピングは? チェック済み。ものづくりの雇用創出の米国回帰は? それもチェック済み。では原材料の無駄と設備設置費の低減(1 つのタスクに複数の機器を使わず1台で完了)は? もちろんそれもチェック済みだ。

しかし、こうした議論やマスコミに報道される「クールな」ニュースで、我々は重要な要素を忘れがちだ。

顧客は欲するものを手に入れる
もちろんビジネスの基本理念は、顧客が求めるものを提供することにあるが、それは決して簡単でもシンプルなことでもない。「新産業革命」(これも別の呼び名!) は望んだ品を望んだ価格で、そして従来以上に望んだ場所で入手することを、より多くの顧客に対して可能にすることで、その制限を吹き飛ばそうとしている。新種のプレーヤーたちが利益を生む方法で需要のロングテールに取り組み、顧客が望むものを提供できるようになった。

顧客はますます、より複雑で相互につながり、パーソナライズされた製品やサービスを求めるようになっている。議論の余地はあるにしても、現代は「個客市場」と呼ぶに相応しい。顧客の需要と要求への大きなパワーシフトには、エキサイティングな可能性に加えて、確立された製造工程や販売サイクル、供給プロセスにおける、新しい複雑な事態とディスラプションも含まれている。製造業者は、迅速な革新を行わなければ消えていくという窮地に立たされているのだ。

製造のパーソナライゼーションの未来

いま市場に投入される製品に、型破り過ぎ、パーソナライズの行き過ぎ、複雑過ぎ、というものなど存在しない。モジュール式スマートフォン? カスタマイズできるチョコレート バー? オーダーメイドの水泳用ゴーグル? 自分でデザインしたハイヒールスニーカー? 全く問題ない。消費者は大手企業と、特定の要件や好みに対処する小規模で機敏な新興ビジネスの両方を利用できる。そしてこうした企業は、よりパーソナライズされた製品を求め、それにプレミアムな価格を支払うことに前向きな顧客をターゲットにできる。

パーソナライゼーションは二本柱のコンセプトでもある。靴を例にとって考えてみよう。従来も色やヒールの高さなど、あらかじめ定義されたオプションから選択できたが、いまやパーソナライゼーションが進んだ新たな世界が到来している。耳の形に合わせた補聴器や人口補装具、さらに遠い未来には体器官まで、プロダクトが特定の顧客のためだけにデザインされる世界なのだ。

また顧客は Kickstarter や Indiegogo などのクラウドファンディング プラットフォームを通じてプロジェクトを直接支援することで、プロダクトに投資できるようになった。クラウドファンディングは斬新なアイデアを実現するための手段のひとつとなっており、コラボレーションと早期のフィードバックによるデザイン クオリティの向上という付加利益ももたらしている。

ハンドルを握っているのは顧客だ。彼らはもはや、企業の製品決定や、善意あるエンジェル投資家の登場を待つ必要はない。Pebble (使用中の他のデジタル機器と同期するカスタマイズ可能な腕時計型端末) や Canary (携帯電話を使用したスマートなホームセキュリティ デバイス) は「顧客の需要によるスタートアップ」の伝説的なストーリーとなっている。

Pebble 提供画像
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パーソナル コンピューティングからパーソナルなものづくりへ
3D プリントと、その巨大な商業的役割に話を戻そう。顧客にとって、3D プリンターによる製品は身近なものになる。初期段階にあるとはいえ、3D プリンターが家庭用プリンター同様に手頃なものとなるのは時間の問題だ。

パーソナル コンピューティング革命と同じように「パーソナルなものづくり」を家庭で、あるいは全米に拡大しつつある TechShop などの「メイカー・スペース」で利用できるようになるだろう。既に現段階で FedEx や UPS Store などの小売窓口が 3D プリンターへのアクセス提供を開始しており、このトレンドはひたすら成長を続けるだろう。

今後 10 年以内に、3D プリント サービスとコンシューマ向け機器はさらに手頃でユビキタスなものとなり、品質と素材の選択肢は向上して、企業はデジタル版の製品やパーツを提供し始めるだろう。消費者は専門分野のスキルがなくても、デジタル版をダウンロードし、変更を加えて直接プリントできるようになる。

例えばビジネス モデルが変化して、日々使用する家電製品のパーツを自分でプリントすることを想像してみよう。現在は冷蔵庫のドアのプラスチック部分が壊れた場合、その取り替えは大きな悩みの種となる。

こうした場合に家庭や近所で 3D プリントを行えれば双方にメリットをもたらす。製造業者側は、不確定な期間にわたってパーツ在庫を抱え、それを顧客へ送り届ける必要がなくなる。消費者側は、取るに足らないが壊れると厄介なパーツを探したり注文したりする必要がなくなるメリットがある。最大の利点は、どちらにとってもコストを低減できることだ。

3D プリンターによる製造業の未来この種のディスラプションは、最終的には製品の再販から持続可能性に至るまで、ものづくりの世界へ巨大な変化の波をもたらすだろう。出荷コストと環境に対する影響の低減の可能性は、目を見張るものがある。使い捨て製品の社会から、再び自分たちの手で修理できる社会へ。それを自宅や近所の FedEx Store で実現できるのだ。

すぐに 3D プリントできるというデザインの潜在力に加えて、物体をスキャンし、デジタルで変更や「修正」を加えてから 3D プリントするという機会も成長を続けている。公平を期すために言うと、デザインのダウンロードもスキャンも、現時点では大規模に実施されているわけではない。だが、いずれそれが現実のものとなることは否定しようがない。

製品とサービスのアイデアは、もはや大手大企業や、つかみどころのないベンチャー資本に飢えたスタートアップだけの領域ではない。顧客と製造業企業の両方に対する価値提案は、こうした民主化を推し進め、消費者、メ―カー、企業家、大企業のエコシステムとの共生関係を形成して、それを企業(クラウドソーシングで製品開発を行う Quirky がその最たる例だ) に「実現させる」ことにある。

製造の未来を担うこの時代は、その呼び名がどうであれ、誰にとっても利のある時代だ。さらなるイノベーション、企業家にとってのより多くの機会、より多くの雇用、消費者にとってのより多くの選択肢、そして大小を問わず企業のより多くの連携。創造性やコラボレーション、選択が豊かなものになれば、誰もが得をする。そしてそこには、今や力を得た顧客も含まれる。

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