クラウドに浮かぶ魔法にかかったおとぎの城: BIM がディズニー社史上最も複雑なクリエイションを支援

by Jeff Yoders
- 2014年11月10日
Disney

ウォルト ディズニー イマジニアリングは、アニマトロニクスを駆使した「カントリーベア」の演奏会から波に揺れる「カリブの海賊」のボート、「マーメイド・ラグーン」におけるアリエルの見事に揺れ動く髪まで、いつまでも記憶に残るディズニー体験を生み出している。

しかしディズニーを象徴する絶対的な存在は、やはり城だろう。だからイマジニアたちは上海ディズニーランド用に魔法にかかったおとぎの城をデザインするにあたり、これまで見たことのないような城を製作しようと考えた。

魔法にかかったおとぎの城のデザインに取り組んだ WDI シニア コンセプト アーキテクトのディヴィッド・エイベア氏は「この城は間違いなく、これまで製作した城の中でも最も複雑なものです」と話す。「レストランとシアター、ボート・ライド、ウォークスルー、レセプション・エリア、大階段、その下には支持構造体があります。

この複雑性により、このプロセスにはデザインに対して従来とは異なるアプローチを採る必要があるということが分かりました。それは 3D モデリングと、関連するあらゆるデザイン分野の間のコーディネーションに大きく依存します」。

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城内の装飾スケジュール [提供: AIA BIM TAP Awards 2014]

魔法にかかったおとぎの城における課題は、二重らせんの中央階段やレストラン、噴水ポンプ、ボート ライド システムとその保守設備、子供向けサロンやその他多数の設備を含む、よりモダンで複雑なインテリアを包含しつつ、ウォルト・ディズニー・リゾートのシンデレラ城に似たディズニーらしいデザインを作成することにあった。

シンデレラ城とは外観が多少異なる魔法にかかったおとぎの城は、全てのディズニー・プリンセスが登場する初めてのディズニーの城となるが、窓や屋根にはディズニーを象徴する建築様式やディテールがはっきりと見て取れる。高さ60メートルを超えるこの城は、ディズニー最大の城でもある。

クラウドで BIM の城を構築
魔法にかかったおとぎの城は完全に 3D でデザインされており、WDI チームは BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) プロセスを使用することで、クラウドによるコラボレーションを新たな高みへと到達させている。これによってモデルの共有がより簡単になり、コミュニケーションの練り直しも減って、より細部まで情報が得られるようになった。ウェブベースのソーシャル、ビデオのテレプレゼンス、クラウドベースのコンピューティングを使用したBIMによるコラボレーションは、本社のあるグレンデールと建設現場である上海の両方のチーム・メンバーを団結させ、プロジェクト・マイルストーンを計画通りに完了させることに成功した。

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ミーティング風景 [提供: AIA BIM TAP Awards 2014]

意匠チームは Revit ソフトウェアに移行したが、WDI チーム内の構造と MEP (設備) チームは AutoCAD を継続して使用した。チーム間でのデータ交換を容易にするために、チームは社内ワークフローも構築している。カスタムのスクリプトを作成し、デザイン・ファイルが Revit の意匠情報を他チーム用に毎日簡単に自動出力できるようにした。

建築家、エンジニア、孫請け業者を含む総計 142 に及ぶ多数のチームが、世界の裏側同士でひとつのプロジェクトに携わっていた。

「もうひとつの課題は、デザインをプロジェクト半ばで上海でローカライズしなければならなかったことでした」と、WDI プロジェクト インテグレーション マネージャーで米国建築者協会員のエリック・アンダーソン氏は話す。「このワークフローにはグレンデールと上海の両サイドが関わっていました。チーム内で情報を広めるために私たちが行ったことのひとつとして、BIM 情報の図表を作成して、どのような情報がどのようにしてグレンデールと上海に伝えられるかを責任者に説明したことがありました」

中国におけるインターネット接続の問題のため、チームは Buzzsaw と呼ばれるクラウドベースの建築コラボレーション・プラットフォームを使用して、グレンデールと上海の間で BIM モデルに改訂を加えていった。

モデルが整えられ、グレンデールと上海の間のコミュニケーションでゴーサインが出ると、WDI のデザイン・チームは細部に取りかかる。BIM「手術チーム」が、モデル内でのインテリジェントでパラメトリックなコンテンツの作成を支援した。細部には、人工地形や、窓、扉、複雑な屋根構造、小塔、二重らせんの中央階段など中世の城に適した時代背景に配慮した建築上の装飾が含まれている。こういった細部はすべて Revit Object として中枢ライブラリに保存され、城のさまざまな場所で使用された。

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Revit 使用の様子 [提供: AIA BIM TAP Awards 2014]

WDI は命名規制を制定して、コーニスやアンティークの窓など、社内で作成された数百に上るBIMオブジェクトをスタンダードな命名規則に従って分類した。こういった建築上の装飾全ては、より優れた量抽出と構造管理を円滑にする。

配置に割り当てられた属性により、WDIの設計者とエンジニアは、建築物の材料内訳、整合性、工程決定を視覚化できるようになった。これには、建築物の花火打ち上げ台 2 基に使用されるコンクリートやその他の材料の正確な量も含まれる。その後、属性がオブジェクトに追加されると、炎のスピードに持ちこたえることができるよう材料を連携させる方法が示される。

連携する 3D モデルにより、チームは、本当の意味で統合された建築物を扱いながらデザインすることができる。デザインはスケジュール通りに完了して、城の建設は去年開始され、魔法にかかったおとぎの城とその他の上海ディズニー・リゾートのアトラクションのオープンは予定通りに進んでいる。統合されたワークフローと先進的なBIM活用により、このプロジェクトは 2014 AIA TAP (Technology in Architectural Practice/建築におけるテクノロジー) アワードを Delivery Process Innovation (デリバリー・プロセス・イノベーション) 部門で受賞している。

これこそがディズニーの魔法なのではないだろうか?

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