エネルギー分析ツールを建築事務所と地球環境に役立てる 4 つの方法

エネルギー 分析 ツール
エネルギー分析はこのロビー デザインのように採光やグレアの検証にも使用できる [提供: Corgan]

壁に再生木材パルプを使い、屋上にエネルギー吸収タイルを敷き詰めただけのビルは、もはや「環境に配慮した」ビル (グリーンビルディング) とは呼べない。いまや各社とも、屋根からスラブまであらゆる場所でエネルギー効率を求め、環境への配慮をプロセス全体へ組み込むようになっている。そしてデザイナーや建築家には、それをリードする役割が求められるようになってきた。そこで役立つのが、エネルギー分析ツールだ。

各企業は潜在的な利益のため、どこから着手すべきかを知る必要がある。エネルギーモデリング ツールは、ビル 1 棟に年間どれほどのエネルギーが必要となるかを、そのサイズと向き、材料をもとに判断する。米国ミネソタ州ダルースの LHB で AIA、CSI、CDT、BIM の管理を務めるダン・スタイン氏は、あらゆる企業に、エネルギー分析スキルを養成するトレーニングの開発を勧めている。

ありとあらゆるデザイン決定に、これまで以上に詳細な調査が必要だと認識するようになりました。 — ジャスティン・ダウホーワー氏 (AIA, LEED AP, WELL AP)

ビルのエネルギー消費を見積もるのに必要な高品質のモデリングを生成できるよう最新のツールを採用して、それを適切に活用するには、学校を卒業したばかりの若いスタッフでもかなりの学習期間を要する。だがスタイン氏は、Autodesk Revit ユーザーへクラウドコンピューティングやシミュレーションなどのサービスを追加コスト無しに提供する Autodesk Insight などのツールのおかげで、エネルギー モデリングの民主化が進行中だと話す。

「従来は外注されることが多く、数週間の日時や数千ドルのコストがかかることもありました。このところサステナブル デザインに注目が集まるようになり、現在はクライアントや地方自治体の必須事項になりつつあります。エネルギー モデリングなどサステナブル デザイン ツールを、あらゆるプロジェクトで各デザイナーへ普及させられるのは、とても素晴らしいことですね」。

この記事では、急速に成長しているエネルギー関連の需要をリードするため、エネルギー分析ツールを採用すべき 4 つの理由を紹介しよう。

1. エネルギー分析は地球環境への配慮を促す

ダラスの Corgan でアソシエートを務める AIA、LEED AP、WELL AP のジャスティン・ダウホーワー氏は、数十年前にはビルの環境への影響を、本当の意味で理解することは難しかったと話す。だが現在、クライアントやオーナーは、ビルに収められるもの全てと、その長期的なコストをより良く理解したいと望んでいる。これには、環境上の影響からエネルギーの消費と生成まで、あらゆる面での詳しい事前調査が必要となる。

「デザイナーとして、以前のプロジェクトで行ったことを単にコピー&ペーストするのは簡単です。時間を節約できますし、それが前回はうまく行ったということも理解していますから」と、ダウホーワー氏。「あらゆるデザイン決定に、これまで以上に詳細な調査が必要だと認識するようになりました。ビルに使用される材料や製品の環境上、健康上の影響の開示に力を貸すよう、建設業界、特にメーカーに働き掛ける必要があります」。

スタイン氏は、その例としてカーペットの調達を挙げる。ライフサイクル アセスメント (LCA) の検討では、そのカーペットをどこから調達するかがビルのエネルギー初期コストに大きく影響し、原材料の確保から生産、メーカーから建設現場までの輸送までが、それに相当する。

「ミシシッピ州でカーペットが大量に生産されているとしましょう」と、スタイン氏。「それをミネソタ州北部へ出荷することには、そのカーペットをトラックに載せて運搬する包括的なコストがかかります。LCA ツールは、モデル内のさまざまな要素に関連する全ての情報を追跡して、より優れたオプションを検討すべき場所を把握できます。私たちの目標は地球温暖化の可能性をできるだけ低下させることであり、それが環境にプラスの影響を与えます」。

2. よりスマートなデザインが、よりハッピーなクライアントを生む

「エネルギー分析の結果を、デザイナーとクライアントが早い段階で共有することの最良の成果とは、プロジェクトのスケジュールに影響を与えず、それまでの作業成果を帳消しにせずに、有意義な変化を起こすことがまだ可能だということです」と、スタイン氏は話す。

エネルギー モデリングにより、材料の対照比較が可能となる。これはクライアントとのコミュニケーション向上に役立つ、視覚的なメリットとなる。スタイン氏は、企業が十分な情報に基づくデザイン決定を行い、クライアントがコストとエネルギー関連の事項について深く理解するのに役立っていると話す。

「エネルギー モデリングは、もはや単なる定常状態のエネルギー モデリングではありません」と、スタイン氏。「インサイト (洞察) には、ガラスや屋根とその向きに関する幅広い情報が取り込まれ、その選択肢全てが分析されます。選択肢は実に数千にも及びます。クラウドに接続して設定を操作を行えば、最終的なエネルギー消費の指標もリアルタイムで変化します。ビルの北側のガラスを増やしたり、屋根の断熱材を多くしたりしたいという場合も、様々な計算を行ってモデルに再入力しなくても、その変化をリアルタイムで確認できます」。

solar shading study
このサムネイル研究では現場の日なたと日陰の角度の年間変化を検討している [提供: Corgan]

3. 性能分析が生み出す、より高効率のビル

ダウホーワー氏が性能分析と呼ぶエネルギー モデリングは、単に窓の向きやカーペットの調達元、塗料の製造方法を検討するだけのものではない。ビルの使用方法と、コストをどう削減できるのかの分析も行う。

「3 年ごとに新たなエネルギー法が登場し、エネルギー性能の最低基準が更新されます」と、ダウホーワー氏。「いまや特に珍しいものではなくなった LEED 認証は、法的な最低要件のずっと先をいっています。企業のオフィス ビル プロジェクトなど、クライアントが同時にテナントともなる場合は、長期的なエネルギーと光熱費も懸念事項となり、クライアントは長期的な省エネ効果の把握を望みます」。

スタイン氏の事務所は、ある歴史的建造物を改修したLEED CI プラチナ認証取得のオフィス スペースを作る前に、その研究をミネアポリスの自社オフィスで行った。デザイン チームは、入居者であるオフィスで働くスタッフから、彼らにとって空間がどう機能しているかという有益な情報を収集し、その調査結果を彼らの新たな職場となる新オフィスにどう応用すべきかを学んだ。プロジェクトの完了後、 LHB は POE (施設利用者満足度評価) を行い、デザインの目標と意図が現実にはどれほど合致しているのかを確認した。チームは、POE の調査結果を今後のプロジェクトに役立てるべく社内全体で共有しただけでなく、業界の発展に役立つよう Greenbuild などのカンファレンスでも発表した。

カーテンウォールに取り付けられた太陽光コントロールのカスタム ブラインドが、採光を最大化し、グレアを最小限に抑える [提供: Corgan]

4. エネルギー分析はデザイン決定の根拠付けに役立つ

価格は常に障害となるが、エネルギー分析の利点のひとつは、選択肢の有用性を立証できることだ。最近のプロジェクトの例では、大部分がガラスであるビルに、太陽光コントロールの選択肢を生み出す機会を提供した、とダウホーワー氏。彼はそこから最適なソリューションを探し出し、クライアントに提案することができた。

「デザイン開発を進め、価格設定を行う段階となったときに“これは単なるビルの飾りではなく、必要なものなのです”と説明できます」と、ダウホーワー氏。「バリュー エンジニアリングを実施するにしても、デザインから取り除くにしても、ビルの性能に与える全ての影響のデータを説明できます」。

各企業は、その規模を問わず、エネルギー分析を日常のプロセスに取り込むことで利点を得られる、とダウホーワー氏は話す。「性能分析を既存のワークフローに統合する方法を見出した企業が、最大の成功を収めるでしょう」と、ダウホーワー氏。「企業が付加価値や機能強化として追加しようとするサービスは、予め含まれているべき機能に余計なコストを払いたくないクライアントには拒絶されることが多いものです。成功する企業は、それをデザイン プロセスの一環として行っています。別のサービスとは呼びません。それがベスト プラクティスであり、優れたデザインだということになります」。

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