米国の極限環境で GE Johnson がチャレンジする建設事業

by Matt Alderton
- 2018年9月3日
極限 建設 Pikes Peak Summit Complex
標高 4,267 m に位置する Pikes Peak Summit Complex には米国陸軍の高地研究所やビジター センターが入居予定 [提供: GE Johnson]

パイクスピークの環境は、見る者から言葉を失わせる。ロッキー山脈の南部フロント・レンジの最高峰であり、コロラド州コロラドスプリングスの東側にそびえるパイクスピークは、標高 4,301 m。これほどの標高では全てが壮大であり、簡単なことは何ひとつない。

この山の魅力を完璧にとらえたのが、大学教授であり、1893 年のパイクスピーク登頂後に「アメリカ・ザ・ビューティフル」の歌詞を提供した詩人、キャサリン・リー・ベイツだ。ただし、パイクスピークはただ美しいだけでなく、苛酷でもある。「琥珀色に波打つ岩肌」や「荘厳な深紅の山々」と形容された壮大な眺めは、希薄な空気と危険な嵐、不安定な傾斜のことだ。この息継ぎすら難しいような極限環境では、建設は至難の業となる。

だが、コロラド州を拠点とする建設会社 GE Johnson は今後 3 年間、それに取り組もうとしている。2018 年 6 月、同社は 5,000 万ドル (約 56 億円) 規模のプロジェクトである、パイクスピーク山頂に建設される総面積 3,530 平米の複合施設 Pikes Peak Summit Complex に着工。2020 年秋に完成が予定されている、パイクスピークの神聖な山頂に立つ建物には、新しい米国陸軍高地研究所やビジターセンターが入居する予定だ。

GE Johnson の統合サービス部門でディレクターを務めるスティーヴ・エイカンゲル氏は、「極限の天候に耐えうるよう、全てをより高いレベルにしなければなりません」と述べている。1967 年に設立された GE Johnson は、コロラド州イーグル郡学区にある、ロッキー山脈地方のコミュニティに 8 校を 1975 年に建設して以来、高地での建設を行ってきた。初のマウンテンリゾートは 1987 年に誕生したコロラド州ベールのウェスティン ホテルで、苛酷な冬の期間に 1,050 万ドルをかけて増築されている。

極限 建設パイスクピーク 起工式
GE Johnson チームによるパイクスピーク山頂での起工式 [提供: GE Johnson]

気候変動により地球環境の劇的な変化が予測される中、極限環境における建設のスキルは、型破りなロケーションや気候、条件での作業において、これまで以上に重要なものとなるかもしれない。

成功を予見する

極限環境における、最も明白な障害は天候だろう。そしてロッキー山脈には、大量の雪が降る。

エイカンゲル氏は、その適切な対処のため、デザイン チームは防水処理などのプロセスを見直す必要があったと述べている。例えば 1 階の屋根と 2 階の壁が交わる部分では、壁に沿って防水シートを 1.2 m ほど延長させる必要がある。冬のほとんどの期間、屋根には 1.2 m の雪が積もったままになるからだ。こうした雪に対しては、公共歩道のロード ヒーティングや、雪による過重負荷への対策として (木製フレームの代わりに) 鋼フレーム構造の採用が必要となる可能性がある。

施工業者と建築家のどちらも、極限環境へ対応するため、さまざまな調整が必要になる。建築家が注意を払うのがデザインの細部なのに対して、施工業者の場合はスケジュールの細部だ。パイクスピークのプロジェクトについて、エイカンゲル氏は「誰も山頂に立ち入れなくなる期間があります」と述べる。「物理的に不可能になり、そのせいで進行は遅れることになります。でも、我々は 51 年の歴史のうち 43 年にわたって山間部での取り組みを行ってきており、通年で作業を行う方法を習得しています」。

真冬のコロラド州エイヴォンで 8 階建てシェラトン ホテルの建設に携わったエイカンゲル氏によると、その対策として好んで採用される策が、雪寒仮囲いだ。GE Johnson は、冬季に作業を中断する代わりに構造物の上に仮設屋根を設置し、構造物を巨大なテントで囲った。「窓や化粧しっくい、石などによる仕上げ作業は構造物全体を囲ったエリア内で続けられるため、プレファブリケーション工法の建設スケジュールを遅らせる必要は全くありませんでした」と、エイカンゲル氏。

極限 建設 パイクスピーク
パイクスピークのプロジェクトでは、冬の苛酷な気象条件により作業員が山頂にたどり着けない場合に備え、GE Johnson は建設の一部の要素をオフサイトでプレファブリケーションしている [提供: GE Johnson]

パイクスピークのプロジェクト チームは、テントの代わりにオフサイト建設を活用するつもりだ。「山頂での作業に限らず、年間を通してこのプロジェクトに取り組む予定です」と、エイカンゲル氏。作業員は、冬季には鉄筋や屋根構造、内部を保護する外壁など、建築部材のプレファブリケーション業務に携わる。コロラドスプリングス近郊で全モジュールが製造され、その後、パイクスピークの上り坂にある強烈なスイッチバックの通過に最適な長さと旋回半径の、特殊なロールオフ トラックで現場へと運搬される。

労働力に関する工夫

GE Johnson でコミュニケーション ディレクターを務めるローラ・リンカー氏によると、施工業者は極限環境においては、天候だけでなく作業員にも配慮が必要だ。

「プロジェクトに携わる人々をどう管理するのかを配慮し、彼らのバイタルサインが良好で、低地作業時より勤務時間が短いことを確認する必要があります」と、リンカー氏。GE Johnson は、パイクスピークのプロジェクトでコロラド大学デンバー校と提携し、作業員の健康と安全をモニターするシステムを開発した。

研究者たちは、コロラドスプリングスの米国空軍士官学校の学生ボランティアの助けを得て、高地でさまざまな作業を行う関係者のバイタルサインを測定。その結果を、作業員の生理学上の基準として活用した。高山病やその他の疾病の兆候が見られる場合は、現地の救急救命士 (EMT) や安全専門家、準医師が介入する。

同様のリスクは、高地とは逆の極限環境でも起こる。GE Johnson は先ごろカリフォルニア州デスヴァレーで、数百万ドル規模の The Oasis at Death Valley ホテル (旧 Furnace Creek Resort) の改修工事を完了させた。海抜マイナス 45 m にあるため標高は問題ではなかったが、夏には気温が最高で摂氏 52 度という危険な暑さに達するため、作業員の安全に配慮して作業は夜間に行われた。

極限 建設 the oasis at death valley プール
デスヴァレーでは日中の気温が 50 度を超えることも多いため、The Oasis at Death Valley の建設作業員は夜間に作業を行った [提供: GE Johnson]

「日中は暑すぎるため、建設作業時間の変更が必要でした」と、エイカンゲル氏。夜間の作業は、安全性だけでなく生産性も高める。「大型のコンクリートスラブに陽が当たっていたら、設置できません」と、エイカンゲル氏。「あの気温では表面がすぐに乾いてしまい、適切な処理ができないのです」。

極限環境は人里離れたところに存在することが多く、そうした場所では労働者の保護と同様、誘致も難しい。その点でも、プレファブリケーションが役に立つ。デスヴァレーのプロジェクトの場合、主要な建築設備のプレファブリケーションは、取引や必要な材料へのアクセスが確保しやすいラスベガスとカリフォルニア州フレズノで行われた。

GE Johnson の総合サービス部門マネージャー、ジョン・シュワルツ氏は「The Oasis at Death Valley に行くには、直近の街からでも数時間かかります」と述べる。パイプ弁が破損して現場が浸水した事件の際には、「部品を入手できる直近のホームセンターまで往復 3 時間かかりました」と、シュワルツ氏。「だから、事前の計画が必須なのです」。

テクノロジー = 効率

極限環境で効率を考えるには、テクノロジーが重要だとエイカンゲル氏は話す。GE Johnson はプロジェクトの視覚化に Autodesk Revit を、また協力会社のスケジューリングと連係には Autodesk Navisworks を使用している。「着工前に、プロジェクトのプランを何度も練り直します」と、エイカンゲル氏。「バーチャルなエンジニアリングと建設は、現場入りする前に、その現場を必要な回数だけバーチャルに構築できる機会だと考えています」。

極限 建設 U.S. Olympic Museum 模型
U.S. Olympic Museum では、クルーが金属を日に数回スキャンして気温による膨張と収縮をモニター [提供: GE Johnson]

「現地で建設を行う前に、全ての構造の連係を確実にしておく必要があります」と話すエイカンゲル氏は、ゼネコンはバーチャル モデルによって、必要な労働力と材料、ロジスティクスを予測することができると付け加えている。

GE Johnson は、コロラドスプリングスの標高約 1,840 m の地点に現在建設中の U.S. Olympic Museum (米国オリンピック ミュージアム) で、品質管理に 3D レーザースキャンを活用。熱と標高の影響により金属は若干膨張するため、チームは外枠と内枠のパネル壁を毎日朝夕の 2 回スキャンし、寸法をリアルタイムで確認して誤差を修正している。

建設の全ての段階において、その成功は先手を打ったアクションにかかっている。「計画の重要性は、強調し過ぎることはありません」と、エイカンゲル氏。「作業を行う環境について、天候から労働力不足まで、よく理解しておく必要があるのです」。

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