食料不足の問題と郵便局の再生を 1 つのプランで解決

by Zach Mortice
- 2017年5月16日
First Class Meal
First Class Meal 配送イラスト [画像提供: Lanxi Zhang]

ロサンゼルス市ダウンタウン (DTLA) のスキッド・ロウ地区は、米国最大のホームレス人口を抱えるエリアで、予想に違わず食糧不足が深刻なエリアでもある。

その近隣は、大量の食品廃棄物を排出するレストランや会社が多く集まるエリアでもある。「San Bernardino County Sun」紙によると、ロサンゼルス郡では 1 日あたり 4,000 – 6,000 t の食品廃棄物が生じており (そのほとんどが埋め立てごみとして処理される)、米国全体では約 3,000 万 t もの食料が廃棄される。世界規模では、食品の 1/3 が浪費または廃棄されているのだ。[編注: 日本では食料消費の 1/2 に相当する 2,800 万 t が廃棄されている]

この DTLA エリアで社会奉仕活動を行っている多くの NPO にとっての問題は、必要な量の食料を得ることでなく、傷みやすい生鮮食品を保管、運搬するキャパシティだ。幸いなことに、セントルイス・ワシントン大学で都市計画と公衆衛生を学ぶ学生で構成されたチームが、見込みのある解決策を提案した。彼らはスキッド・ロウ、そして米国内の至るところに、この役割に適応できるインフラが既に存在している、という結論を出した。それは、USPS (米国合衆国郵便公社) だ。

First Class Meal design proposal, including a new food wall combined with existing PO boxes.. 
First Class Meal のデザイン提案は、新しい食品棚を既存の私書箱と組み合わせている [提供: Lanxi Zhang]

USPS がロサンゼルス市内に所有する閉鎖中のオフィス 4 カ所は、約 4,650 平米の保管スペースとして利用でき、セントルイス・ワシントン大学で建築と都市計画を学ぶ修士課程の学生、アヌ・サマラジヴァ氏は、郵便配達用車両と配送ネットワークが「あらゆる世帯と連日接触している」と話す。

こうした、米国内のあらゆる場所にコネクトできるという権限は「優れたリソース」であり、サマラジヴァ氏や修士課程の学生ランシー・ツァン氏 (景観設計と都市計画)、イルム・ジャヴェド氏 (公衆衛生) を含め、様々な専門分野にまたがる彼女のチームは、これを First Class Meal と名付けられた計画に活用している (編注: USPS の First Class Mail は通常便を指す)。チームはこの計画で、貧しい人々へ食料を届けるのに郵便公社のリソースを活用し、DTLA の予備実験からスタートすることを提案している。「これはある種、局地的なループとなるかもしれません」と、サマラジヴァ氏。「郵便公社のリソースは、各郵便局の担当エリア内のレストランとエージェンシーをつなぐことができます」。

この計画 (Autodesk AutoCAD でドラフトが作られた) は、AECOM と Van Alen Institute が主催し、100 Resilient Cities が協力する学生向けの国際アイデア コンペ Urban SOS: Fair Share で賞を獲得した。これは学生チームに、共有経済の原理を都市問題へ応用させるものだ。受賞結果は 1 月に発表され、サマラジヴァ氏のチームには 7,500 ドルの賞金を獲得。さらに計画作成を支援するため、AECOM から 25,000 ドルが贈られている。

Diagram of PO box food-storage capacities from the First Class Meal plan. 
First Class Meal プランの私書箱食料庫のキャパシティを示す図 [提供: Lanxi Zhang]

問題を抱えるエージェンシーと住民

USPS は2011 年に全米で 4,000 カ所の郵便局を閉鎖する計画を発表し、13,000 カ所で営業時間を短縮した。需要の低下と膨大な負債、改革手段への議会の合意が得られないことに USPS は苦しんでいるのだ。

だが、飢えの問題はなくならない。食料不足にあえぐ人は、ロサンゼルス郡だけでも 140 万人 にも達する。この数字からいけば、米国内の子供の 23 % が食料不足の状態に陥っていることになる。ではどうすれば、より公平かつ幅広い人々に共有経済の枠組みが役立ち、必要とされるサービスに人々をつなぐことができるのだろうか?

First Class Meal は、手紙と全く同じように、USPS が独自の配送ルート経由で食料の集配を行い、各郵便局のハブ食料庫を使うことを想定している (サマラジヴァ氏のチームによると、XL サイズの私書箱にはジャガイモ約 25 kg が収まる)。このパートナーシップは、ビジネス モデルの多様化と、コミュニティで果たすより重要な役割により郵便局を再活性化して、双方に有益なものとなる可能性がある。

Image composite of what the First Class Meal PO box food-storage system might look like. 
First Class Meal 私書箱食料庫システムの外観を示したイメージ画像 [提供: Lanxi Zhang]

集配のスケジューリングは、既存の USPS のアプリを使って調整できる。AECOM Global Cities のディレクター、スティーヴン・エングブロム氏は、 First Class Meal が傑出しているのは、既存のリソースを物理面とデジタル面の両方で生かすという手法だとしている。郵便公社のインフラを使うことに加えて、「既存のアプリを強化する方法も、よく検討されていました」と、エングブロム氏。「他にも非常にイノベーティブなアイデアがありましたが、サマラジヴァ氏のチームは、物理的なソリューションや都市政策のソリューションの検討ほど、多くの時間は持てなかったにもかかわらず、アプリ開発にかなりの時間をかけていました」。

First Class Meal は、分別、貯蔵を行う中心施設にひとまず食料を集めるのでなく、全てをより狭い範囲内で完結させ、できるだけ迅速に食料を集配できるようフードバンクや NPO とパートナーを組んだ、超ローカルな地域ベースのネットワークを提案している。

「私たちは、一部の NPO や比較的小規模なエージェンシーが抱える、寄付された食料の回収に関する問題も耳にしていました。彼らはトラックを所有していなかったり、割り当てられた食料を地域のフードバンクに取りに行くだけのキャパシティがなかったりするのです」と、サマラジヴァ氏。「より分散型、地域型にすることで、そうした小規模のエージェンシーを支援できます」。

問題は、食料庫の収容能力の飛躍的な増大だ。例えばロサンゼルス市の食料不足への取り組みの第一線で活動する団体、Los Angeles Regional Food Bank は約 557 平米もの冷蔵保存スペースを所有している。ここに USPS の未使用スペースのほんの一部を加えるだけで、プログラムの活動を飛躍的に拡大させることができる。「この目的のために全ての郵便局を運用する必要はありませんが、わずかなスペースで、生鮮食料の分配を大幅に向上させられる可能性があるかもしれないのです」と、サマラジヴァ氏は話す。

「モノ」から「マルチ」へ

First Class Meal は、実はインフラ計画における今世紀最大の大転換を体現しているのかもしれない。輸送網や道路、公園は、もはや単一の目的にのみ使用するわけにはいかない。これらは多機能であることが必要だ。自転車通勤者用道としても機能する線状に伸びる公園や、公共広場としても機能する地下鉄の高架駅、さらには流出した地表水をろ過し吸収する街路のように。

Image of Lanxi Zhang, Irum Javed, and Anu Samarajiva with assistant professor Linda Samuels in the Sam Fox School’s Givens Hall. 
サム・フォックス・デザイン視聴芸術学部ギヴンズ・ホールにて、ランシー・ツァン (左端)、イルム・ジャヴェド、アヌ・サマラジヴァと、助教リンダ・サミュエルズ [提供: James Byard/セントルイス・ワシントン大学]

インフラが単機能とならないことを確保する方法として、最初から多様な学問分野にまたがる総合的な手法でアイデアを生み出すというやり方がある、とエングブロム氏は述べる。「過去 100 年間、全米の都市の課題に関してはエンジニアの立場、経済学者の立場、建築家の立場は別々のものであり、あまり意見交換は行われてきませんでした」と、エングブロム氏。この問題を解決することは、都市の SOS の背景にある「メタ命題」なのだ。

AECOM のもうひとつの責務、つまり共有経済の範囲を、最先端のレストランへの移動に Uber を利用すること以上に拡大する方法を見つけることについては、サマラジヴァ氏は楽観的だ。前例は少ないが、ピアツーピアの共有経済ネットワークを運営している企業は、そのビジネスが幅広い顧客ベースの維持に依存するため世論の変化に非常に敏感だ、とサマラジヴァ氏は話す。「アプリをスマホから削除して、今後一切サービスを使用するつもりはないと宣言するのは、簡単なことなのです」。

これこそ Uber が、タクシーのストライキ中にジョン・F・ケネディ空港での割増料金を一時停止した後で学んだ教訓だ。テロ対策を目的とした大統領令が署名された後、その移民政策に反対するストライキが空港で行われていた。Uber のこの措置は、デモを解散させようとする、あるいはデモに乗じて利益を得ようとするものだと見なされたのだ。20 万人ものカスタマーがアカウントを削除した結果、Uber は、この大統領令の影響を受けた Uber ドライバーに対する 300 万ドルの弁護基金を設立するに至った。

「Uber のようなテックベースの共有経済ビジネスが、市民志向の目的をより幅広く果たすべきだという機運が高まれば」と、サマラジヴァ氏。「正しい行いを後押しする力になるかもしれません」。

 

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