テクノロジーの前進により、必然的に犠牲が生じるが、同時に機会も生まれる。

例を挙げると、ワイヤレス通信の登場は、ラジオシャックのような家電販売店が不要になるということを意味していた。Google や Amazon などのクラウド サービス プロバイダーが求められるようになったのだ。デジタル メディアが拡散することで、ビデオのレンタル店は Netflix などのストリーミング視聴に取って代わられた。またソーシャル メディアの隆盛は、ポラロイド カメラによる写真撮影の終わりを意味していた。写真はスマートフォンで撮影し、Instagram で共有するものになったのだ。

人々は今もコミュニケーションを行い、映画を楽しみ、写真を撮影している。だが、使用するツールが変化した。デンバーを拠点とするコンピュテーショナル デザイン、BIM コンサルティング企業 EvolveLAB のパートナー兼ビルディング インフォメーション マネジメント (BIM) サービス部門ディレクターであるビル・アレン氏は、それは AEC (建築・建設) 業界でも同様だと話している。BIM は、AEC プロジェクトの計画やモデリングに適したメディアとして、ゆっくりとだが着実に CAD に代わる存在へなりつつある。

BIM の未来
Image composite: Micke Tong

「BIM が我々を導く先を考えると、本当に驚異的です」と話すアレン氏は、AEC 業界をエキサイティングな技術発展であるジェネレーティブ デザインへと前進させる、重要な手がかりが BIM であると説明している。コンピューター ソフトウェア アルゴリズムは、コンピュテーショナル デザイン、パラメトリック デザインをベースとし、BIM を活用することで採光や熱性能、構造統合性など特定の制約や目標に基づいたビル デザインを生み出すよう建築家を支援する。「今やアルゴリズムは (ビルの) データを操作して、2 日で 17,000 種類ものデザイン オプションを生成できます」と、アレン氏。

昨年ラスベガスで開催された Autodesk University で BIM の未来に関する講義を行ったアレン氏は、間もなく「BIM 2.0」、すなわちジェネレーティブ デザインが建築の実務をさらに発展させるだろうと述べている。コンピューターは、デザインの最適化を自動化することで数千に上るデザインのバリエーションを自動的にソートし、プロジェクトの要件に適ったデザインを選択できるようになる。「コンピューターは、人間がよりもずっと効率的にデザインできるようになるでしょう」。

これは期待の持てる未来であり、設計と建設がより安価かつ安全で効率が良く、エンドユーザーのニーズへさらに応えるものとなる。だが、ひとつだけ問題がある。こうした BIM のメリットにもかかわらず、業界の一部は昔ながらのやり方に固執している。この問題を克服するためアラン氏は、次世代のビルの推進にはプロセス (Process)、ポリシー (Policy)、ピープル (People) という、3 つの「P」の進展に重点を置いたアプローチが必要になるだろうと話している。

BIM の未来
Image composite: Micke Tong

1. プロセス
BIM のメリットを理解しているプロフェッショナルであっても、その実践には悪銭苦闘しており、この新たなテクノロジーを従来のプロセスを用いて使用しようと試みている。「多くの人が、これまで慣れ親しんできた古いプロセスを使用したいと考えています」と、アレン氏。

これは、丸い穴に四角い釘を打ち込むようなものだ。例えば BIM のメリットのひとつがスピードと効率の向上だが、多くのデザイナーがマニュアルでデータをやりとりするという罠に陥っており、それではスピードも効率も低い。

「一方のモニターで Excel のビル空間プログラムを、もう一方のモニターで AutoCADRevit を使い、Dynamo のような Excel から Revit へ変換するツールを使えば Excel 空間を Revit 内で自動作成できるのに、マニュアルでデータを作り変えています」と語るアレン氏は、同様の「データの無駄」問題がプロジェクトの全過程で生じていると言う。「私の仕事は、新しいプロセスに関する情報を提供し、より良い方法があることを示すことです」。

2. ポリシー
BIM に適したプロセスを活用したいと考えていても、企業の方針により、それができないことがある。

アレン氏によると、法務が障壁となることがあり、契約がテクノロジーに追いついていない場合が多い。アレン氏は、BIM はプロジェクトに関わる全関係者が情報を自由に共有できる場合に最も効果的だと話す。だが、法的責任や訴訟の懸念から、こうした情報共有が契約で禁じることもしばしばだ。契約人が、建築家が提供した情報に従って行動した結果として何らかの問題が生じた場合、その契約人やプロジェクト オーナーが建築家を訴える可能性がある。その解決策は、企業を守りつつ、同時に企業間の連携を促進するものでなければならない。

当座の解決策として、電子同意書がある。「これは基本的に“この情報提供は善意のもとで行われるものであり、情報は参考として扱われるべきで、何らかの保証を提供するものではない”ことを確認するためのものです」と、アレン氏。

BIM の未来
Image composite: Micke Tong

また企業は、共有する情報にフィルターを適用することで身を守ることができる。例えば建設計画を緑、黄、赤で色分けすることで、情報が確定的なものなのか、条件付きなのか、不完全なものなのかを示すことが可能だ。利害関係者と連携することで、全関係者が各プロジェクトの開始時に定義、プロセス、ポリシー、制限要因に合意することができる。それによりリスクを減らし、BIM が必要とするワークフローを合理化できる。

3. ピープル
BIM というパズルの最後の「P」は、プロセスとポリシーの背後に存在するピープル、つまり人間だ。「人間面が最も大きな課題だと私は思います。ベストプラクティスやガイドライン、ホワイト ペーパー、ハウツー、ドキュメントなどを全て手に入れても、価値観を共有するチームが存在しなければ、企業が変化を取り入れることは困難です」と、アレン氏。

BIM の目的はテクノロジーをより有効に活用するだが、カルチャーの変化はオフラインで始まる。アレン氏は、生身の人間同士の関係を構築することの重要性を強調する。これが、テクノロジーの変革をスタートさせる最も重要な要因となることもあるのだ。

「各自がエゴを抑え、チームとして団結し、反目することなく協力して取り組むことを学べれば、それは非常に有益です」と、アレン氏は話す。家族やサッカーの会話など、シンプルな交流が優れた出発点になる。「エモーショナルな部分でつながることができれば、人間は相手に手を貸そうという気持ちになるものです」。

最後に、関係者だけでなく、テクノロジーともより良い関係を育むことは不可欠となるだろう。テクノロジーは脅威ではなく、機会として理解されるべきだ。

BIM の未来
Image composite: Micke Tong

「競争力を保つには (テクノロジーとの) 順応と進化が必要となります」と話すアレン氏は、ジェネレーティブ デザインを自動運転車に例える。無人運転車が登場した世界では、企業がトラック運転手を雇用する必要はなくなる。だが自動運転中の全車両を管理、監督する、トラック運転操作のエキスパートが必要だ。「(テクノロジーは) 新しい雇用をもたらし、新たな専門分野を生み出すようになるでしょう。デザイナーはもはや単なるデザイナーではなく、コンピュテーショナル デザインの担い手になります。静的なモデルを作成するのではなく、その事務所におけるジェネレーティブ デザインのエキスパートとなるのです」。

もちろんそれは、新しいテクノロジーを受け入れ、率先してそれを学ぶことが条件だ。そうでなければ、読者の価値が陳腐化するリスクがある。

「単に仕事の問題だけではありません。学び、自らを向上させ、創造力を保つことが重要なのです」と、アレン氏。BIM 登場後の世界で成功を収めるのは、継続的に教育、トレーニング、開発の努力を行う者となるだろう。「フラストレーションを感じるかもしれませんが、ディスラプションを受け入れる必要があるのです」。

関連記事

Success!

ご登録ありがとうございました

「創造の未来」のストーリーを紹介中!

日本版ニュースレターの配信登録