都市計画の未来 : ソーシャルメディアから生まれたハワイの地区

by Timothy A. Schuler
- 2015年6月29日
Kakaako のストリートアート。その大半は毎年一週間行われるフェスティバル、Pow! Wow! Hawaiiの期間にジャスパー・ウォン氏が制作したもの。[提供: Timothy A. Schuler]

ヤシの木や白浜のビーチという絵ハガキのようなイメージがあるホノルルだが、都市計画の視点からすると、必ずしも楽園とは言えない。

交通渋滞 は、ロサンゼルス、サンフランシスコに次ぐ全米ワースト 3 位。この街には自転車のインフラがほとんどない。バス路線はそこそこ整備されているものの、郊外からホノルル中心街までの高速鉄道ラインを追加するという問題含みの計画は 9 億 1000 万ドルの資金不足のため行き詰まっている状態だ。

しかしハワイ最大の都市であるホノルル (人口 39 万人でカリフォルニア州オークランドとほぼ同じ) は、ここ数年独自の都市化が進んでおり、一足飛びで 21 世紀に追いついて、未来の都市計画を受け入れている。(ワイキキとホノルル中心街の間に位置する倉庫街カカアコを中心とする) 現在の建築ブームは、ニューヨーク、サンフランシスコ、オレゴン州ポートランドなどの開発を牽引する、ウォーカビリティ (歩きやすさ) や起業家精神、共有経済といったトレンドの多くを支持するものだ。

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カカアコの Hank’s Haute Dogs 前のパークレット [提供: Timothy A. Schuler]
かつてカカアコには漁場と塩田が広がっていたが、今ではほとんど樹木もなく、平屋倉庫と中古車販売店が碁盤の目を成している。だが状況は急速に変化している。多数の高層マンションが建設中または計画中であり、また自転車店やヨガ スタジオといった小企業が毎週のように開業して、その多くは開発側が厳選した地元の起業家である。

この活動の中心となっているのが、Our Kakaako (州内に1470平方キロメートルにわたる土地を所有する私立の教育財団カメハメハ・スクールの一部門) が開発中の 9 ブロックにわたる区画だ。そのマスター プランでは「心地良い緑地と自動車、歩行者、バス、電車などが共存可能となるよう設計された道路、張り巡らされた歩道、独自性のある小売店を擁した、さまざまな用途と収益が混在する多様な住宅地域」を提唱している。

主に観光向けのロケーションであるハワイにおいて、カカアコは「地元を第一に考えた」場所となることを目指している。コミュニティとの一体性と利用しやすさに焦点を合わせているが、一部の住民はエリアの物件価格の安定に神経質になっている。いずれにせよ、Hank’s Haute Dogs 前に設置されたパークレット (駐車スペースを利用した憩いや美化目的の空間) からアーティスト/クリエイターの共同体である Lana Lane に至るまで、前世紀のハワイとは異なっていることは明らかだ。

カカアコはハワイの歴史上初めて、ホノルルが米国の他の地域と同じペースで進化していることを示すシンボルとなっている。そして、この進歩はソーシャルメディアのおかげなのかもしれない。

ソーシャルが新たな意味を持つ日
2014年、Our Kakaako は、117平方メートルにわたる開発エリア全体に無償 Wi-Fi ネットワークを配備し、ハッシュタグ #ourkakaako を作成して Twitter や Facebook、Instagram を活用した交流を促した。活動が広がっていくうちに、物理世界とデジタル世界の境界は次第に曖昧なものとなる。倉庫の壁面に描かれたストリートアートにもハッシュタグが組み込まれ、また夜間のストリート フェスティバルのホノルル ナイトマーケットは、月間イベントを更新して共有するアプリを開発。カカアコの地元コミュニティは、数千にも上る世界各地からのファンやフォロワーによって急速に拡大した。

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カカアコのストリートアート。その大部分は毎年 1 週間に渡って開催される、ジャスパー・ウォン氏が創立した Pow! Wow! Hawaii フェスティバルで制作されたものだ [提供: Timothy A. Schuler]
インターネット、特にソーシャルメディアは、ハワイにおけるこの現象の大きな要因かもしれない。2011 年からカカアコで活動する芸術組織 Interisland Terminal 共同設立者兼ディレクターのウェイ・ファン氏はこう話す。「インターネットはここの雰囲気を大きく変えました。それまで感じられた文化的孤立感が和らぎましたから」。ファン氏は、ソーシャルメディアがファッション、食、デザインのトレンド伝達のルートとなっていると説明する。

かつては、「本土」から 1 日遅れでハワイ諸島に届く新聞が、その役割を果たしていた。今ではハワイの人々も、ニューヨークに住む人と同じ時間に同じ種類のモバイル機器を使用し、同じデジタル プラットフォームにアクセスしてニュースを読むことができる。さらに重要なのは、より広範で、よりハワイの文化を反映したハワイ諸島のイメージの送出に、ソーシャルメディアが使用されていることだろう。

ハワイ人問題事務局理事のピーター・アポ氏は、現代ハワイの特色を打ち出す「オンライン文化国」の構築に、ソーシャルメディアの使用を強力に推進してきた。さまざまな意味で、カカアコで起こっていることはまさにそれである。カカアコで毎年開催されているストリートアート フェスティバル Pow! Wow! Hawaii の Instagram アカウントは 15 万人を超えるフォロワーを擁している。グループは今年初めて Pow! Wow! Long Beach を開催したが、これはある意味文化の都の歴史の流れが逆転したことを示すムーブメントとなった。

しかしファンは、情報と文化の即時的なやりとりは諸刃の剣だと話す。本土からのトレンドはよりすばやく届くようになったが、これはハワイ独自の都市計画へのアプローチを阻む可能性がある。「誰もが同じことをするようになりましたが、それはソーシャルメディアの影響の反映です」とファンは話す。また、距離の短縮は文化の平坦化を意味する。危うい立場にあるのはハワイだけではない。

Before and after for SALT. Courtesy Our Kakaako.
SALT 開発前と開発後 [提供: Our Kakaako]
グローバルなオーディエンスを抱えながら地元志向を維持
Our Kakaakoは、本土のデベロッパーの指示による「プレイスメイキング」と、ハワイの歴史と文化をオーセンティックに表現することとの間のバランスを模索しているように見える。4 月、カメハメハ・スクールは「地域の文化的および歴史的物語をクリエイティブに供述する」 12 点の特定地域向け芸術作品の提案書を提出した。これらの芸術作品は、既存の建設物と新規建設物が混在する 7,900 平方 m にわたる地区であり、歩行者に優しいレストラン街、野外広場、小売店エリアや住居エリアと変貌しつつある SALT の公共スペースに設置される。

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Atelier Bow-Wow 設計のInterisland Terminal Kakaako Agora。映画上映やその他の文化イベント向けのオープンエア型 (屋根付き) 空間 [提供: Mariko Reed]
「カカアコには豊かな歴史があります」と、WCIT Architecture 所属の建築家で、デザイン当初から SALT に関わり、応募作品へのコンサルタントを務めるヘイゼル・ゴウ氏は話す。氏は、地区の建設物は工業地帯としての地域の特色を示すものである一方、芸術作品が、塩の文化的および地理的歴史を含むカカアコの歴史の新たな側面を検証するものになるかもしれないと期待している。「(塩は) 治癒に使用されていました。通貨として使用されたこともあります。この屋外スペースには、語ることのできるストーリーが幾重にも重なっているのです」。

Interisland と共に、ファンは日本の Atelier Bow-Wow がデザインしたオープンエア型イベント空間 Kakaako Agora を介した芸術と建築に関する地域の対話を呼び起こすことを期待している。Agora では、ディスカッション、ワークショップ、映画上映、その他のイベントが催され、地域全域にわたって建設された 40 階を超える高層マンションへの入居をマイルドに促すものとなっている。

カカアコの発展ぶりはソーシャルメディアに全て取り上げられており、その成長に従ってホノルルに対する世界の見識も進化していくだろう。「ハワイはこういった変化に飢えていると思います」とゴウ氏は話す。その理由を尋ねられると、ファンに賛同してこう説明した。「テクノロジー、世界とつながるということ、外の世界の動きを知るということが関係しているのかもしれません」。

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