ゼネコンと協力会社の関係を BIM で強化する

by Jeff Link
- 2016年9月26日
マリン総合病院
マリン総合病院のレンダリング画像 (北側) [提供: McCarthy Building Companies]

他の業界と同様、商業建築の世界においてもプロジェクトの成否を決めるのはコストとスケジュールだ。そしてゼネコンとその協力会社との関係も、予算内に収めることと工期を守ることにかかっている。

McCarthy Building Companies でバーチャル デザインと建築部門のディレクターを務めるランドール・ナッチ氏は「McCarthy のようなゼネコンは、クライアントを満足させるためコストと予算の維持に努めますが、材料費や人件費が絶えず変化する経済圏や業界では、それが困難な場合も多いのです」と語る。「協力会社の業務範囲には、従来はプロジェクトの建設前に、その建設可能性を細部まで検討する時間は含まれていませんでした」。

ビルディング インフォメーション モデリング (BIM) とクラウドベースのコンピューティングが登場するまで、契約上の曖昧さはプロセスの一部であり、プロジェクトの不測の障害に対する防衛手段であることが多かった。

ただし大抵は、その曖昧さが信頼の糧とはならない。クラウドベースの調整ツールが登場するまで、プロジェクトの明記されていない細部はゼネコンと協力会社次第であり、互いに距離を置いた状態でコミュニケーションを取りつつ、責任を取ることを避けていた。

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マリン総合病院の屋根増築部分のレンダリング画像 [提供:  Marin General Hospital]

だがナッチ氏は、そうした状況はかなり変化しており、リアルタイムかつ正確な縮尺でビジュアライゼーションやプロジェクト調整を行えるツールが、ゼネコンと協力会社の、より効率的な協調に役立っていると言う。構造上や工学上の問題を着工前に、つまり石膏ボードの粉塵にまみれながらでなくコンピューター画面の前で明らかにすることが、より高品質で低コストの仕事へとつながる。「かいつまんで言うと、ビジュアライゼーションは建設プロセスの早い段階でより多くの回答を得るのに役立ち、適切な意志決定者へ問題を提示できます」と、ナッチ氏。

テクノロジーが実現したスケジュールの維持とコストの抑制
McCarthy によるマリン総合病院の再構成と改修を例に挙げよう。これはカリフォルニア州グリーンブリーのボンエアー空地に沿って、24,000 平米を増築するプロジェクトだ。このプロジェクトのパートナーとなった McCarthy の協力会社 Peterson Mechanical は、ダクトとヒートパイプ システムのモデリングに Fabrication CADduct と Fabrication CADmep を使用。これらが後に Autodesk Navisworks に読み込まれ、確認と調整が行われた。

Peterson Mechanical で配管部門のマネージャーを努めるグレッグ・マークス氏は「天井を下げる必要性を、こうしたテクノロジー無しで建築家に納得させるのは非常に困難だったでしょう」と言う。「建築家の同意が得られず、結果として McCarthy と建築家、Peterson の間で軋轢が生じていたに違いありません」。

先進的なシミュレーション ソフトウェアが、起こりうる対立を回避するだけでなく、プロジェクトのスケジュールを維持し、コストを抑えるためにも役立った。もし、こうしたテクノロジーが無かったら? 「天井との干渉が判明するのは、現場での建設が、その箇所の取り付けに到達した時点だったでしょう」と、マークス氏。「それから情報のリクエストが書き込まれ、その対応が決定されます。このプロセスに大抵 2 ~ 3 週間はかかります。回答が行われた後で、ダクトか天井のどちらかを作り直す必要があり、改修作業による建設スケジュールの延長に加えて、その作業に 20 ~ 80 工数が必要です」。

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マリン総合病院プロジェクトを作業中の McCarthy のチーム [提供: McCarthy Building Companies]

大規模で複数の会社が関わるプロジェクトを観察すれば、こうした労働力と時間の節約が大きな違いを生むことが分かる。McCarthy が手掛ける、アリゾナ州にある 18,580 平米もの広さの巨大な 3 階建てのオディシー水族館では、 Autodesk Collaboration for Revit のクラウド サブスクリプション サービスと BIM 360 Field の活用により、プロジェクト時間の 35% 以上、労働時間にして約 17,000 時間を短縮できたと推定されている。

1 つのモデルで作業することのメリット
クラウドベースのテクノロジーにより全ての関係者が同一モデルで同時に作業できるため、チーム間のつながりの構築に役立ち、建造プロセスの説明責任も充実したものとなる。Pan-Pacific Mechanical で BIM リードを努めるマイケル・ムット氏にとって、ローレンス・バークレー国立研究所やオークランド医療センターなど McCarthy との数々のコラボレーションにおいて、こうした調整は極めて重要だった。

彼の仕事は、物理的な建設を行う前に、ビルを建設するようなものだ。つまりレコード プロデューサーやミキシング エンジニアが複数のオーディオ トラックをミックスダウンして曲を仕上げるように、各協力会社による貢献を 1 つのまとまったパッケージへ統合するのだ。「各協力会社が、それぞれの仕事を 3D で詳述し、それをビル建設のテンプレートとして使用するのです」と、ムット氏。

ワークフローの調整や順序立て、建築レイアウトの支援には Navisworks や BIM 360 Glue などのコラボレーション ツールが使用される。全てのプロジェクト建設チームが同一のファイルを同時にレビューでき、そこには基本的に同じ情報が含まれている。「私たちは徐々にひとつのファイル構成へと移行しつつあり、誰が作図しているのか、締切には間に合いそうかなど、各プロジェクトをより高い透明性で確認できるようになっています」と、ムット氏。

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マリン総合病院の増築部分のレンダリング画像 (庭側) [提供: Marin General Hospital]

予定通りに行かない部分があれば、その責任が誰にあるのかを、チームは正確に理解できる。「配管や機械システム全体を、実世界で取り付けられる部品の 1/16 インチ (1.6 mm) の精度で設計できます」と、ムット氏。「実世界で干渉が生じた場合は立面図や寸法線を呼び出して、正しい位置にあるもの、誤った位置にあるものを確認できます。たとえば寸法が 1/2 インチ (13 mm) ずれている場合、デジタル モデルからそれだけ逸脱させた当事者が、実世界での干渉を修正する責任を負うことになります」。

こうした説明責任は、責任の押し付け合いとは全く逆で、間違いを犯すことの影響を前もって緩和するものだ。「労力や人的資源という観点から言うと、実世界で起きた誤りは、バーチャルな世界での誤りよりずっと高価なものになります」と、ムット氏。「この方法なら、バーチャルな世界で問題を見つけ出し、それを緩和することで実世界でのコストのかさむ干渉を最小限に抑えることができます」。

彼は、カリフォルニア州ダブリンにある 3 階建てのカイザー・ダブリン外来診断センターを例に挙げる。約 240 平米のこの McCarthy のプロジェクトは現在進行中で、リニアック 4 台と注入化学療法外来、院内車道、複数の駐車場、優れた景観のアプローチと広場が複数用意された放射線腫瘍科が含まれている。Navisworks が、込み入った多層デザインのスムーズな調整を支援した。「鉄筋と配管の干渉レポートを実行することで、配管用の部品が鉄筋と干渉しているステップをひとつ残らず見つけ出すことができます」と、ムット氏。

クラウドベースのモデリングとプロジェクト管理ツールがもたらすのは、何よりも現実の確認だ。現場の事実関係を正確かつ簡単にアクセス可能な形で提示してくれる。この現実から、プロジェクトを正しい方向へ進めるための信頼と自信が生まれる、とナッチ氏は言う。「今では、どんなに些細な問題でも、それを非常に多くの人が見ることができます。皆が同じ条件の下にいるのです。コンピューター モニターの向こうに座る者として、私たちは全ての建材、そして複雑なビルを、より柔軟な製品の存在が可能である環境内で構築できるのです」。

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