製造革命のスピードを Hack Rod で加速

by Drew Turney
- 2016年12月28日
Hack Rod
モハーヴェ砂漠の Hack Rod

新しい製品の優れたアイデアはあっても、それを形にするための装備を備えた製造工場が無い? 改造車の愛好家であるカリフォルニアの二人組のおかげで、構想から組立までの製造のワークフローが、そのうち誰にとっても実現可能なものになるかもしれない。

hack rod Mouse McCoy and Felix Holst
マウス・マッコイ氏 (左) とフェリックス・ホルスト氏

そのホットロッダーが、フェリックス・ホルスト氏とマウス・マッコイ氏だ。ホルスト氏は、マテルのホットウィール部門を統率していたときに、スタント ドライバー、映画製作者であるマッコイ氏に出会った。両者とも、それぞれの業界での次の大きな変化に目を光らせていた時期で、Hot Wheels for Real キャンペーンで仕事をした際に意気投合したのだった。ともに興味を抱いていたデザインと建造物の未来が、Hack Rod のインスピレーションとなった。これはホルスト、マッコイ両氏による、未来のメイカーのための製造プラットフォーム構想だ。

Hack Rod を軌道に乗せるため、二人はオートデスクなどパートナーと連携。ホットロッド マシンのシャーシをスキャンしてデジタイズし、それを 3D モデルとしてコンピューターにインポートして、ジェネレーティブ デザインに魔法を使わせた。クラウド コンピューティングの処理能力を活用したジェネレーティブ デザインの可能性は、二人には革命的だと感じられた。重量や材料などの構造のパラメーターを設定すれば、最適なモデルに到達するまで、デジタル的な反復を必要なだけソフトウェアに行わせるのだ。

初期段階でのプロトタイピングと、カリフォルニアのモハーヴェ砂漠での苛酷なテスト走行を含むデータ収集以降、Hack Rod は世界初の、ジェネレーティブ デザインを利用した 3D プリント製自動車の製造に向かって着実に前進を続けている。

製造の未来のビジョン
ホルスト、マッコイ両氏とチームは、この自動車を実際に走らせる前から、これは単なる始まりに過ぎないと考えていた。現在、チームは新たな研究とパートナーシップ拡大の段階へと入りつつあり、最小限の人数でショップの運営を行っている。Hack Rod の次の段階で、ホルストとマッコイは製造を利用しやすいものにしたいと考えている。

「Hack Rod は自動車に関するものではありません」と、ホルスト。「これはプラットフォームなのです。このプラットフォームはつながっており、あらゆる作業を行ってくれます」。

マッコイ氏によると、このクラウドベースのプラットフォームは、オートデスクやその他のパートナーの API で構築される予定で、製作、調整、ビルドを行うためのデザイン、検証、製造のワンストップ ポータルを提供することを目指している。映画製作者であるマッコイ氏は、 CGI の世界でも同様のことが起こっていると言う。

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Hack Rod チームは多数の歪みゲージとセンサーをシャーシに取り付け、苛酷な走行条件下でかかる最大応力と負荷に関するデータを収集した

Maya の 3D でプリビジュアライズ、アニメーションされた世界を目にするようになっており、クラウドのパイプラインは非常にエキサイティングです」と、マッコイ。「既にコンセプトの考案時にかなりのデザインが行われるようになっており、それを簡潔な製造ワークフローへと取り込めるようになる、という方向に向かっています」。

Hack Rod プラットフォームが稼働するようになれば、3D モデルをクラウドにアップロードし、ジェネレーティブ デザインにより材料や重量、コスト、パフォーマンスの理想的なバランスを見出して、得られた結果をファイルで製造業者に送り、製造を依頼するかパーツを注文して組み立てることができるようになる。その全てを単一のユーザー インターフェースから行えるようになるのだ。マッコイ、ホルスト両氏は現在、プラットフォーム構築のチームとツールを準備中だ。

ホルスト氏によると、製造ワークフローのソフトウェアは、ますます簡単で利用しやすいものになっている、これこそが、市井のメイカーには手の届かないことも多い次のステップ、つまり価格の決定と、必要なパーツを製造する体制の整った評判の良い供給元の獲得だ。「大抵の場合、こうした問題にどこから手を付けていいのかも分からない人が多いのです」と、ホルスト氏。

hack rod animation
ジェネレーティブ デザインを使用して究極のホットロッド シャーシをデザイン

3D プリントも、Hack Rod のプラットフォーム構想に実現可能性を加える先進テクノロジーのひとつだ。従来の製造業では、バリエーションに対応するには製造ラインの設備を一新する必要があった、3D プリントでは、初期費用の大半が不要となる。製造のコスト効率は、1 ユニットでも 100 ユニットでも変わらない。

3D プリントが持つ製造の柔軟性は、ジェネレーティブ デザインの完全な実現も可能にする。「以前は、ジェネレーティブ デザインで作成されたコンポーネントの製造は不可能でした。従来の製造方法では、実行不可能だったからです」と、ホルスト氏。

3D プリントは、ジェネレーティブ デザインによるユニークなコンポーネントの製造には不可欠だ。そこで両氏はHack Rod の技術構想の統括役として、大規模なアディティブ マニュファクチャリングの世界では名の通ったエキスパートであるスレ―ド・ガードナー博士を採用した。ガードナー氏は、3 人が顔を合わせた当時、ロッキード・マーティンで特別上席フェローとしてアディティブ マニュファクチャリング、材料部門を担当していた。チタン添加の衛星推進剤用大型タンクを研究所から工場での実用にこぎつけ、ロボットを用いた自動化製造作業を組み合わせた大規模なアディティブ マニュファクチャリング クラスターの作成など、ガードナー氏の功績がHack Rod に国際レベルの技術をもたらしている。

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世界初のジェネレーティブ デザインによる 3D プリント製自動車のイメージ画像

「3D プリントが実現する建築上のメリットは、独自の最適化が行われた構造が、デジタル領域と物理領域の両方に提供されることです」と、ガードナー氏。「これは非常に重要です。私たちはデジタル パイプラインを構築し、大型金属パーツのアディティブ マニュファクチャリングに対して有効な手段を提示していく予定です」。

Hack Rod の哲学
ホルスト、マッコイ両氏が予見する新たな手段は、それが自動車であろうと、その他の製品であろうと、優れたアイデアを持つあらゆる人々と、アイデアを構築するためのガレージや倉庫に適用できる。

「100 年間にわたり、大量生産は同じものを繰り返し作るためのものでした」とホルスト氏は語り、自動車産業が特定の数のほぼ同じ商品を生産、販売するよう構成されているのは、高額な製造コストが原因だと説明する。「異なるタイヤを使用したり、インテリアに違った布地を選択したりできても、結局は同じものです」。

一方、Hack Rod のシステムでは、マス カスタマイゼーションを複雑で高度な生産に導入できる。

だが、Hack Rod が打倒を目指しているのは製造技術と設備だけではない。ホルスト氏は、優れたアイデアを実現するのに工学やインダストリアル デザインの学位は必需ではないと考えている。Hack Rod が目指すのは、全ての人々のためにデザインを民主化することだ。

まず「プルダウン メニューから「ラリー用自動車」を選択します」と、ホルスト氏。「サスペンションのセットアップとエンジン位置には 3 つの選択肢があります。数クリックで、選択した配置がデザインに組み込まれます。その後、自由に加えたいオプションを決定できます。選択したその他のコンポーネント全てが上手く収まるよう、ソフトウェアが配置を調整してくれます」。

hack rod assembly
Hack Rod プラットフォームによりセルフ組立用のパーツを簡単に注文

Hack Rod のプラットフォームが成功するかどうかは、自動車やホットロッドの世界だけには留まらない。ホルスト氏、とマッコイ氏は業界を超越し、標準的な消費者にも使える単一のポータル内で、パワフルなデザイン機能と適切な製造パートナーとを結び付けたいと考えている。

ホルスト氏は事業体ではなく愛好家を対象にスタートする利点について理解はしているが、愛好家のネットワークはかなり広く、このネットワークが自動車工学などの商業産業界に多数のイノベーションを提供しているとも指摘している。実践的な体験、目を輝かせた新規参入者としての意欲と情熱、未来をしっかり見据えた視点という独特の組み合わせをもってすれば実現可能かもしれない。

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