ヘルパー、話し相手、仲介者 - ヘルスケア ロボットが変える介護の世界

by TJ McCue
- 2017年6月20日
health care robots header robot doing tasks

高齢化が世界的に進行している。60 歳以上の人口は、2015 年には 9 億 100 万人に到達。2050 年には、この 2 倍以上の 21 億人近くになると予測されている。国連のレポート (英文 PDF) は、この推移を 21 世紀における最も重要な社会的変質のひとつだとしている。

人口高齢化のニーズと、迫り来るヘルスケア専門家の不足に対応するため、ロボットが家庭や病院、サービス付き高齢者向け住宅に進出しつつある。市場調査会社 Research and Markets の報告書 (英文 PDF) によれば、高齢者介護向けテクノロジー製品のグローバル市場は、2020 年までに 103 億ドル (約 1.1 兆円) の規模に達すると予測されている。ヘルスケアロボットの世界では、特に自宅に滞在したまま年齢を重ねたいと願う高齢者向けのロボットという形で、実際に静かなゴールドラッシュが起こりつつある。こうしたロボットは、産業ロボットとしてもヒューマノイド型ロボットとしても、また家庭内でもサービス付き高齢者向け住宅においても、医療チームの機能を拡張する役割を果たすことができる。

ヘルスケア ロボット elli-q intuition robotics
ELLI·Q. [提供: Intuition Robotics]

世界各地のスタートアップとその支援者たちは、これが目新しいだけの製品でなく確かなニーズだと認識しており、患者と遠隔地の介護士をつなぎ、日常生活を支援するロボットで市場への参入を始めている。その一例が高齢者支援コンパニオンとなる Elli·Q で、開発元のイスラエル企業 Intuition Robotics は、iRobot Ventures とクラウドファンディング プラットフォーム OurCrowd から 600 万ドル (約6.7 億円) の資金を調達。Amazon Echo を使用した音声制御コンパニオン AskMarvee は、フロリダ州セントピーターズバーグを拠点とする企業 Marvee のロボットで、2017 年に開催された AARP による介護テクノロジー スタートアップ向けの 2 日間に渡るコンペ、Innovation@50+ LivePitch のファイナリストに輝いている。

カリフォルニア州サンタクララを拠点とするスタートアップのロボット会社、OhmniLabs が開発する Ohmni は、ユーザーが家族やその他のサポートシステムとつながるための支援を提供するようデザインされた家庭用ロボットだ。OhmniLabs 共同設立者兼 CEO のトゥック・ヴー氏は「最大の課題のひとつが、ユーザーへの訴求手法でした」と話す。「私たちはパーソナル ロボットを、とてもクールで、しかも極めてノーマルな存在だと考えています。でも現実には、奇抜過ぎるアイデアだと考えている人も、まだたくさんいるのです」。

ユーザーを引き込み、ロボットの価値を知ってもらえるよう、OhmniLabs は Home Care Assistance、介護施設と共にパイロット プログラムをスタートさせた。このロボットは屋内を移動でき、また Amazon Alexa API に統合してホーム オートメーションや一般用途にも使用できる。「これまでのところ、非常に良い結果が得られています」と、ヴー氏。「ユーザーは、ロボットを使い始めれば、あっという間に気に入るようです。家族との交流は楽しいことですからね」。

OhmniLabs のチームは世界各地の家族を研究し、最も求められているのは一緒に料理をしたり、食卓を囲んだり、映画を見たり、ゲームをしたりという「経験の共有」であることを見出した。「物理的な隔たりの影響を弱め、好きなときにいつでも人々が即座に集えるようにしたいと考えています」と、ヴー氏。「電話や Skype、FaceTime などの従来のコミュニケーション手法は、もはや効果的とは言えません。ロボットを使うことで、動的かつインタラクティブな、新しい種類の体験を実現したいと考えています」。

OhmniLabs は、ロボットをサンタクララの施設で受注生産しているが、その製造にはチームが過去 2 年間にわたって検証と改良を重ねた、スケーラブルなアディティブ マニュファクチャリングのプロセスを活用している。そのプロセスのカギとなっているのが、 CAD/CAM ソフトウェアである Autodesk Fusion 360 だ。OhmniLabs 共同設立者兼 CTO のジャレッド・ゴー氏は「計画を軌道に乗せようとしている全てのハードウェア スタートアップにとって、最高の選択肢だと思いました」と述べている。「適切な意味構造とユーザー エクスペリエンスを有しているので、初日から生産的な作業を行えます」。[編注: OhmniLabs が設計、製造に Fusion 360 をどう活用しているかは、ブログポスト (英文) を参照]

Ohmni は、あらゆるヘルスケアのニーズにも役立つ「ヘルパー」テクノロジーの一例だ。他の人々とのつながりを失わず、より簡単に連絡を取り合える状態でありたいと、多くの人が願っている。高齢者にとって社会的交流は、身体と精神の健康の維持に極めて重要な役割を果たす。

ホーム ロボティクスのもうひとつの推進力は、人々が自立生活を維持するための支援だ。スタートアップの INF Robotics が 2014 年に発表した Rudy は、高齢者、退役軍人、障害者の支援用にデザインされたロボットだ。10 歳児程度の大きさの笑顔のキャラクターで、腕と車輪を持ち、胸部にスクリーンが取り付けられたこのロボットは、在宅型のヘルスケア コンパニオンで、投薬時間を知らせたり、物を運んだり、話し相手やゲーム相手にもなったりもする。また医者や介護士が患者の様子を確認したり、訪問を行ったり、Rudy を遠隔操作したりすることができる。

テクノロジーを通じて高齢者のケアを向上させ、自立生活の期間を延ばす Rudy は、未来の家庭生活を推測する助けとなり、研究はそのプロセスの根幹となる。IBM Research は、ライス大学と連携し、テキサス州オースティンに新しい “Aging in Place” 環境をオープンさせた。この空間は、センサー、IoT、ロボティックスなどのテクノロジーを活用し、高齢者を日々の課題を支援する未来のスマートホームを模倣している。彼らのプロトタイプ ロボットが、IBM Multi-Purpose Eldercare Robot Assistant (IBM MERA) だ。これは Watson 対応のアプリケーションで、バイタル (生命徴候) を測定し、健康に関する質問に答え、店頭やその他の急病を検知することで、高齢者とその介護士をアシストするようデザインされている。

遠隔モニタリング システムへのニーズが増大するにつれ、より多くの企業がヘルパー ロボットやヘルスケア ロボットの競争に参入するのは間違いない。テクノロジーの継続的な進歩により、新たな時代が到来しようとしている。スクリーンをスワイプするだけで、ロボットがあなたの家や両親の家の内部を動き回る時代がやって来る。

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