人間とロボットの共存の未来は「共感」にあり

by Madeline Gannon
- 2017年7月4日
ロンドンのデザイン・ミュージアムで Mimus のブースに近づく子供

人間とロボットは、過去 50 年にわたり、その関係をうまく保ってきた。人間はロボットにやるべきことを伝え、ロボットはそれを最大の効率で行う。それが農業や医療、製造の分野において、かつてないイノベーションと生産力につながってきた。

だが、その変曲点が姿を現しつつある。機械学習と AI の急速な進歩は、ロボット システムをかつてないほどスマートで順応性に優れたものにした。こうした発展は、その一方で自律機械に対する人間のダイレクトな制御や、人間と機械とのつながりを本質的に弱めるものでもある。こうしてロボット製造は、そのメリットにもかかわらず、人間が高い代償を払う状況へと達しつつある。世界経済フォーラムは、世界の製造業におけるロボット工学は今後 4 年で急成長を遂げ、単純労働者の仕事がロボットに取って代わられる結果、500 万人の暮らしが脅かされると予測している。

ロボットが確固たる存在になっていることは明白だ。だから、人間が不要な存在となるような道を進むのではなく、この星で人間とロボットが共存する方法について、今こそ再考すべきなのだ。世界が必要としているのは、今より優秀、高速、スマートなロボットではなく、人間が共同体として創意工夫や知性、楽観主義を蓄えて、ロボットが人間の能力を拡張するような手法を発明できるような機会だ。

既にロボットとの連携が日課になっているデザイナーもいる。建築界のコミュニティは、この 10 年間に、あらゆる形状とサイズのロボットを活用してきている。産業ロボット協働ロボットから、壁をよじ登るロボット空を飛ぶロボットまでさまざまだ。この研究コミュニティは、想像力に富んだロボット製造のテクニックにより継続的に驚きをもたらしているが、その領域は限定的になりがちだ。最大の関心は、ロボットがいかに斬新な構造の構築や組み立てを行うかにあり、建造環境にマシンが取り込まれることによる社会への影響ではない。

この未開拓な分野に、私は強い興味を覚えるようになった。建築家として教育を受け (空間内での人間の動きに対する感受性を磨いた)、その空間的な理解をマシンに組み込む方法を考案すべく努力してきた。最新の空間知覚ロボット Mimus は、オートデスクの支援により作成され、2016 年 11 月以来、ロンドンのデザイン・ミュージアム移転記念特別展示「Fear and Love: Reactions to a Complex World (不安と愛: 複雑な世界への反応)」』の展示作品となっている。Mimus は重量 1,180 kg 超の産業用ロボットで、自身を取り巻く世界に好奇心を持つよう、プログラムを書き換えている。一般的な産業用ロボットとは異なり、Mimus には予め計画された動作がない。そのブース内を自由に動き回ることができ、同じ動きを繰り返すことがない。

Mimus のようなロボットは、通常は人間から完全に隔離され、製造ラインで極めて反復性の高いタスクを実行している。だが私が Mimus で目指したのは、業界標準のハードウェアに対してクレバーなソフトウェアをデザインする方法を示し、プロセス内の複雑なマシンと人間との関係を完全に再構成することだった。

Mimus は、古い産業技術に秘められた未開発の潜在能力、つまり人間に対抗するのではなく連携する能力に光を当てるものだ。既存の自動化システムにわずかな変更を加えるだけで、重量 1 t もの怪物マシンが、工場内で自動車シャーシのスポット溶接を行う係から、子犬のようにミュージアム内の子供を追いかける存在になるのだ。このインタラクティブなインスタレーションに不安をかき立てられる人がいるかもしれないが、私は来場者が、より人間重視のインターフェースにより、人間とマシンの間に共感や仲間意識が育まれるような未来を期待することを願っている。

誤解のないように言うと、私は多くの人が日常的に自律型の産業用ロボットと交流することを期待しているわけではない。これらのマシンは工場からよりダイナミックな環境へと活躍の場を広げ始めているが、それでも、建設現場や映画の撮影現場など、ある程度制御された環境から大きく離れて活動することはないだろう。だが Mimus のような実験は、既に歩道高速道路都市で活動しているロボットに直結するような、インタラクションデザインのテクニックの開発、検証を行う機会を提供する。

ドローン、トラック、自動車など比較的新しくスマートなロボットには、産業用ロボットと共通する特性も多い。大型かつ高速で、危険をもたらしかねない非人型ロボットでは、人間とうまくコミュニケーションを取ることができない。たとえば、ピッツバーグのような都市では自動運転車を日常的に見かけるが、歩行者は未だに自動車の意図を読み取ることができない (これが大惨事を引き起こす可能性がある)。Mimus は、その心理状態をボディランゲージで伝える。誰かが遠くから近寄ってくると、その人物を上から眺め、おびえているような、勘ぐるような態度を見せる。だが、ビジターがブースに近づくにつれて、下から対象に近づき、わくわくしているような、好奇心旺盛な態度を見せるようになる。

知性を持つ自律ロボットが日常生活に浸透するにつれ、こうしたロボットと交流してコミュニケーションを取る、より効果的な方法をデザインすることが極めて重要となる。Mimus の開発において、私はミュージアムを訪れる人々と産業用ロボットの間に共感が育まれるよう、伝達手段にロボットのボディランゲージを使う方法を見つけた。ボディランゲージは原始的だが流動性を持つコミュニケーション手段で、なじみの薄いマシンの挙動、運動、制約の本質的な理解を広めることができる。何かが人間に対して生き物のような反応を見せると、それが明らかに生命を持たないものでも、人間はそこに感情を投影してしまうものだ。ただし、これは人間が自律ロボットとうまく共生するためにデザインされた、アイデアのひとつに過ぎない。こうしたインテリジェントなマシンが家庭、オフィス、都市に溶け込むよう、さらに多くの独創的かつ多様なソリューションが社会に必要とされている。

こういったロボットが人間の生活をどう扱っていくかの判断は、テック企業や俗世間から離れたロボット工学研究室の裁量のみに委ねられるべきではない。デザイナーや建築家、都市設計者は、だれもが建物内や都市内での共存の在り方について、豊かな知識を有している。これは、ロボット工学のコミュニティには明らかに欠如している洞察だ。ロボット工学の未来は、まだ明らかではない。科学技術に精通していようが、テクノロジー嫌いであろうが、こうしたマシンが建築環境にどう組み込まれていくのかの決断に寄与する貴重な意見は、誰もが持っている。デザインとロボット工学のコミュニティは、テクノロジーが人類に取って代わるのではなく、人類を発展させ、強化する未来を築くことができると、私は確信している。

本記事のオリジナルはDezeenに掲載されています。

 

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