SpaceX のハイパーループ ポッド コンペが証明する学生エンジニア達の才能

by TJ McCue
- 2017年8月21日
hyperloop pod competition heasder
Earl Otsuka

イーロン・マスク氏のハイパーループ構想が正しければ、未来のどこかの時点において、サンフランシスコからロサンゼルスまで 30 分で移動可能となる。現在は車で 5 時間以上、飛行機でも 2 時間が必要で、それが渋滞や空港内外での移動を除いた、かなり楽観的な数字であることを考えると、大量輸送における素晴らしい功績となるだろう。

マスク氏は 2013 年、高速地上輸送のコンセプトである「ハイパーループ」に関する 57 ページの PDF を発表した。そのプロトタイプの開発を促進するため、2015 年には SpaceX が 1/2 スケールのポッドをデザイン、ビルドするハイパーループ ポッド コンペ (Hyperloop Pod Competition) をアナウンス。2017 年 1 月に行われた、ハードウェアの製作ステージにフォーカスした 1 次コンペには、1,200 組以上のエントリーから絞り込まれた 27 の学生チーム、社会人チームが参加している。

ハイパーループ ポッド コンペ bLoop レンダリング
bLoop のポッドのレンダリング [提供: bLoop]

そのデザインの大半は、ハイパーループのビジュアル イメージとして引き合いに出される TV アニメ「宇宙家族ジェットソン」(日本では「宇宙家族」というタイトルで放映された) を視覚化したかのような、期待通りに未来的なものだ。サンフランシスコ、ロサンゼルス間に設置された 2 本の巨大なチューブの中を、人や恐らくは乗り物までも運搬可能。チューブ内は減圧され、ポッドは磁気か空気、もしくは別の新たなテクノロジーで、その内部を滑っていく。

1 月のイベントに参加したチームのうち、bLoop と呼ばれる Berkeley Loop は、カリフォルニア大学バークレー校の学部生を中心とした 40 人のチーム。彼らは、社会人のプロチームにも同様に影響を与えた障害を打破する必要があった。

bLoop のプロジェクト マネージャーで、加減速を共同で担当したタイラー・チェン氏は「最大のチャレンジは、さまざまなエリアでの経験不足に由来するものでした」と述べる。「かなり野心的なデザインであることは分かっていましたが、デザイン面での試みに関して、全てをチェック済みでした」と述べる。「でも実際の制作では、純粋に経験が必要なことも多いのです。想像していたより作ることが大変なものが、とても多かったですね」。

ハイパーループ ポッド コンペ hyperlift
チーム HyperLift のポッド [提供: HyperLift]

テキサス州ヒューストンのセント・ジョンズ・スクールの学生によるチーム HyperLift は、コンペへの参加を許可された唯一の高校生チームで、デザイン&コンストラクションでは 9 位へ入賞。このチームも予想外のチャレンジに見舞われた。HyperLift の創立者、チーム リーダーのアンドリュー・アワド氏は「1 月のテストでは、エアベアリングで浮上させる際に、エアーレギュレーター 3 台を飛ばしてしまうという事態に陥りました」と述べる。「2 日間の激務の後、改良したエアーレギュレーション システムのテストで、真空チャンバー内で浮上を実現した最初のチームとなり、パフォーマンス&オペレーションの特別賞を受賞したんです」。

2 次コンペは 8 月 25 日から 27 日までの期間、カリフォルニア州ホーソーンにある SpaceX のハイパーループ テスト トラックで行われる。今回のコンテストは学生のみが参加でき、新たなチームと、デザインの向上を目指す 1 次コンペ参加チームの両方が対象となる。

この 2 次コンペのテスト ポッドは秒速 130 m、時速 468 km を目指す (最終的なゴールとされる、音速に迫る 1,200 km ではない)。1 月のコンペはポッドの革新的なデザインとコンセプトがテーマだったが、今回は 1.6 km のテストトラック上を、フル機能のユニットを走らせて競うことになっている。

ハイパーループ ポッド コンペ AZLoop
Fusion 360 でレンダリングされた AZLoop のポッド [提供: AZLoop]

アリゾナ州立大学、エンブリー・リドル航空大学、ノーザン・アリゾナ大学の 100 名以上で構成される AZLoop は、デザインやスピードだけのために作られたチームではない。AZLoop のチーム オーナーであるリン・ネスケン氏は、「時速 1,000 kmを超えるスピードで移動する際に、どうやって安全を保てるのか?」と自問することを通じてハイパーループへ参加することにしたと述べている。彼女と共同リーダーのジョシュア・コサー氏は、卒業後、ハイパーループ交通をアリゾナで商業化する計画を持っており、乗客をフェニックスから 30 分でサンディエゴやロサンゼルスへ移動させる手段を提供したいと願っている。

AZLoop のオリジナル・チームは 1 次コンペに進出できなかったが、そこから経験と人数、資金を増強。「2 次コンペのファイナリストとして SpaceX へ向かうには、当然ですが最も速く、かつクラッシュしないポッドを手にすることが不可欠です」と、ネスケン氏。「チームメンバーは幾つもの学校で構成されているので、大学や人々の間で CAD ファイルを共有し、CNC やウォータージェット、3D プリンターへ送る直前までデザインの調整を行うのは簡単なことではありません。シェル用にモールドを作る際には、ShopBot へ送る前に Fusion 360 でツールパスを確認できたので、製作中に高価な間違いを犯さずに済みました」。

8 月のコンペでは最も重視されるのは速度だが、大半のチームはスピードだけでなくエレガントな有用性を目指している。日本から唯一参加した慶應アルファは、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント学科の学生で構成されたチーム。共同キャプテンを務めるダニエル・ダウム氏は「ポッドのコンポーネントをアップグレードするだけでなく、組み立てや輸送、分解などのライフサイクル面にもフォーカスしました」と語る。「壊れたパーツの修理や、環境の変化へポッドを適応させるためにも、ポッドのメンテナンス方法はエンニアリング同様に重要です」。

ハイパーループ ポッド コンペ 慶應アルファ
慶應アルファのポッドのレンダリング [提供: 慶應アルファ]

手荷物として持ち運べそうな慶應アルファのポッドは SpaceX からも称賛を受けた。チーム メンバーは、実際にそうして、ユニットをロサンゼルスの国際空港まで移動したのだ。この革新的なチームは、1 次コンペではデザイン&コンストラクションの 10 位に入賞。「このポッドのデザインには素晴らしいポテンシャルがあるので、今回はトップ 3 を狙っています」と、ダウム氏。

1 月にはデザイン&コンストラクションで 6 位になったワシントン大学のチーム UW Hyperloop も、2次コンペに向け準備中だ。UW Hyperloop のディレクター、ブレーキ担当のミッチェル・フリモッド氏は「チームは 24 名と、とても小さいのですが、それを維持しようと思っています」と述べる。「個人個人へ、より多くの責任を負わせています。責任と公約が与えられると、最初は苦労しますが、最終的には役割を果たして、より早く学ぶことができます。それこそが、このチームなのです。問題に苦労して取り組み、自分を鍛錬し、アイデアを生み出して実現する方法を学ぶのです」。

チャレンジの克服こそ、マスク氏が生み出そうとしている本質だ。ハイスピード ポッドに関する氏のビジョンの実現を、困難もしくは不可能、あるいは高価過ぎると考える人がいる一方で、既に多くの人が参入し、実現に向けて巨額を投資している。このムーブメントに参加している学生たちは、Twitter や Facebook 上でのソーシャル コミュニケーションの最後に、頻繁に #BreakAPod というハッシュタグを付ける。彼らの辞書に「不可能」という文字はないのだ。

関連記事