コンシューマ IoT はもう古い: これからはインダストリアル IoT の時代

by Jon Pittman
- 2016年7月5日

出版社の元発行人にして億万長者だったマルコム・フォーブス氏は、「よりたくさんの玩具と共に死ぬ者が勝つ」という名言を残している。そして彼は、もちろん多数の収集品を残した。だが 2016 年の今、IoT (モノのインターネット) デバイスに関しては、この意見に賛成する消費者ばかりではないだろう。

製品メーカーは最新の IoT デバイスを競って収集する消費者を当てにしているのかもしれないが、アクセンチュアの 2016 年のレポートは全く異なるストーリーを語っている。多くの消費者は、さらに多くのデバイスを購入することに躊躇を感じており、その障害は価格とセキュリティだというのだ。

その一方で朗報もある。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは、IoT の経済的影響は 2025 年までに 11 兆ドル (英文記事) に上り、その大部分はビジネスや産業用途で生じるだろうと予測している。真の展望はインダストリアル IoT (IIoT) にあるというのだ。

私もそれに賛同する。ただし IoT はまだ未成熟であり、コンシューマ IoT 開発の大部分を占めるアンバランスな MVP (検証に必要な最低限の機能を持つ製品) の実現を乗り越える必要がある点に注意が必要だ。

[編注: MVP に関する著者のブログポスト (英文記事) はこちら ]

私は、それをよく理解している。自宅を、150 のつながるデバイス、18 の異なるシステム、5 種類のネットワーク、そして寛大な妻と犬 (雨の降る中、Nest Protect の煙探知器の金切音から逃れるために屋外で座っていなければならなかった) を擁する IoT 実験場に変えてしまったからだ。先日私はコンシューマ IoT における実体験 (英文記事) と、遭遇した幾つかの問題について書いた。問題のひとつは、マルウェアからさまざまなデバイスを守るための IoT セキュリティ デバイスだった。残念ながら、このデバイスは私のネットワーク上にある比較的少数のデバイスに対処できず、製品のデバッグを行ったにもかかわらず、ごく平均的でシンプルなシステム上でも動作できなかった。

これを大型施設の全域に数十万もの環境センサーやアクチュエーター配備される、データセンターの冷却管理システムのような環境に拡張したらどうなるだろう。産業環境では、こういった全てのデバイスとその相互作用に優先順位を付けて管理するような余裕はない。とにかく全てが機能する必要があるのだ。

それ故に、現在のコンシューマ IoT 体験は、次の 3 点を確保することで、ビジネスと IIoT システムの展開に情報を提供する必要がある。

1. 明確な価値提案
コンシューマ IoT 応用の多くは、クールだが不要なものだ。テクノロジーで何が可能かを実証してはいるが、人間の実際のニーズには対応していない。例外となるのはセキュリティ、省エネ、健康の分野だ。だがこれらの分野においても、その利点が導入や維持管理、修理に必要な時間と配慮を含めたコストを大幅に上回っていなければならない。

IIoT
Brandon Au

IIoT にとって重要なのは、注目を求めず、価値を提供することで強みを伸ばし、コンシューマ分野での弱みから学ぶことだ。

より大きな空間での IoT では、エンジニアは特定のモデルを構築し、エリアの複数の場所で起こるアクションを組織化することができる。たとえば、私の IoT 実験における成功例のひとつに、Rachio の芝生の水やりサービスがある。このサービスは、最近の天気や今後の天気予報を把握し、推測を排することで芝生の水やりの費用を低減する。これをゴルフコースやオフィスパークに拡大すれば、水の節約にかなりの影響を与え、また土や傾斜、日照、天気を含めて、植物それぞれの条件に対して最適な水やりが行えるようになる。

Rachio は、毎朝6時になると雨が降っていても必ず作動してしまうオフィス外のスプリンクラーのような単純な自動化システムを容易に上回る性能を提供する。また、芝生に水が必要なのかどうかを勘に頼って判断するという非科学的な方法も排除できる。

非常に上手くできており、問題なく機能するし、その存在を意識させることもなく、信頼性も高い。さらに、センサーからデータフィードバックを提供できるため、IoT は、よりパワフルになる可能性を有している。デザイナーはリアルタイムで製品をモニターし、より深いデザインへの見解を提供し、既に世に出ている製品を向上させることができる。

ただし、こういったベーシックな製品であっても、箱を開けた瞬間から機能するようになっていなければ、向上することはできない。私にかなりの手間を取らせた先ほどのセキュリティ デバイスも、それ以降に向上しているかもしれないが、残念ながら私には知る由もない。使うのを止めてしまったからだ。

2. 複雑さを意識させないこと
コンシューマ IoT は、小規模での動作を前提としている。Sonos ワイヤレス音楽システムを自宅に追加した際、ネットワーク接続が数時間ごとに途切れるようになった。数十のデバイス、数種類のネットワークを使用している上、それぞれのデバイスが個別に動作しているため (加えて、上記のセキュリティ デバイスを閉口させた私のセットアップも理由だろう)、何が原因なのかを突き止めるのは大変な作業だった。

この種のダウンタイムは、管理するべきデバイスと接続が多数存在し、解釈するべきデータが大量にある大企業や大型事業では、決して起こってはならないことだ。IIoT ソリューションは、この複雑性を自発的、弾性的、独創的に管理する必要がある。

当然だと思えるかもしれないが、デバイスは箱から出せばそのまま使用できる状態になっており、説明書は分かりやすく、時間をかけなくても価値を与えるものである必要がある。これが、あらゆる IoT デバイスに対する期待値の基本水準でなければならない。

IIoT

また、それぞれが個別に動作するのも止める必要がある。Fitbit、芝生の水やりシステム Rachio、その他全てのデバイスが、互いのコンテンツを把握し、共有するネットワーク リソースを使用して、うまく連動できるようになる必要がある。

マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは「平均して、解放可能な (IoT の) 総価値の 40% は、連携に異なる IoT システムを必要としている」と試算 (英文記事) し、IoT が 2025 年までに 7 兆ドル市場となるのか 11.1 兆ドル市場となるのかの差は、相互運用性にあるとしている。

3. 製品開発は全体的である
M (製品の機能) に重きを置きすぎ、V (これらの機能の実行可能性) を軽んじる MVP が、あまりにも多くの第 1 世代 IoT 製品を特徴付けているが、これは変わる必要がある。

1 つのことを完璧にこなす製品を作れば、6 つのことを平均的にこなす製品よりずっと価値あるものとなる。過去 20 年間のテクノロジー適用の有力なモデルは、ビジョンを持つ思想家と実用主義者の間の隔たりを埋めてきた。

人々はベータとして始まり、ゆっくりと向上しているように感じられる Saas システムと B2B のエクスペリエンスに慣れっこになり過ぎている。しかしメーカーが不完全な IoT 製品を出荷するようであれば、ビジネスは次のアップデートを待つことはない。その製品を排除し、採用を拒否するだろう。一方、最小限で焦点を絞った自律性のある IoT 製品の提供からスタートし、その機能を拡張していく企業は、最大の成功を手にすることになるだろう。

誤解のないように言うと、私は IoT を悲観しているわけではない。明るい見通しは多いし、ビジネス IoT の方向性を示すコンシューマ サクセス ストーリーも十分に存在している。だが危険度も高く、デザイナーとエンジニアが間違った思い込みをしているとすれば、4 兆ドルが棚上げされてしまうリスクがあるのだ。

持続的反復の B2B ビジネスモデルは、IoT には良い結果をもたらさないだろう。これまで実践されてきた MVP は、ここでは機能しない。箱から取り出されてすぐに宣伝通りの機能を発揮しない IoT 製品は、また箱に戻されるだけだ。

IioT
Brandon Au

IIoT の絶好の機会には、デザイナーとエンジニアが、自身の製品開発の手法に再び重点的に取り組むことが必要となる。そう、時間とエネルギーをデバイスの製作に集結させるべきなのだ。だが、こういった製品の機能よりもさらに重要となるのは、ネットワークやエコシステム内で連携するデザイナーとエンジニアの能力だ。

どのメーカーが最良のデバイスを製作できるのか、あるいは誰が最も多くのコンシューマを取り込むことができるのかを競っているのではない。IoT の未来の真の成功は、協調にある。デバイスが、チームとしてどれほど上手くプレイできるようになるのかどうか、それが重要だ。

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