サンフランシスコの野心的なインディア・ベイシン開発プロジェクト

by Zach Mortice
- 2018年4月2日
インディア・ベイシン 空撮
サンフランシスコに残る最後の自然空間と共存する都市設備を生み出すインディア・ベイシン開発計画 [提供: BUILD]

サンフランシスコ南東部に位置するインディア・ベイシンは、歴史的に造船業に関連する地域だった。サンフランシスコ湾に突き出したインズ・アベニュー 700 番地の 17 エーカー (68,800平米) の土地は、ある意味で非常に珍しい。ここは、米国内で最も活気にあふれ、人口密度の高い都市に隠された、ウォーターフロントでは希少な未開拓エリアなのだ。

このエリアは、深刻なジェントリフィケーションの圧力にもさらされている。サンフランシスコで起きている不動産の歴史的な高騰を考えれば、かつては工業地区で、この街では最大の貧困地域でもあったエリアが、約 10 億ドルの予算による開発計画の対象となっていても驚きではない。

インディア・ベイシンの開発を予定している住宅デベロッパー、BUILD でシニア プロジェクト マネージャーを務めるコートニー・パッシュ氏は「勢いは南の方へと移りつつあります」と話す。「次なるフロンティアですね」。

BUILD は、より密度の高い住宅を計画しつつ、エリア周辺の住民が大切にしてきた自然のままの沿岸生態系の保護にも最大限に配慮する予定だ。地元のランドスケープ デザイン事務所 Bionic と連携することで、BUILD は自然と人間の生育環境のニーズのバランスをとろうとしている。サンフランシスコ市のレクリエーション&公園課 (Recreation and Park Department) のゼネラル マネージャーを務めるフィル・ギンズバーグ氏は、そこにはエリアの「多様な価値」を包含する新たな公園の設置も含まれていると話す。彼によれば、公園は新たな公園プログラムと都市型設備により「野生の、かつ雑然とした」生態系が特徴となる予定だ。

このエリアが 19 世紀後半に開発されて以降、造船業は大きく衰退した。BUILD は、約 1,300 棟のマンションで構成されたモダンなコミュニティ ハブを提供し、ユニットの約 20% は市場価格以下で販売したいと考えている。

この土地そのものが、産業の歴史から生み出されている。1960 年代初期、幹線道路建設プロジェクトで生じた産業ゴミを湾内に廃棄することで、このエリアが造成された。それから数十年後に表面化した新たな現実が、突如として燃え盛る炎となったサンフランシスコの不動産市場であり、造船所と発電所に接した辺ぴな半島の開発が、有益かつ不可避なものとなったのだ。

現在、インディア・ベイシンの大半はそのほとんどが低木と芝生に覆われ、沿岸部は岩場や砂浜になっている。パッシュ氏によると、これらは手つかずのまま残されることになる。近隣に大規模な公共インフラを築くことは、それがベーシックなものでもコストがかさむし、環境保護を望む近隣住民の要望もあってデベロッパーも慎重になっているからだ。Bionic のマルセル・ウィルソン氏 (プロジェクト デザインに Autodesk AutoCADCivil 3D を活用) はギンズバーグ氏、サンフランシスコ市と連携し、コミュニティが提供する情報を 2 つのシンプルな項目にまとめた。その 2 点は「エリアへのアクセスを維持し、自然のままに残すこと」だと、ウィルソン氏は話す。

これを実現するべく、Bionic のランドスケープ計画は、動植物の健全な生息環境を作り上げることから始まった。「それには海中の泥線から稜線の頂点までの生態系が含まれています」と、ウィルソン氏は話す。公園の生態系を支える第一段階となるのが、野生生物の生育環境を守るさまざまな種が植え付けられた流動的な湿地帯と近自然海岸だ。

インディア・ベイシン ランドスケープ
インディア・ベイシンの新しいランドスケープでは、サンフランシスコ湾に近づくにつれて次第に自生植物が増える [提供: Steelblue]

海岸沿いの湿地帯からさらに内陸部に入った、SOM の設計による慎重に計算された共同住宅と商業スペースには、草地や浜辺、塩沼、そしてイタリアにあるような大広場など多様なランドスケープが広がっている。最も高い建物と街区のほとんどは、水辺から最も離れた場所に配置される。「開発エリアの境界としてドッグランと遊び場をはさみ、湾に近づくにつれ、より自然が多くなるようにしました」と、パッシュ氏。

水際のアッケシソウ群落や塩沼は、今後海面が上昇しても一帯が存続できるよう、Bionic と BUILD は一連の高架歩道橋の建設を計画している。ウィルソン氏は、氾濫の進行がより緩やかで予測可能なものとなるよう、土地の端を切り詰めて慎重に削ることで、1.68 m の満ち潮を考慮した緩やかなスロープを形成する予定だ。

高架歩道橋 (とスロープ状の浜辺) は、繊細な生態的地位を妨げることなく、人間の交流場所も提供する。湿地の境界部分に立てば、キーキーと鳴き声を立てる海鳥や、カサカサと音を立てるアシの茎を容易に想像できる。すべてが都市設備から数歩のところにあり、インフラの基盤が構築されて裕福な新参者が移り住んでしまえば、近隣住民も適応に問題を感じることはないだろう。

このエリアは現在非可住の土地となっているため、この資本注入は、ベイエリアの熾烈なジェントリフィケーションの回避にもつながるかもしれない。だが、実際に誰が立ち退きの対象となるのか、また新設される公園がどういった人々に利用されることになるのかは、まだ明確でない。現地周辺の住民が参加する India Basin Neighborhood Association は、公園が自然のままの形で残され、地域の歴史に強いつながりを感じさせるものとなることを望んでいる、とギンズバーグ氏は話す。

その一方で、丘の上に住む住民 (その一部は公営住宅の利用者) は、イベント用空間やバスケットボール コートなどの空間を含む、アクティブな公園に興味を示している。「この公園デザインには多種多様な価値が応用されています」と、ギンズバーグ氏は話す。こういった価値を取捨選択するため、ギンズバーグ氏とサンフランシスコ市のレクリエーション&公園課は、集中的な意見交換会やコミュニティ イベントの企画を支援している。「現在周辺にお住まいで、公園に関連性の高い住民の声に耳を傾け、今後そこに住むこととなる人々を見越した公園を計画したいと考えています」。

プランは海面下からスタートし、ジグザグに進む小道が塩沼の周辺に巡らされて、多層階の共同住宅の大きなテラスへとつながる。通路部分や広場は生態系の保護と鑑賞のため、環境へ配慮した高架になっている。

ランドスケープの配置は現在の現地の環境に関連したものだが、Bionic が思い描く水管理システムは、これまでにない全く新しいものだ。「ここは元々埋め立て地なので、都市システムを構築するには、非常に貴重な機会となっています」と、ウィルソン氏。豪雨による雨水は現地で集水、処理して直接湾へ戻すため、市の雨水排水システムに負荷を与えない仕組みとなっている。

さらに野心的なことに、ウィルソン氏は現地で下水を処理、リサイクルする仕組みも検討中だ。まだシステムの選択には至っていないが、Bionic は空地に垂直流の人工湿地ろ過システムを設置して下水を処理し、紫外線処理を経て再利用することを計画している。再利用水はインディア・ベイシンに備蓄したり、かんがい用に使ったりできる。「コミュニティ独自の独立型公共設備となる可能性を秘めています」と、ウィルソン氏は話す。

2019 年に着工予定のインディア・ベイシンは、自然生態系を脱工業化的な人間の介在と組み合わせることで、ニューヨークの High Line で実現されたような、爆発的増大を見せているランドスケープ プロジェクトの好例となっている。どちらも一度は使われなくなって衰退したインフラから考案され、新たにデザインされた独自性のインスピレーションから独自の自然生態系を生み出している。「印象や雰囲気を形作る、全く異なるエネルギーが存在しています」と、ウィルソン氏。「それは、公園やその他の都市空間における、モノの見え方を形作るような統制力とは異なるものです」。

この種のプロジェクトこそ、Bionic の存在理由となっているものだ。「私たちが行っているのは、基本的に生物と人工物を組み合わせることです」と、ウィルソン氏。「これは、工業目的で設計された土地を、この都市にとってより重要な、環境保護と社会的な目的のために再興するプロジェクトなのです」。

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